第2章“十人十色”のスタッフを活かす術とは?
「外国の美容師くらい、自己主張が強くていい。
“自分の個性”と、“仲間との共存”は両立できる。」
海外のヘアサロン事情にも詳しい小林さんから見て、日本と外国のヘアサロンで、違いを感じる点は?
国によっても風習は違うし、外国人も一人ひとり違う人間なので、「外国・外国人」ってひとくくりにして捉えるのは難しいですよね。でも、日本のサロンのホスピタリティが全般的に高いのは確実。海外の人も、その価値を認めていると思います。でも過剰な面もあるというか、サービスが過剰すぎると、逆にお客さまを疲れさせてしまうんじゃないかな?お客さまがヘアサロンに一番望むことって、「きちんと相手の要望をくみとるコミュニケーションがとれて、満足させる技術があるか」ってとこだと思うんです。
では、「美容師という技術者」としての違いは感じますか?
日本は「美容師としてのモチベーション・働く姿勢」は、海外とは比べものにならないくらい高い。そもそも海外での美容師の職業地位は、そんなに高くないんですよね。トップスタイリストが集まるニューヨークのような場所は別ですが、美容師は憧れの職業になっていない。他の仕事から転職して「次は美容師でもやってみるか」という人も珍しくありません。
だけど「売れたい気持ち」、つまり「自己主張」は外国人の方が段違いに高い。「自分のことしか考えていないクセの強いタイプだけど、お客さまには圧倒的に支持されている」みたいな人ですね。僕は日本も、それくらい自己主張が強くていいと思います。
自己主張が強いタイプが集まると、チームとしてまとまることが難しそうですね。
「個性を主張すること」と「同じサロンの仲間として協力すること」は、あい反するように思えるかもしれないけど、そうじゃない。うちのサロンでも一歩店内に入ったら、自分のお客さまである前に「ASSORTのお客さま、みんなのお客さま」だと昔から言い続けていて、その姿勢を大切にしています。「みんなのお客さまとして迎えること」と、「自分の色を出してお客さまをキレイにすること」は両立できる。「自己主張すること=自分の色と違う相手を否定する」ことには、決してならないと思います。
以前から「ASSORTは個人力、個性重視」とお話されています。そうしたスタッフをまとめるのは大変では?
うん、難しいです(笑)。でも個性を活かすのは楽しいですよ。いろんなタイプの子がいるし、「どうしたらこの子が売れるのか?」と考えるのも楽しい。売れるまでは、「こうしてみたら?」と僕からもいろんな提案をします。「自分のやりたいこと」があるのはいいことだけど、最初から自分で「個性」を限定してしまうと、視野が狭くなって成長しない。それに売上の結果が伴わないなら、どれだけ「自分のやりたいこと」があってもダメです。成長して売上を出してから、「個性」を見せていけばいいんです。
全員がすぐ、個性を出せるわけではないですよ。ASSORTにはいろんなタイプがい過ぎて、かえって「自分は何を推し出そう?」と迷ってしまう面もあるでしょうね。そこから「自分探し」の旅が始まるわけですが、その過程も大事です。そこは、時間がかかっても構わない。
伸び悩んで、なかなか成長しない人もいませんか?
誰でも必ず伸びます。教育者が「この子は伸びない」なんて言ったら終わりです。言葉にしたら現実もそうなってしまうし、「必ず伸びる」と思って接したら相手にもそれが伝わります。なかなか結果が出なくても、「いいところ」にフォーカスする。「売上はなかなか伸びないけれど、人間的な魅力がある」とか。誰にでも絶対に、他の人より優れているところがあるから。
スタッフ一人ひとりを知るために、年1回はひとりにつき1時間以上の個人面談をしています。これはスタッフが100人になっても続けたい。僕はいつも店にいるわけではないし、手とり足とり教育するのが僕の役割ではないと思います。じゃあ「僕にしかできないことって何だろう?」と考えると、結局こういう面談とかだと思うんです。
経営者として大事にしているのは、「10歩先」の視点です。「100歩先」だと夢ばかりになってしまう。「1歩先」だと今しか見えてなくて、まわりも見えていない。だから「10歩先」の視点から、スタッフと話をするようにしていますね。