Vol.1/美容業界の常識は社会のヒジョーシキ!?
- サロンの労務知識
美容の未来のために、学びと調査・研究を
サロンオーナー必見!
須多井 リスオ(スタイ リスオ)
小尾奈 サロヒコ(オオナ サロヒコ)
赤出 ミーコ(アカデ ミーコ)
秋田センセイ
ビューティー
いざ、「就業規則をつくろう!」と思っても、何から決めればいいかわかる人はほとんどいないと思います。実は就業規則には、書かなければならないことが労働基準法で決められているのです。その詳細についてはPOINT2以降で解説しますが、まずは就業規則がどんなものなのか、見てみましょう。
こちらの厚生労働省のホームページに「モデル就業規則」が掲載されているので、まずはざっと見てみてください。
ご覧になりましたか? これを見て「自分でつくるのは無理!」と思った人が多いと思います。その通りで、社会保険労務士に作成を依頼するのが普通なので安心してください。
就業規則の作成費用は、会社の規模や業務内容、就業規則に盛り込みたい内容などにより非常に幅があるため、一概にはいえないようです。ただし、目安としては25万円〜35万円くらいでお願いできるケースが多いようです。作成しようと思ったら、社会保険労務士に相談して、見積りを出してもらうとよいでしょう。
就業規則 には、どの事業所でも絶対に書かなければならない「絶対的必要記載事項」と、各事業場内でルールを定める場合には記載しなければならない「相対的必要記載事項」の2種類があります。
ここではまず「絶対的必要記載事項」について解説します。「絶対的必要記載事項」は次の3項目です。
①労働時間関係
始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
②賃金関係
賃金の決定(臨時の賃金等を除く)、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項(詳しくはPOINT3へ)
③退職関係
退職に関する事項(解雇の事由を含みます)
上記は人を雇う際に、オーナー側も最低限決めることですし、スタッフ側も入社の際に知らないとサロンを選べませんので、絶対必要な理由がわかりますね。
万一スタッフと労働時間や賃金、退職にかかわる内容でトラブルになった際に、お互いの言い分のよりどころとなるのが就業規則です。こうしたトラブルにならないために作成しておくべきものなので、法律で定められているわけです。それが記載されていなかった場合は、作成の義務を果たしたとはいえず、処罰の対象となると考えられています。
就業規則でスタッフが一番気にするのは、POINT2の②賃金関係の規定のことでしょう。就業規則に賃金の構成を書くには、そもそも賃金体系を明確にしておく必要があります。
●賃金の基本的な構成例
「賃金」と一言でいっても、多くのサロンが上記の例のように、ひとりのスタッフに対して、基本給以外のさまざまな手当を含めていると思います。就業規則には、基本給の考え方はもちろん、手当の種類ごとの規定や計算方法を明記する必要があります。
賃金の設定方法はサロンの考え方次第です。ただし、どのスタッフに対しても最低賃金を下回ってはいけません。最低賃金は地域別(各都道府県別)または特定最低賃金に定められており、毎年変わります(現在の都道府県ごとの最低賃金はこちら)。最低賃金は時給で表されているので、月給の場合はその金額を1カ月の所定労働時間で割った金額が、最低賃金以上でなければなりません。
最低賃金の対象となるのは、毎月支払われる基本的な賃金で、上記の図の黄色の箇所(基本給+諸手当)です。
絶対に書かねばならないことではないけれど、サロン内のスタッフ全員に適用される決まりを設ける場合には、就業規則に記載しておかなければならない内容が「相対的必要記載事項」です。「相対的必要記載事項」は以下の8項目です。
①退職手当関係
適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
②臨時の賃金・最低賃金額関係
臨時の賃金等(退職手当を除きます) 。及び最低賃金額に関する事項
③費用負担関係
労働者に食費、作業用品その他の負担をさせることに関する事項
④安全衛生関係
安全及び衛生に関する事項
⑤職業訓練関係
職業訓練に関する事項
⑥災害補償・業務外の傷病扶助関係
災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
⑦表彰・制裁関係
表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項
⑧その他
事業場の労働者すべてに適用されるルールに関する事項
上記で、サロンに関係のないことは入れる必要はありません。
上記の内容は専門的すぎてわかりにくいと感じるのは当然のことです。自分のサロンでどの内容が該当するか、盛り込むべきかについては、作成の際に社会保険労務士に相談するとよいでしょう。通常、社会保険労務士からわかりやすく説明されて、サロンにどんな決まりがあるか(あるいは決まりをつくりたいか)を尋ねられると思いますので安心してください。
次号では、就業規則をつくる際に注意したいポイントについてお伝えします。
監修
特定社会保険労務士
秋田繁樹さん
プロフィール:
社会保険労務士法人 秋田国際人事総研代表。東京都社会保険労務士会所属。国内大手生命保険会社、大手企業のシステムインテグレーターなどを経て、独立開業。人事労務のスペシャリストとして、多店舗展開の美容室の労務管理や就業規則・社内規定などにも詳しく、多数の美容室の指導相談に当たっている。http://www.akita-sr.com/
もっと見る
01
02
03
04
05
06
01
02
03
04
05
06