サロンオーナー必見!

人を雇ったら知っておきたい
労務のキホン

スタッフを雇ってサロンを経営していく上で必要な、労務関連の制度や法律の基本知識について解説していきます。

vol.18

〜就業規則のつくり方を知ろう編〜

就業規則の正しいつくり方、知ってますか?

vol.17では、就業規則の必要性についてお伝えしました。今回は実際に就業規則を作るときに知っておくべきことについて解説します。
※青文字・下線が付いた箇所をクリックすると、その言葉の説明が見られます。

連載ショートストーリー

「サロンRの日常」18
  • 須多井 リスオ

    須多井 リスオ(スタイ リスオ)

    アシスタントを2年経験し、スタイリストデビューをしたばかりの23歳。「サロンR」勤務。デビューして意気揚々。オーナーも店も基本大好きで、サロンとともに成長したいとはりきっている。
  • 小尾奈 サロヒコ

    小尾奈 サロヒコ(オオナ サロヒコ)

    「サロンR」オーナー。スタイリストとして7年間別のサロンに勤務した後独立。「サロンR」を開業して3年目の33歳。スタッフを大事にしてサロンを成長させたいが、経営の知識はない。
  • 赤出 ミーコ

    赤出 ミーコ(アカデ ミーコ)

    「サロンR」に勤務するスタイリスト歴5年の須多井リスオの先輩。27歳。指名が多く、新婚で公私ともに絶好調。同僚からの信頼も厚いが、結婚を機に子どもがほしいと考え始めている。
  • 秋田センセイ

    秋田センセイ

    社会保険労務士。多数のサロンの労務管理相談を受けている、この企画の監修を担当。美容業界を他業界に負けないくらい、オーナー、スタッフともに働きやすい環境にしたいと考えている。
  • ビューティー

    ビューティー

    秋田センセイの名アシスタントの猫。先生の言いたいことを伝言するために、ここそこに現れるこの企画の陰のキーマン。サロンオーナーたちがいい経営者になることを心から願っている。
オーナーが就業規則を完成できる日はやってくるのでしょうか?
POINT1

「就業規則」に書かなければならない内容は決まっている。

見本を見てみよう!

 いざ、「就業規則をつくろう!」と思っても、何から決めればいいかわかる人はほとんどいないと思います。実は就業規則には、書かなければならないことが労働基準法で決められているのです。その詳細についてはPOINT2以降で解説しますが、まずは就業規則がどんなものなのか、見てみましょう。
 こちらの厚生労働省のホームページに「モデル就業規則」が掲載されているので、まずはざっと見てみてください。
 ご覧になりましたか? これを見て「自分でつくるのは無理!」と思った人が多いと思います。その通りで、社会保険労務士に作成を依頼するのが普通なので安心してください。

社会保険労務士に作成を依頼するとどれくらい費用がかかるの?

 就業規則の作成費用は、会社の規模や業務内容、就業規則に盛り込みたい内容などにより非常に幅があるため、一概にはいえないようです。ただし、目安としては25万円〜35万円くらいでお願いできるケースが多いようです。作成しようと思ったら、社会保険労務士に相談して、見積りを出してもらうとよいでしょう。

POINT2

「就業規則」に絶対書かなければならない内容とは?

働く上で大事なことは必記載!

 就業規則 には、どの事業所でも絶対に書かなければならない「絶対的必要記載事項」と、各事業場内でルールを定める場合には記載しなければならない「相対的必要記載事項」の2種類があります。
 ここではまず「絶対的必要記載事項」について解説します。「絶対的必要記載事項」は次の3項目です。

①労働時間関係
始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

②賃金関係
賃金の決定(臨時の賃金等を除く)、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項(詳しくはPOINT3へ)

③退職関係
退職に関する事項(解雇の事由を含みます)

上記は人を雇う際に、オーナー側も最低限決めることですし、スタッフ側も入社の際に知らないとサロンを選べませんので、絶対必要な理由がわかりますね。

「絶対的必要記載事項」を就業規則に入れなかったらどうなる?

 万一スタッフと労働時間や賃金、退職にかかわる内容でトラブルになった際に、お互いの言い分のよりどころとなるのが就業規則です。こうしたトラブルにならないために作成しておくべきものなので、法律で定められているわけです。それが記載されていなかった場合は、作成の義務を果たしたとはいえず、処罰の対象となると考えられています。

POINT3

賃金のルールを明確に決めて「就業規則」に記載しなければならない。

気になる賃金は明確に!

 就業規則でスタッフが一番気にするのは、POINT2の②賃金関係の規定のことでしょう。就業規則に賃金の構成を書くには、そもそも賃金体系を明確にしておく必要があります。

●賃金の基本的な構成例

vol18
 ※サロンによって諸手当の種類や賞与の有無は異なります。

 「賃金」と一言でいっても、多くのサロンが上記の例のように、ひとりのスタッフに対して、基本給以外のさまざまな手当を含めていると思います。就業規則には、基本給の考え方はもちろん、手当の種類ごとの規定や計算方法を明記する必要があります。

そもそも賃金ってどうやって設定するの?

 賃金の設定方法はサロンの考え方次第です。ただし、どのスタッフに対しても最低賃金を下回ってはいけません。最低賃金は地域別(各都道府県別)または特定最低賃金に定められており、毎年変わります(現在の都道府県ごとの最低賃金はこちら)。最低賃金は時給で表されているので、月給の場合はその金額を1カ月の所定労働時間で割った金額が、最低賃金以上でなければなりません。
 最低賃金の対象となるのは、毎月支払われる基本的な賃金で、上記の図の黄色の箇所(基本給+諸手当)です。

POINT4

事業場内でルールを定める場合に記載すべき内容とは?

内容は我々にご相談ください

 絶対に書かねばならないことではないけれど、サロン内のスタッフ全員に適用される決まりを設ける場合には、就業規則に記載しておかなければならない内容が「相対的必要記載事項」です。「相対的必要記載事項」は以下の8項目です。
 
①退職手当関係
適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

②臨時の賃金・最低賃金額関係
臨時の賃金等(退職手当を除きます) 。及び最低賃金額に関する事項

③費用負担関係
労働者に食費、作業用品その他の負担をさせることに関する事項

④安全衛生関係
安全及び衛生に関する事項

⑤職業訓練関係
職業訓練に関する事項

⑥災害補償・業務外の傷病扶助関係
災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

⑦表彰・制裁関係
表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項

⑧その他
事業場の労働者すべてに適用されるルールに関する事項 

上記で、サロンに関係のないことは入れる必要はありません。

「相対的必要記載事項」が自分のサロンに必要かわからないときは?

 上記の内容は専門的すぎてわかりにくいと感じるのは当然のことです。自分のサロンでどの内容が該当するか、盛り込むべきかについては、作成の際に社会保険労務士に相談するとよいでしょう。通常、社会保険労務士からわかりやすく説明されて、サロンにどんな決まりがあるか(あるいは決まりをつくりたいか)を尋ねられると思いますので安心してください。

今回のポイント

就業規則はつくり方を労働基準法にのっとらねばならないため、法律の知識がないとできないということです。自分で勉強して、「モデル就業規則」をもとに作成しても大丈夫ですが、少しでも不安に感じたら、社会保険労務士に相談することが無難です。

次号では、就業規則をつくる際に注意したいポイントについてお伝えします。

秋田繁樹さん

監修

特定社会保険労務士

秋田繁樹さん

プロフィール:

社会保険労務士法人 秋田国際人事総研代表。東京都社会保険労務士会所属。国内大手生命保険会社、大手企業のシステムインテグレーターなどを経て、独立開業。人事労務のスペシャリストとして、多店舗展開の美容室の労務管理や就業規則・社内規定などにも詳しく、多数の美容室の指導相談に当たっている。http://www.akita-sr.com/

編集・取材・文
長島佳子
イラスト
木村𠮷見

※掲載されている情報は2016年08月01日現在のものです

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