恵比寿・銀座・心斎橋・弘前に、アイサロン(うち1店はエステ含む)を5店舗展開するnina。特筆すべきは高単価だけではない。なんとリピート率9割、次回予約率8割!そのウラにあるのは、徹底したペルソナ設計だ。お客さまがまた来たくなる「接客マニュアル」、離職減につながる「面接で行うテスト」とは?
nina 代表取締役・山中 麻里江さん
美容師として3年勤務後、アイデザイナーに転向。2010年に「nina」を立ち上げる。現在はサロン運営をはじめ、美容サロン経営者向け「勝ち組サロンオンラインスクール」、オリジナルアイラッシュプロダクト「CLINFLES」、アイデザイナー向け教育コンテンツ「eyelog」の運営など、多岐にわたり活躍。
「30~40代女性」はターゲットであって、ペルソナではない!
ー平均客単価が1万円超(技術のみ)とのこと。高単価を叶える秘訣は?
緻密なペルソナ設定です。ninaは「本物志向で安さより質を重視する、渋谷区在住のバリキャリ女性」と置いていますが、正確にはさらに細かくあります。サロンのオーナーさんにペルソナを聞くと「30~40代女性」と答える方がいますが、それはターゲットであって、ペルソナではありません。30歳の人も49歳の人も同じ悩みを持っていて、同じことで喜ぶか?…そんなことはないですよね。
ninaでは施術の前後に飲み物を出しますが、そのコップを購入する際もペルソナに沿って考えます。ホットとアイスで出すから両方に使えるものがいい。シンプルで洗練されたデザインで、スタッフが持ち運びやすくて洗いやすい、何よりお客さまが飲みやすいこと。サロンの棚に重ねて何個入るか、収納がしやすいかまで考えます。
ー私たち取材班にもお水を出していただきましたが、「オシャレで高級感がありながら、軽くて飲みやすいコップだなぁ」と感激!緻密に考えられているんですね。
ボールペンひとつ取っても、同様です。サロンづくりにおいて、ペルソナ・コンセプト・ブランディングが全て一貫していることが一番重要。
結局、どういうビジネスモデルにするかだと思うんです。高単価を狙うにしても、ただ高単価にしたら来るわけではない。じゃあ「高単価でも通い続けてくれる人って、どんな人?」と分析してみる。「その方はきっと、あのホテルでアフタヌーンティーやランチをするだろうな」と思ったら、実際にホテルに行って空気感や調度品、備品なども参考にします。

ninaのレストルーム。備品のセレクトも、ペルソナに当てはめて考え抜く
ー恵比寿、銀座、心斎橋、弘前に店舗があります。出店エリアの基準は?
ninaのペルソナはバリキャリで多忙な人なので、とにかくアクセスが良くて通いやすいことが第一条件。仮に素敵な物件だとしても、代官山駅から徒歩15分の隠れ家だと、やりたいビジネスが叶いません。渋谷も駅が大きすぎて、駅から遠くなってしまう。その点、恵比寿は渋谷・新宿・池袋より小さいけれど、いろんな路線が通っていて、駅近が可能。
アイサロンの場合、「近所」からお客さまが来るのがスタンダード。でも、近所=非常に狭い商圏なので、高単価でやろうとするとお客さまの数がかなり限られます。
私の感覚的に、アイサロンに行きたい人のうち、高単価でも通いたい人は2割くらい。この2割で集客が成り立つエリアを考えると、今出店している恵比寿・銀座(東京)、心斎橋(大阪)になるわけです。 ※弘前(青森)はFC店舗

アイ・エステサロンを5店舗展開するnina。近々、名古屋への出店も決まっている
会計時の「次回予約」提案は、お客さまが戸惑う!?
ー次回予約率は、どのくらいですか?
お客さま全体の約9割がリピーターで、リピーターの次回予約率は約9割。みなさん、当たり前のように次回予約を入れてくださいます。新規の方でも約7割。つまり、全体で見ると次回予約率は8割くらいです。
ーそれはすごいですね!意識していることを教えてください。
お会計の時に急に次回予約の提案をされると、お客さまは心の準備ができていないので、戸惑うと思います。
アイサロンは「メンテナンス利用」なので、周期の目安が分かりやすい。例えば、施術の前処理のタイミングで「今、まつげはこのような状態です。前回のまつげカールはいつくらいにかけましたか?」と聞き、「お客さまの場合、次のタイミングはいつくらいがいいですよ」と。そのような提案を、サロン滞在中の随所で意識します。
リピーターが多く次回予約率が高いと、サロンの売上が安定します。また、スタッフも一日中新規のお客さまの応対をするよりも、気心が知れたリピーターさんのほうが、安心して仕事ができるというメリットも。

来店~退店までのシチュエーションごとにマニュアルがあり、未経験者だとしても高いレベルでの接客が可能に。だからこそ一定レベルに達するまで、自己流の接客はしないように指導している
ーカウンセリングで大切にしていることは?
特にまつげカールは、アイサロンに通う人の中でだいぶ普及してきたので、他店での施術経験がある方がほとんど。ということは、前回のお店で何かしらネガティブなことがあって、お店を変えたと考えます。
まずカウンセリングで、「まつげカールの施術経験があるということですが、今までは同じお店に通っていましたか?」と、軽やかな口調で聞きます。でもお客さまは、いきなり聞かれると「特に…」「別に…」といった回答になるのが普通。その時は「かしこまりました」くらいで終わらせて、施術に入る。
リクライニングソファを倒して、施術者と目が合っていない状態になるとお客さまは少しリラックスします。天気の話などフランクな会話を入れ、緊張がほぐれてきたところで、あらためて「今まで同じお店に通っていらっしゃったと思うのですが、お店を変えようと思われたきっかけは何かありましたか?」と聞きます。すると、先ほども同じことを聞かれているので、お客さまもその理由を考え始めている。
ー計算し尽くされていますね。
そうすると「あぁ、そういえば!」と、お客さまから本音がポロポロと出てきます。まつげカールの左右どちらかのモチが悪かったと聞いたら深堀りして、その原因を潰していきます。放置時間の短さが原因と考えられる場合は、「今日はしっかりめに放置時間を取り、できる限りカールが長持ちするように、施術させていただきます。アミノ酸の薬剤で傷みにくいので、安心してくださいね」とお声がけ。
お客さまの悩みを解決するため、一生懸命に提案すれば、“信頼”が生まれる。「ここまで考えてくれたサロンってninaが初めて!」と、リピートしてくれます。

個室での施術。掛け持ち入客はないので、一人ひとりのお客さまとしっかり向き合える環境
面接時の「暗記テスト」で、離職減!
ー離職率が少ないと、うかがいました。
美容サロンでよく聞くのは、「入社してから手塩にかけて教育してきたけど、辞めてしまった」という悩み。みんなで育てていたわけですから、今いるスタッフにも申し訳ないですよね。だから、ninaでは「面接の段階」で重視していることがあります。
見ているのは、お客さまに対して細やかな応対ができる人かどうか?面接なのに、めちゃくちゃカジュアルな感じで来たら、その時点で細やかさに欠けるという判断になるので、採用しません。
また「暗記テスト」もあります。マニュアルにある「お客さまに同意書をもらう&メニュー提案。その2つの場面で使うセリフを覚えてきてください」と事前に宿題を出して、面接で発表してもらう。それを伝えた時点で、「暗記とか嫌だ」と感じた方は向こうから辞退されます。
ーお互いに、入社後のミスマッチを防ぐことができるんですね。
そうなんです。そもそも前向きなスタンスでないと、入社後やっていけないので。実はninaも、かつては人手不足で誰でも採用していた時期がありました。協調性がない人がいるとサロン全体の雰囲気が悪くなってしまい、これではダメだと。採用基準を整えてからは、離職が格段に減りました。

細やかな応対ができ、かつ協調性がある人を採用しているので、人間関係も良好。これも離職が少ないポイントだ
目指すは、日本で一番未来のあるアイサロン
ー完全週休2日・長期連休も取れる年間13日の特別公休、さらには「前職から約2倍の給与になった」というスタッフがいるほど厚待遇です。
目指しているのは、「日本で一番未来のあるアイサロン」。せっかく縁があって一緒に働くことになったスタッフが、この先も安心して生活ができたらいいなと。それに、高単価サロンはお客さまが求めるレベルも高いので、一般的なサロンと同等の待遇だと、やってられないと思うので(笑)。ninaの技術・接客マニュアルを習得すれば、お客さまが確実にリピートしてくれる“仕組み”があるから、この待遇が可能になります。
アイデザイナーはプレイヤーとしての道しかないことが多いですが、ninaはトッププレイヤーとなった先も、店長・エリアマネージャー・技術ディレクターなどのポジションを用意。メーカーやスクール事業もあるので、多様なキャリアパスを描くことができます。
私は、サロン経営者向けのスクールや、アイデザイナー向け教育コンテンツサイトも運営しています。自社だけではなく、アイラッシュ業界全体の未来をつくることができたら、うれしいですね。
SALON DATA
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〔恵比寿〕nina(ニーナ)
- アクセス
- 「恵比寿駅」より徒歩2分
- 創業年
- 2010年
- 店舗数
- 5店舗
- 設備
- 個室5(恵比寿店)
- スタッフ数
- 5名(恵比寿店)