第3章ヘアサロンだからできる「アドバンスビューティー」を目指して
「“ヘア”を基点にして、メイク、ファッションへと広げていく。
お客さま目線に立った、“アドバンスビューティー”を。」
「オンラインコミュニティ」や「訪問美容」などさまざまなチャレンジをされています。他に「これからの美容サロンの形」として考えていることはありますか?
「美容サロンのデパートメント化」という構想があります。普段、洋服を選んでから「この服に似合うように髪をカットしよう」って考える人はあまりいませんよね。まず髪型があって、それからメイクやファッションを選ぶのが一般的です。ですから美容師が「この髪型に合う洋服が、あそこのお店にありますよ」と提案する役割も担えると思うんです。
美容師は、“就職”や“結婚”など「お客さまの人生にかかわる職業」であり、すでに同様のアドバイスを行ってもいます。それを発展させて形にしたいですね。ヘアケアはもちろん、メイクやファッションなどのアドバイスやコーディネートを美容師がする。あと商品は自社で販売するのではなくて、近隣デパートと提携したりするのも、お客さまに喜ばれそうですよね。こんな風に「“ヘア”を基点にして、その他の美容・ファッションに広げていく」。それが、本来ヘアサロンがやるべきことではないかと。“トータルビューティー”というより、さらに進化した“アドバンスビューティー”といえるかもしれません。
確かに現在、一般的な“トータルビューティー”は、お客さま視点というよりもプロダクトアウトというか、「自分たちが提供できるもの」がスタート地点になっている面があるかもしれません。
そうなんです。トータルビューティーサロンがいまひとつ盛り上がらないのは、ここにも原因があると思います。ヘアやメイクといった「首から上」、そしてファッション、小物などの「全体像」へと広げていく方が、お客さまもスッと受け入れてくれるような気がします。
ご自身が経営するヘアサロンに関しては、現在の1店舗から今後広げていく予定は?
ゆくゆくは、千葉県の新浦安に出店したいですね。「アフロート」も「ローラン」も、東京以外から通ってくれるお客さまがたくさんいます。これは都内に比べて「美容サロンが質的に不足している」ことの表れではないかと。ですから「千葉県側のお客さまの受け皿」として新浦安に出店し、その後は「神奈川県側」にも出店したいと構想中です。
新浦安という立地を選ぶ理由はもうひとつあって。ファミリー層が多いエリアなので、「訪問美容」の拠点にしたいという想いもあります。そこでいろいろトライをして、「アフロートでの訪問美容」にも役立てていきたいですね。
サロンを立ち上げた時と同様、「まずはご自身でトライしてからアフロートに還元する」というわけですね。
「アフロート」も大所帯になりました。新たなチャレンジをする時は、自分のサロンの方がフットワーク軽く動けますからね。もちろん「アフロート」から得るものもあるし、お互いにできることを提供し合いながら成長していきたい。「アフロート」はいわば足元がかたまっている会社。「アフロートが好きだからこそ、そのイメージを壊していきたい」とも思うんです。これからも自分のサロンの未来を切り拓きながら、「アフロート」の未来もつくっていきたいと思っています。
そんな物静かで穏やかな印象の西岡さんですが、奥さまとのエピソードには思わず笑ってしまいました。18歳の時に出会い、お互いに負けず嫌い。家に帰ってふと「つかれたぁ」とつぶやけば、「それくらいで、つかれるの?」と奥さまの返し。「つかれたっていうのは、単純に“体力的に”という事実を言ったまでで、“精神的に”という意味ではない」と言い返す。ほめられるのが苦手なので、時に発破をかけてくれる奥さまの存在が頼もしいとのこと。
「長寿家系に育ち長生きする気がしている」と語る西岡さんが、奥さまに宣言していることがあります。
ー 君の最期を見送るのは、僕だから ー
きれいにしてあげること、それが、美容の仕事をしてきた自分にできる最大限のことだと。
旦那さまとしても、美容師としても、心の底からしびれる言葉でした。