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訪問美容~データ&実例編~
超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。
vol.67
実例編富山で訪問美容!施設17件・個人宅200件と契約できた理由。

訪問美容あのね
- 訪問美容開始:
- 2020年
- 訪問施設数:
- 17件
- 施設訪問頻度:
- 毎週~隔月
- 訪問個人顧客数:
- 約250名
- 価格:
- カット(施設)2,500円、カット(個人宅)3,500円、シャンプー +1,000円、ヘッドスパ 2,000円、カラーカット/カットパーマ(施設)7,000円、(個人宅)8,000円、ハンドケア/フットケア +2,000円、ネイルカラー +1,500円~ ※出張料:射水市・高岡市は無料、他1,500円~
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Q
訪問美容に関心を持ったきっかけは?
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A
祖父母の介護経験がきっかけでした。
祖父母の介護生活、自身の育児を通じて訪問美容の必要性を実感。
元々美容サロンの広告営業時代に、訪問美容という仕事の存在は知っていました。サロンが増え続ける一方で人口は減少し、高齢化が進む状況を見て、訪問美容の将来性を感じていたんです。30歳になる年に富山に戻り、10年ぶりに祖父母の家を訪れたとき、祖父が認知症になり、祖母がその介護で大変そうにしている姿を目の当たりにしました。祖父が運転できなくなったことで、祖母は買い物や銭湯にも行けず、父が送迎してようやくそれが叶うといった不便な生活で…「今まで知らなくて申しわけない」と思いました。そんな中、祖母がヘアサロンに行くのが困難だと知り、「ヘアサロンに行けなくて困っている方はきっと他にもたくさんいるだろうな」と強く感じたのです。また私自身がシングルマザーだったため、ヘアサロンでの勤務と子育てを両立させる難しさも感じていました。そうした背景から「私には訪問美容が合っているかもしれない」と思い、挑戦することにしました。
介護の現場を知るため、デイサービスや訪問介護でも2年間勤務。
美容師としてはブランクがあったので、まずは地元のヘアサロンに就職し、シャンプーからやり直しました。2年半かけてカットまで習得していきましたが、「介護の世界を何も知らない」という不安があったので、サロンの勤務を週4回に減らし、週1~2回デイサービス・訪問介護でも働き始めました。デイサービスでは約2年間、訪問介護では5~6年ほど、排泄や入浴・食事の介助など介護の仕事をひと通り経験しました。最初は「家族以外の高齢者の方に接してみたら、自分はどう感じるだろう」といった不安もありましたが、実際に働いてみたら「思っていたより楽しい!」と感じることができました。「高齢者」とひとくくりにするのではなく、お一人おひとりの人生や人柄を知ることが大切だったのだと感じています。また、訪問介護ではさまざまなご家庭に訪問する際に気を付けなければいけないことや、実際の在宅介護の様子について学ぶことができました。その後、地元の訪問美容の先輩のもとで見習いを1年ほど経験し、2020年に独立しました。
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海老さんのお子さんは現在小学2年生だそう
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Q
どうやってお客さまを増やしていきましたか?
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A
紹介や直接営業を通じて、契約介護施設17件、個人宅約250名に。
コロナ禍で売上数万円。空いた時間で看護学校へ。
独立したのが2020年で、まさにコロナ禍の真っ只中でした。「不要不急の外出を控えて」と言われる中で訪問美容の営業には行けず、最初の1~2年は契約もほとんどありませんでした。最初の契約は、以前働いていたデイサービスが「海老さんに来てほしい」と契約事業者を切り替えてくださったんです。コロナ禍の間は、その施設と系列の紹介でいただいた計3件ほどで、売上も数万円レベルでした。この状況はしばらく続くと覚悟し、「暇な時間を無駄にしたくない」と、看護学校(准看護師課程)に2年間通うことに決めました。
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車の後部座席、荷物スペースに訪問美容の道具を収納している
「准看護師・介護福祉士」の資格が、営業の最大の強みに。
営業は、介護施設や、ケアマネジャーさんがいる地域包括支援センター・居宅介護支援事業所を中心に行いました。広告は一切使わず、営業と口コミだけで増やしてきました。看護学校を卒業する頃から本格的に営業を再開。卒業時には介護の実務経験も3年以上になっていたので、介護福祉士の資格も取得しました。営業の際、この「准看護師」「介護福祉士」の資格が大きな強みになりました。この業界で資格はとても大切なので、「ちゃんと勉強している人だ」という安心感を持っていただけたことが良かったのではと思っています。また、在宅のお客さまは「他人を家に入れる」ことになるため、特に信頼関係が重要です。パンフレットには、自分が地元出身であることや、どんな想いで学んできたかを書き、「この人なら任せられる」と思っていただけるよう工夫しました。
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「訪問美容あのね」チラシ表面。訪問美容にかける想いや、海老さんの人柄がわかるつくりになっている
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「訪問美容あのね」チラシ裏面。料金は近々改定し、値上げをしていく予定だそう
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Q
訪問美容で利益を出せるようになったのは?
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A
独立4年目頃から。現在は月40万~50万円弱で安定。
コロナ禍で売上が伸び悩む中、准看護師の資格を取得しました。「このまま訪問美容だけで暮らしていけるのかな?」という不安や周囲からの勧めもあって、正看護師の学校への進学を決めました。進学して半年ほど経った頃(独立から約3年半~4年目)から訪問美容の予約がどんどん埋まるようになってきて、「この仕事だけでいける」と確信しました。せっかく依頼いただいた仕事を断ってまで学校を続ける理由はないと思い、正看護師の学校は中退して訪問美容に専念することに。現在の売上は、月40万~50万円弱くらいです。売上の内訳は、施設と在宅でちょうど半々くらいですね。
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お客さまご自宅のお風呂場に移動式シャンプー台、車椅子をセット
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お風呂場で施術する場合は、ご自宅のシャワーをそのまま使用している
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Q
今後の夢や目標は?
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A
「助かった」の声がやりがい。今後は仲間も増やしたい。
フットケアはニーズ・満足度共に高い。
いちばん嬉しいのは、お客さまやご家族から「助かった。あなたが来てくれなかったら、どうしようかと思ってた」「いつも海老さんが来るのを楽しみにしてる」と言っていただけることです。また看護の勉強を活かしてフットケアも提供していますが、とても喜ばれています。高齢になると体が硬くて手が届かなかったり、爪が厚くなったりして、ご自身で足の爪を切れない方が本当に多いんです。転倒防止のためにも足のケアは重要ですが、ご家族も、多忙な介護・看護スタッフもなかなか手が回らない部分。「こんなに丁寧に足を洗ってもらったのは初めて」「気持ちいいね」と感動していただけることもあり、やりがいを感じています。
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個人宅での訪問美容の施術の様子。こちらのお宅ではご家族が鏡や照明などを用意してくださるそう
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鏡越しにお客さまと目を合わせて、ニッコリ。介護をしているご家族のカットを依頼されることも
今後は仲間を増やしていきたい。
今後は、一緒に活動してくれる仲間を増やしていきたいです。業務委託やパートナー契約を通じた、お互いに協力しあい成長できる関係が理想ですね。また、ヘアサロンに行けなくて困っているのは、高齢者の方だけではありません。子育て中のママなど、ニーズはたくさんあります。介護保険外のサービスだからこそ、福祉に特化しすぎず、いろいろな可能性を広げていきたいと思っています。
海老さんからひとこと
ヘアサロンに行けなくて困っている方、あなたを必要としている方は、その町にたくさんいるはずです。ぜひ勇気を持って一歩を踏み出してほしいと思います。知識や技術の準備も大切ですが、それ以上に、まずはお客さまの話をしっかり聞くことがいちばん大切です。そこにたくさんのヒントが隠されています。自分が何をやりたいかよりも、お客さまが何を求めているかを考えることが、この仕事では大事な気がします。

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