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訪問美容~データ&実例編~

超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。

vol.66

実例編介護ネイルで施設契約16件!運命の仕事に出会った道のり。

西新宿のヘアサロン内でネイルブースを運営しながら介護施設などで訪問ネイルを行っている「ネイルサロンanvien」代表の安部佳織さん。ご自身でも訪問美容を行う傍らスクールを運営し、介護ネイル・訪問ネイルを行うネイリストの育成にも力を入れています。ご自身の手で訪問美容・介護ネイルの道を切り開いてきた安部さんに、その道のりについて伺いました。

ネイルサロンanvien

  • 全スタッフ6名(不定期依頼の業務委託スタッフ20名)
  • 1店舗
代表:
安部佳織さん
訪問美容開始:
2017年
訪問施設数:
16件
施設訪問頻度:
月1~2回
訪問個人顧客数:
1名
訪問スタッフ:
6名(不定期依頼の業務委託スタッフ20名)
価格:
ハンドトリートメント・爪磨き1,000~2,500円、ポリッシュ(アート1本)2,500~3,500円、ポリッシュ+ハンドトリートメント4,500円、巻き爪・肥厚爪…施設4,500円/自宅8,800円(訪問1時間)、ヘアメイク5,000円、レクリエーション8,000~10,000円(1回あたり、人数制限なし)、フェイシャルエステ5,000円、フットトリートメント1,000~2,500円

Q

介護ネイル・訪問美容に興味を持ったきっかけは?

A

フットケアスクールの介護施設ボランティアがきっかけでした。

自分自身・お客さまの入院を経験し、訪問美容と運命の出会い。

私は18歳で出産し、いろんな仕事を経験してきました。19歳の頃にネイルに出会ったものの、当時ネイルスクールは東京に一校あるだけだったので通うことができず、子供が小学生になってから念願のネイルスクールに入学できました。2019年に自分のサロンを持ち、2~3年ほどかけて経営を軌道に乗せてスタッフも雇用して…と頑張ってきましたが、年齢を重ねていくうちにサロンワークでバリバリ働くというやり方が「しんどいな」と感じるようになってきたのです。その頃、サロンの長いお客さまが入院し「ネイルを外さないといけないけど、どうしたら良い?」と電話がかかってきました。病院に許可を得てネイルオフとケアをしに伺ったら「実はかなり重い病気で落ち込んでいたのだけれど、ネイルをキレイにしてもらって前向きになれる」と涙ぐんで喜んでくださったのです。実はその頃「ネイリストとしてやりたいことはやりきった」という感覚があり、次の目標が見つからなくてモヤモヤしていました。なので涙を流すお客さまを見た時に雷に打たれたような感覚を覚えました。胸の中から泉のように熱い何かが溢れてきたのです。

自分がネイルに救われたから、ネイルを通じて恩返しがしたい。

私自身も自己免疫疾患にかかり、脱毛症を発症してウィッグ生活になりました。落ち込む日々でしたが、ネイルの仕事をしていると気がまぎれ、だんだんと「このまま落ち込んでいても仕方ない」と感じるように。日本ネイリスト協会の認定講師の資格を取りフットケアスクールにも通う中、スクールが行っていた介護施設でのボランティアに参加させていただきました。「自分はネイルに救われたから、ネイルを通じて誰かの役に立って恩返しがしたい」と思ったのです。「私自身がつらい経験をしたからこそ、病気や高齢の方の気持ちに寄り添えるのでは?」「これは運命だ」と思いました。

  • 新宿には多くのネイルスクールがある中で「私にしかできないことって何かな?」と考えるようになったと語る安部さん

Q

まずは何から始めましたか?

A

ボランティアからスタートし、半年後に有料化しました。

2013年から2016年まで介護施設や病院でフットケアのボランティアを行い、2017年に福祉ネイリスト認定講師の資格を取得。でも当時は介護ネイル・訪問美容の知識を持っている方が周囲にいなかったので、何のノウハウもない状態でした。「とにかく現場に行くしかない」と思い、施設職員の方に手伝っていただきながら無料で訪問美容をスタート。ホームヘルパー2級(現:介護職員初任者研修)を取得し、スタートから半年後に有料化し営業を始めました。最初はサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)やデイサービスに伺い、サロンと同じ価格で案内を始めたところ「そんなに高いのは無理」と断られるばかり。そこで介護業界とのつながりをつくるために交流会などに参加し、プレゼンタイムで自分の想いをアピール。そこからの紹介が大きかったですね。いろんな施設を訪問するうちに、介護施設に受け入れていただける価格帯がわかってきました。施設によっても許容できる価格帯が違うので、入居費用をチェックしてどういう価格で提案するかを考えるようになりました。

  • 介護施設での施術の様子。ネイルブースがないので、椅子に座ったご利用者さまの横で施術を行っている

  • 安部さんの名刺。パッと見てサービス内容と顔が伝わるよう工夫している

営業をしていくうちに痛感したのが「自分のやりたいことばかり伝えているのではダメ」ということでした。せっかくお時間をいただいていても、ネイルのことしか話さないのでは価値をわかっていただけません。まずは営業に行く前に介護施設のホームページやSNSをチェックするようにしました。すると、どんな方針で施設を運営しているのか、どんなことが求められているのかがわかるようになって来たのです。営業の時には「こういうサービスをやっているんですね。実際にやっていてどうですか?」など、事前に調べた情報をもとに質問。その答えを聞きながら「こういう提案だったら受けていただけそうかな?」と思ったことをお伝えするようにしています。提案は数パターン用意していて、メニューも松竹梅のランクを準備。営業しているとどこの施設でも最終的には「いくらですか?」という話になるので、その際は「他のアクティビティはいくらでされていますか?」と確認しています。他のサービスの利用料金を聞けば上限がつかめるので、その範囲内でメニューと価格をご案内すると受け入れていただけやすいと感じています。また、介護施設に入居している方のサービス利用料は実際にはご家族の方が支払っています。だから本人がいくら「やりたい」と言っても、ご家族の方が納得していないとサービスを受けていただくことができません。でもネイリストではない介護職員がご家族に説明するのはハードルが高い。なのでご家族への説明用の資料を作成しました。申込用紙をセットして職員の方に渡したところ「ありがたい。痒いところに手が届くね」と喜んでいただけました。

  • 安部さんの訪問美容のチラシ

  • ハンド/フットトリートメントのチラシ

Q

訪問美容を通じて始めたことは?

A

行政からの依頼を受けたり、介護ネイリストを育成するようになりました。

アクティブシニア向けのセルフネイル講座を開催。

社会福祉協議会に挨拶に行っているうちに、行政から「アクティブシニア向けのイベントをやってくれませんか?」といった依頼が来るようになりました。現在は自治体3カ所でセルフネイル講座を行っています。ネイルをすることで褒めたり褒められたりといったコミュニケーションが生まれますし、おしゃれしてお出かけしようかなという前向きな気持ちになれます。「ずっとやってみたかったの」と喜ぶ方もいて、こちらも嬉しくなりますね。

  • 人気のカラーは薄紫、ピンク、ベージュ、赤だそう

介護ネイル・ヘアメイクレクリエーション講座を開催。

実は看護師資格を取得し、今年の4月から病院勤務を始めました。看護学校に行きながらも、訪問美容とスクール講師という三足のわらじでやってきたのです。スクールでは「介護ネイルサポーター講座」と「ヘアメイクレクリエーション講座」を開催しています。「介護ネイルサポーター講座」は週1回×3カ月で、介護施設での実習2回が含まれます。価格は15万円(税別)ですが、不定期で割引キャンペーンをおこなっていて、現在は9月末まで13万円(税別)で生徒を募集しています。「ヘアメイクレクリエーション講座」は週1回×2カ月で、実習5回が含まれます。特典として卒業後は施設1件を紹介し、自分で契約につなげるサポート付き。それぞれの卒業生には、不定期で業務委託として仕事を依頼することもあります。

スクールの生徒にいつも伝えているのは「チームをつくって取り組みなさい」ということです。ひとりではなく「みんなでやっている」と思うと責任感も生まれますし、不思議と怠けなくなります(笑)。仲間がいるから続けられるのです。

  • 介護施設での施術の様子。訪問美容ではサロンと違い無理な姿勢で施術をすることも

  • 季節イベントでの施術の様子。施設職員の方に施術することもあるそう

Q

訪問美容・介護ネイルのやりがいとは?

A

ネイルは美容だけじゃない価値があると感じられることです。

私の祖母が亡くなった時、周囲から「ネイリストなんだから、おばあちゃんにネイルをやってあげたら」と勧められたのに、悲しみが強すぎてやってあげることができませんでした。それをずっと後悔していたのですが、6年前に母が亡くなった時に”エンゼルネイル”をやってあげることができました。そうすることで私自身が母の死を受け入れることができ、周囲も「キレイになったね」と笑顔で母を送り出してくれました。介護ネイルをやっていてよかったなと心から思いましたね。また、介護施設では認知症が進んでいる方も多くいらっしゃいます。でも自分のキレイなネイルを見る度に「爪をやってもらったんだ」と思いだすことができるし、こちらも毎回同じエプロンに目立つ飾りをつけていくことで「ネイルの人」と記憶していただくことができます。ネイルは単なる美容や贅沢ではなくて、長期記憶を保つことができるツールでもあるのです。そういった価値を施設職員やご家族の方にわかっていただけると嬉しいですね。

  • 「私たちも定期的に交流会を開いていますが、介護ネイルをやっている方と交流し刺激をもらうことも続けるコツのひとつです」と安部さん

安部さんからひとこと

「どうしたら訪問美容でお客さまを増やせるのか?」と聞かれたら、「とにかく行動するしかない」と答えます。コツコツ営業を頑張るしか道はありません。当校のスクール生で頑張っている人がいたら介護施設を紹介しているのですが、大抵の人は行動しません。でもすぐにその施設に電話して営業に行ける人は契約が取れるのです。あれこれ難しく考えるのではなく、とにかくアドバイスを素直に受け止めて行動するのが正解だと思います。ぜひ一緒に介護ネイルを盛り上げていきましょう!

Salon Data

ネイルサロンanvien

アクセス
西新宿駅から徒歩7分(ヘアーメイクフガール店舗内)
創業年
2009年
店舗数
1店舗
設備
ネイルブース1席
スタッフ数
6名(不定期依頼の業務委託スタッフ20名)
URL
https://www.instagram.com/anvien_kaori
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