第2章「組織」と「個」の新しい関係性
「独立はゴールじゃない。組織に属しても
できることがあると、後輩に見せたかった。」
現在は大阪、東京、シンガポールのサロンを1~2週間ずつまわる日々だそうですね。シンガポール店には、カンタロウさんも出資されたとか。先ほどの「独立支援制度」とは、また異なる形ですね。
まずこのシンガポールの出店は、「LIM」が大阪から東京に店を広げて、安定して利益が出るようになったころに話が持ち上がったんです。東京進出が軌道に乗って、これで満足するのはおもしろくない。何か新しいチャレンジをしたかったのが出資した理由のひとつ。あとは「独立支援制度」だけじゃなく、「組織に属しながらできることはいろいろあるんだよ」と、後輩に示したかったから。
2009年に1店目をオープンしたシンガポール店は、現在4店舗に拡大しました。順調ですが、成功した理由は?
海外進出でネックになるのは「人材確保」です。特に自分はブログでいつも高い理想を語っているし、こんな見た目でちょっとコワそうだし、スタッフからも「働きたいという人が来なくなっちゃうから、もう少しトーンダウンしたブログにしてください」なんて言われることも。でも変えないことにしています。むしろ、ハードルが高いと思わせたいから。それでも「うちで働きたい」って来た人は、簡単に辞めません。最初の入口を狭くしているってことは、その時点である程度の人選ができている。だから、いいスタッフが集まってくる。それが成功につながったと思います。
2013年に「LIM」を退社されました。現在は個人事務所を立ち上げて、「LIM」から仕事を請け負う形です。これも珍しいですが、なぜ独立を?
大阪、東京、シンガポールと店舗を広げていくうちに自分の活動が知られていって、セミナーや取材の依頼が「LIM」を通さずに直接来ることが増えていきました。「LIMに所属するカンタロウ」から、「カンタロウがいるLIM」に、周囲の認知が変わったという印象がありました。「組織の中の自分」という働き方から、「自分が主体になって活動する時期」になったのかなと感じて、それが独立を考えたきっかけですね。組織の中にいた「個」が、「組織を飛び越えていった先の生き方を、まず自分が形づくりたい」という思いもあって。それを、あとに続く人たちに示したいと。
独立後もロンドン店の立ち上げを指揮するなど「LIM」の発展を支えています。独立後は元のサロンとの関係を断ち切る人も多いなか、そうしないのは?
「恩返し」ですよね。いま自分がある程度いい評価をしてもらえているのは、「LIM」にいたからこそ得られたもの。だから育ててもらった恩返しというか、これからは自分が「LIM」に還元していくのがスジだと思っています。
なかなかそう実践できる人は、少ないのでは?つい「自分の力でやってきた」と思ってしまいます。
もちろん若いころはテングになりましたよ。自分で結果を出した自信もあるし、「俺はすごい」って。だけどよく考えたら、新店舗の出店にしてもゴーサインを出して、数千万円の資金を用意して、最終的な責任を負ってくれているのは社長です。自分が数千万円を出すハンコを押せるか?って考えたら、それがいかにありがたいことかわかりますよね。
あとは単純に、そういうスジを通した生き方をしている人の方がかっこいいと思うから、自分もそうありたいなと。「あいつ恩も感じないし裏切るんだぜ」なんて人とは、一緒に働きたくないでしょ?