第3章店舗にとどまらず、収益を上げる「仕組みづくり」
「ちょっと視点を変えると新たなニーズにつながる。
店舗以外でも、売上を高める方法はいくらでもあります。」
現在も手広く事業展開されていますが、先ほどお話にあった「常にブラッシュアップしていく策」として、今後考えていることは?
すでに動き始めているものとしては、旅行代理店と手を組んで「インバウンド需要」を取り込む事業があります。日本に来た外国の方向けに、ヘアメイクレッスンやネイル、着物レンタルといったメニューをオプショナルツアーに組み込んでもらっています。もう一つは、婚活企業との提携。婚活サービスの利用者は、女性に比べると男性は消極的な傾向があって、身なりを整えるのが得意ではない人が多いようです。そうした男性を受け入れて、眉カットを行うというサービスをすでに始めています。今後はサロンのなかで、婚活用の写真撮影も行えるよう準備している段階です。
メイクやヘアセットといった「アトリエはるか」のサービスは、「ハレの日」需要に向けたもので、来店も土日がメイン。ですから、いかにして平日の稼働率を上げていくかが課題となります。その対策として、婚活企業との提携もそうですし、ホテルや銀行といった接客業向けの身だしなみ講習など、店舗以外の需要を掘り起こして収益を上げることを進めています。
お客さまの少ない平日に、手が空いている人材を店舗以外で活用するというわけですね。
平日にできることとしては、アパレル企業のECサイト(インターネット通販)のヘアメイクを行うアーティスト派遣事業もあります。最近のアパレル業界では店舗よりもECサイトの売上が高まっているそうで、力を入れている企業も多いんですよね。そうしたウェブサイト用の撮影は平日に行われています。なので、うちとしては平日に人材を供給できるんです。
店舗内で行うサービスとして、新たに考えていることは?また、店舗数は今後も増やしていく予定ですか?
店舗でお客さまにサンプル商品を配布して、他社のプロモーションの場として活用してもらうことを広げていきたいと思っています。うちに来るお客さまなら美容やファッションに関心があるので、街中で無差別にサンプリングをするよりも狙ったターゲットに届きやすいというメリットがあります。
また、これまではお客さまに「コンビニ感覚で利用していただきたい」という想いから、記入するわずらわしさを避けて会員登録やアンケート調査を行ってきませんでした。ですが店舗数も増え、現在は年間約65万人のお客さまに利用していただいています。今後は「これだけの顧客データを、お客さまのためにも活かしたい」と考えています。
店舗に関しては、ご縁があれば今後も出し続けます。ただしうちは「ハレの日」需要ですから人口当たりの需要に限りはあって、延々と店舗を増やせる業態ではありません。でも商売というのは一つのサービスを深めていくことも大事ですが、ちょっと角度を変えた視点を持つことで新たなニーズにつながる面もあると思うんです。なので今後、店舗拡大以外にも可能性はあると考えています。
会社としてではなく西原さんご自身の、5年後、10年後のイメージは?
先ほど話したように世代交代が必要ですし、下のスタッフたちも育ってくれているので、私自身は将来的には別の商売をやっていたいなと考えています。その経験を活かしたサービスもいいかもしれませんね。これまで年齢と共に「これがほしい」と考えて商売をつくってきました。なのでこれからも「自分の年齢に応じた、そして世の中にも求められる事業」を始められたらいいなと思っています。
とにかく「人が好き」ということが、伝わってきます。
合コンでも、セミナーでも、そこで出会った人たちから
新しいアイデアが生まれ、ビジネスにいかしていく。
家では、3人の男の子のママでもあります。
その子育ての中で感じたものを
店舗サービスのブラッシュアップ、そして
次なる事業へのヒントにつなげているのでしょう。