女性スタッフが
長く働けるサロンとは?
~オーナーの実例紹介から、専門家による労務知識まで~
全国5カ所で開催したイベントも、いよいよこの大阪が最終回です。今回は地元・大阪のサロン「GIEN」さんも初参戦。新しい切り口から、女性活躍について語ってくれました。参加者は62名!ヘアサロンをはじめ、ネイル・エステ・リラクゼーション・アイと、さまざまな業種の方にお集まりいただきました。
登壇ゲスト
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株式会社GARDEN
代表取締役加藤敏行さん
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株式会社INVINCIBLE(GIEN)
代表取締役井上光治さん
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株式会社anemone
新宿マネージャー正岡裕康さん
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社会保険労務士法人
秋田国際人事総研
代表秋田繁樹さん
第一部サロンの実例を知る
最初に、弊社執行役員・ホットペッパービューティーの責任者である柏村より、イベントへの想いや目的。またすでに終了した4会場の感想を述べました。次にホットペッパービューティーアカデミー・齋藤から、美容業界における「女性活躍=女性が長く働ける環境」について、データをまじえてお話しました。
GIEN(ジアン)
2009年に大阪府・京橋にGIENをオープン。創業当時から女性活躍の取り組みを実施しており、現在はスタッフの7割が女性。創業から6年半で、退社したスタッフはわずか2名という離職率の低さを誇る。
- [店舗数]
- 3店舗
- [スタッフ数]
- 23名(うちスタイリスト11名、レセプション1名)
女性が長く活躍できるための取り組み
[ママスタッフ3名]
- 産休&育休、時短勤務制度
- 保育料全額サポート
- ママが参加しやすい、朝の勉強会
- 企業理念(クレド)の浸透
- スタッフ間の協力体制づくり
当日出たお話を、
一部抜粋してご紹介します
- Qスタッフみんなが女性活躍に協力的だとうかがいました。その秘訣は?
-
A
うちの場合は、企業理念である「クレド」が全員に浸透していることが大きいと思います。自分たちの存在理由・働くことの意義などをスタッフと一緒に考えて、小さな冊子にまとめたものです。細分化された項目についてどう思うか、週に一回必ず共有します。そのクレドがスタッフに浸透していくと、「人の成功をサポートしよう」「スタッフに子どもができることは無条件にうれしい」というポジティブの連鎖が生まれて。そうするとママスタッフに対しても、自然と協力的になっていきます。それがあらゆる場面で出てきますね。例えばスタッフが妊娠を報告する時も、他のスタッフから盛大な拍手が起きる。みんな心から喜んで、応援してくれる。そんな風土になっています。
井上さん
anemone(アネモネ)
2010年の独立以来、年間4店舗のペースで出店。現在は東京都内を中心に、札幌・仙台・大阪などにも店舗を構える。「日本一給料が高い会社」を目指し、労働環境のさらなる向上に取り組んでいる。
- [店舗数]
- 22店舗
- [スタッフ数]
- 257名(うちスタイリスト253名、アシスタント4名)
女性が長く活躍できるための取り組み
[ママスタッフ25名]
- 雇用体系は何度でも変更可能
- 2週間前シフト希望制度
- 出産お祝い金
- ママスタッフの急な休みへのフォロー体制
- 産休・育休、時短勤務制度
当日出たお話を、
一部抜粋してご紹介します
- Q実際にanemoneさんで活躍しているママスタッフはどのくらいいますか?
-
A
今は全店舗で計25名います。ちなみに銀座店には松野という者がいるのですが、彼女はスタイリスト歴12年、10カ月の子どもを育てながら、現在は時短で勤務しています。いくつかのサロンで働いた後、ハードな働き方に疑問を感じていた時に、たまたまうちの求人を見かけたようです。「続ける意思さえあれば続けられる環境を与えてくれる」「雇用形態や出勤時間をスタイリストに任せてくれる」、そんなところが働きやすいと言ってくれていますね。ちなみに松野は、サロンに出ている時は予約でいっぱいになるくらい、人気のママスタイリストになっています。
正岡さん
GARDEN(ガーデン)
東京・原宿に200坪という日本最大級のヘアサロンを2006年にオープンさせて以来、銀座・新宿・ニューヨークなどに店舗を展開。常に業界のトップを走り続けるサロン。
- [店舗数]
- 9店舗
- [スタッフ数]
- 270名
(うちスタイリスト99名、アシスタント121名、レセプション40名、バックスタッフ10名)
女性が長く活躍できるための取り組み
[ママスタッフ4名]
- 産休&育休、時短勤務制度
- 産休に入るスタッフの顧客を「仲人型」で引き継ぎ
- 一人ひとりの「WILL」に合わせた、「キャリアと人生プラン」の設計
- 女性スタッフの体調ケア
当日出たお話を、
一部抜粋してご紹介します
- Q女性活躍に取り組み始めた、きっかけは?
-
A
GARDENは過去、どちらかと言うと「スーパー美容師を育てる」という風土だったと思います。しかし、一番最初に「出産後も働きたい」と声を上げたスタッフがいたことがきっかけで本格的に取り組みを始めました。そのスタッフと話している中で、「将来が見えないことが不安なんだ」と気づきました。スタッフがゴールに向けてがんばれるように、「見える化」してあげればいいのだと。そのような経緯で「キャリアプラン」という仕組みができました。入社してからデビュー、トップスタイリストまでを何年で目指すか?志向はマネジメントか、テクニカルか?バリバリやりたいのか、家庭を優先したいのか?などなど。一人ひとりに合わせて目指すべきゴールと、それに向けて今何をすべきかを一緒に考える。このキャリアプランが、スタッフの不安を軽減させることにつながったと思います。
加藤さん
第二部労務のキホンを知る
秋田さん
社会保険労務士法人 秋田国際人事総研・労務士。社会保険労務士業務として、多数の美容室の労働管理・指導相談にあたっている。「美容室・はじめての労務管理と就業規則」など、著書多数。
秋田先生より、美容サロン経営をするうえで必要な労務知識(産前・産後、復帰後の制度など)についてお話いただきました。ホットペッパービューティーアカデミーのサイトでも、イラストをまじえて楽しく労務知識が学べる記事を連載中です。ぜひチェックしてみてください。
第三部パネルディスカッション
3サロンのゲスト、秋田先生に再度ご登壇いただき、参加者の方からの質問をもとにパネルディスカッション形式で進行しました。その一部をご紹介します。
会場からの質問に答えていただきました!
- Q産前休暇のところで「産前休暇が基本6週間、42日間。本人が請求したら軽易な業務に転換」とのことでしたが、「軽易」の目安は?
-
A
「軽易」というのは、まず本人がどの程度を軽易と思うかのレベルを、事前にきちんと聞くことが大切です。母体保護の観点から、主治医の先生と軽易な業務がどこまでなのかを話し合うのもすごく重要。サロンがやってもらいたい仕事と、実際に本人ができることには、ズレがある可能性も。その落としどころは、第三者であるドクターの意見が参考になるでしょう。
社会保険労務士法人
秋田国際人事総研
秋田さん
- Qママスタッフは、他のスタッフの理解をどう得ている?
-
A
「なぜ女性活躍に取り組んでいるか」「個々の雇用形態&どう働くべきか」、それをスタッフみんなが理解していることが大きいですね。若いスタッフにとっても、ママスタッフがいることは将来のロールモデルとしての目標になっています。もうひとつよかったことは、求人への応募が増えたこと。やはり今の美容専門学校生は「安心感・安定」といったものを求めているように思います。サロンが生き残っていくためには、今後「人材」が必要不可欠。そこまで含めて、スタッフ全員が理解し納得していることが大切です。
anemone
正岡さん
- Qスタイリストだけでなく、アシスタントさんにも辞めないでもらう工夫は?
-
A
美容師ってアシスタント時代に辞めてしまうことが多いですよね。それを食い止めたいと思って始めたのが「ケアリスト制度」。これは、ヘッドスパやトリートメントに主担当で入ったり、店販も担当することです。そうしてカウンセリング力を上げることもできるので、入社後最短6カ月で、美容師デビューも可能です。
ケアリストとなることで、アシスタントは「必要とされていること」「指名されること」の喜びを得ます。そうすると自分の存在理由が明確になりますよね。早い段階で「やりがい」を実感してもらうことが、離職率の低さにつながっていると思います。
GIEN
井上さん
- Q今後も女性活躍を進めていきますか?
-
A
はい、もちろんです。政府が打ち出している「1億総活躍社会」。少子高齢化で経済が停滞してしまう、労働人口が減るから働けるうちは働こう、というものです。そのひとつが、女性が活躍できる社会ということですよね。これからの日本の人口割合で考えると、オトナ女性と言われる層がボリュームゾーン。オトナ女性にとっては、やはりスタイリストも女性である方が喜ばれることが多いと思います。そういったことから考えても、女性が長く働ける仕組みづくりはサロンにとって必須です。
ヘアサロンに限らず、美容業界全体として、いかにそれを整備していくことができるのか?それが、「この業界の社会的地位が上がるかどうか」のキーポイントになっていくと思います。美容業界に足りていなかったかもしれない「当たり前」の環境をつくれば、人材難は減っていきます。すぐにできることは、すぐにスタートしましょう。時間がかかることも、今から準備すれば実現できるはずです。GARDENもまだ始めたばかり、今から一歩ずつみなさんと、進んでいきたいと思っています。
GARDEN
加藤さん
イベントを終えて。
参加者の方より
これからどのようにしたらいいか、
道筋が見えた!
同じグループの人と悩みを共有できたり、
解決策を話し合えたのがよかった。
労務の大切さを知ることができた。
もっと勉強しなければ!
GARDENさんのキャリアプラン、
早速取り入れてみたい。