女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.105「ママ美容師こそ財産」と語る、
急成長店舗の女性オーナーの経営方針とは?
LUKE free
愛知県蒲郡市
2013年に創業した「LUKE free」は、「ずっとおしゃれをしたい」とう幅広い層の女性たちの支持を受け、4年間で6店舗にまで急成長。うち2店舗は、元の店長たちにFCとして譲り渡しています。オーナーの福本貴子さんは、結婚後に4年間専業主婦を経験。その後復帰し、ご自身の独立後も、ブランクのあるママ美容師を積極的に採用。「ママ美容師は必ず利益を生み出す」と、全15名のスタッフのうち6名がママ。福本さんの女性活躍の考え方についてお話をうかがいまいした。
1取り組み
「ママ美容師は財産」ととらえ、ブランクがあっても積極的に採用。
どんな取り組み?
「LUKE free」全6店舗の15名のうち、ママスタッフが6名もいる。入社後に妊娠・出産したスタッフだけでなく、出産・育児で一時的にスタイリストを辞めていた部下や後輩たちに、福本さんから声をかけて採用したスタッフもいるという。
なぜそうした?
福本さんがママ美容師を積極的に採用している理由のひとつは、子育てしながらでも美容の仕事を続ける素晴らしさを知ってほしいから。それは、ご自身の経験から感じたことだという。「私は仕事に復帰したときに、『ママではない、個人の人間としての自分でいられる時間』のありがたさを実感しました。育児も仕事もそれぞれに大変です。一方のストレスを他方で解消できることが両立のよさだと思いました」(福本さん)
「ママ」としてではなく、「仕事で活躍する自分」という時間があるからこそ、育児もまた頑張れて、子どもがいっそうかわいく感じるようになったそうだ。
もうひとつは、ママになると人への理解力が格段に上がり、それが接客やスタッフとの関係づくりにも役立つと考えているからだ。「子どもってこちらが一生懸命伝えないとなかなか理解してくれない生き物。また、言葉が話せないので、子どもが何を考えているのかこちらも必死に理解しようとします。この経験が仕事にも生きてくるのです」(福本さん)
こうしたコミュニケーション能力の高さでママスタッフは次々にファンを増やし、お客さまを獲得していく。福本さんがママ美容師を「利益を生み出す財産」と考える理由だ。
2取り組み
それぞれの事情に合わせ、多様な働き方を受け入れ、互いに尊重しあう雰囲気をつくる。
どんな取り組み?
「LUKE free」のママスタッフの中には、シングルマザーが2名いる。ママスタッフたちの子どもの年齢もいろいろだ。もちろんママではないスタッフもいて、それぞれに抱えている事情は異なる。そのため、個々の都合に合わせて時間を決められるパート勤務や、土日を休日にする働き方など、スタッフの事情を受け入れている。
なぜそうした?メリットは?
同じママスタッフでも、ご主人の仕事の関係でパートでしか働けない人もいれば、フルタイムでの収入が必要なシングルマザーもいる。多様な人がともに働く場なので、働き方も自由に選べるようにしているそうだ。そのことで、若いスタッフたちが人生の岐路に立ったときにも「美容師を辞めずに続けられる選択肢がある」と、ビジョンをもつことができる。
「フルタイム勤務のスタッフたちが不公平を感じないように、『パート勤務の人がいるから、みんなが平日に休んだり、セミナーに行けたりするんだよ』と、お互いに感謝の気持ちをもつことを忘れないムードづくりはしています」(福本さん)。子どもがいる人もいない人も、お互いに尊重し合える社風が「LUKE free」にはある。
3取り組み
キッズルームをつくり、スタッフが子連れで出社できる。
どんな取り組み?
「LUKE free」の3号店である蒲郡店には、オープン時からキッズルームを設けた。お客さまが子どもを連れてきて遊ばせておけるだけでなく、スタッフが子連れで出社した場合、手のあいているスタッフが子どもの面倒を見たりしている。
背景とメリットは?
創業当初からママスタッフを積極採用してきたこともあり、お客さまも子育て中の方が増えている。また、子どもの保育園が決まらないことで復帰を迷っているスタッフがいる場合に、心置きなく働ける環境を提供したかったそうだ。
「以前勤めていたサロンの部下だった石黒真由が、妊娠中に仕事を辞めて、出産後に別の仕事をしていると聞いたときに、『それなら子どもを連れてうちで働けばいい』と誘いました。当時まだ保育園に入れていなかったので、石黒は入社とともに子連れで出社し、スタッフみんなで彼女の子どもを育てました」(福本さん)
石黒さんの子どものお世話をすることで、若いスタッフや子どものいないベテランスタッフたちも子育てを疑似体験でき、スタッフ全員がママの気持ちがわかるように成長したと福本さんは考えている。
4取り組み
FC化を進め、ママ店長もFCオーナーに登用予定。
どんな取り組み?
創業以来、次々と店舗を増やしてきたが、やる気のある店長にはFCとして店舗を譲り渡している。男性店長だけでなく、女性店長のFC店も誕生。現在、直営店の店長のママスタッフも、FCとして独立することを目指してがんばっているそうだ。
背景とメリットは?
福本さん自身が、オーナーになりたくて独立したこともあり、女性オーナーの店舗を増やしたいと考えている。「いつも素敵な服を着ていたい」とか、「子どもにいい教育を受けさせたい」など、人生の目標を達成するには収入が必要だ。FCとして自分の店をもつことで、がんばった結果が収入につながることを実体験してほしいというのが福本さんの考えだ。FCなら、完全な独立よりも「共同体」としてお互いに安心感がある。
「『オーナーになったママはかっこいい』と子どもにも思ってもらえると思います。また、お店をもつことは子どもに財産を残せることにもなりますよね。お客さまも女性スタイリストには長く続けてほしいと思ってくださっているので、お客さまとずっと向き合える環境を女性スタッフたちにももってほしいのです」(福本さん)
オーナーインタビュー
- Q. ブランクのあるママ美容師の採用に、技術的な不安はありませんか?
-
A. 練習すれば勘は戻ります。ブランクがあると謙虚に学んでくれます。
採用する側としてはブランクはないにこしたことはありません。それでも前述のように、ママスタッフは人間力の高さで経営に貢献してくれます。月に2回、外部講師を招いて練習会をやったり、お客さまのいない時間は営業中でも練習OKにしています。もともと経験があるので、練習すれば勘は戻り、新卒を教育するよりずっと早く、教育投資も少なく済みます。また、ブランクがあることで本人も不安に感じているため、逆に謙虚に一生懸命学ぼうという姿勢が高いように感じます。
- Q. 財産となるママ美容師を活用するために、サロンに必要なことは?
-
A. 働き方など、環境を整えてあげることと、メンタル面のフォローです。
ママ美容師はどうしても時間の制限がある人が多いです。それを許容する働き方や制度などの環境を整えることは必要です。キッズルームや託児室があればなおさらよいと思います。
また、ちょっとお店が忙しい時期など、一般のスタッフであれば「明日休日だけど、出てもらえない?」などとお願いすることもありますよね。でも、ママスタッフの場合はそれをしてしまうと、「やりたいけれど子どもの事情を考えるとできない」と、本人が必要以上にプレッシャーを感じてしまいます。子育ては子どもの命がかかっており、ママスタッフにとって子ども以上に大事なものはありません。メンタル的なことでママスタッフを追い詰めないことも大事です。そうした状況をオーナー自身も理解し、まわりのスタッフにも理解や協力を求められるようにしてあげてほしいですね。
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