サロンオーナー必見!

人を雇ったら知っておきたい
労務のキホン

スタッフを雇ってサロンを経営していく上で必要な、労務関連の制度や法律の基本知識について解説していきます。

vol.5

〜「労災保険」を知る編〜

労災保険は絶対加入してなければいけない!?

前回(Vol.4)では、労務管理における社会保障には4つの保険があることをお伝えしました。今回からは、それぞれの保険について詳しく解説します。まずは人を雇ったら真っ先に加入しなければいけない「労災保険」からスタートです。
※青文字・下線が付いた箇所をクリックすると、その言葉の説明が見られます。

連載ショートストーリー

「サロンRの日常」5
  • 須多井 リスオ

    須多井 リスオ(スタイ リスオ)

    アシスタントを2年経験し、スタイリストデビューをしたばかりの23歳。「サロンR」勤務。デビューして意気揚々。オーナーも店も基本大好きで、サロンとともに成長したいとはりきっている。
  • 小尾奈 サロヒコ

    小尾奈 サロヒコ(オオナ サロヒコ)

    「サロンR」オーナー。スタイリストとして7年間別のサロンに勤務した後独立。「サロンR」を開業して3年目の33歳。スタッフを大事にしてサロンを成長させたいが、経営の知識はない。
  • 赤出 ミーコ

    赤出 ミーコ(アカデ ミーコ)

    「サロンR」に勤務するスタイリスト歴5年の須多井リスオの先輩。27歳。指名が多く、新婚で公私ともに絶好調。同僚からの信頼も厚いが、結婚を機に子どもがほしいと考え始めている。
  • 秋田センセイ

    秋田センセイ

    社会保険労務士。多数のサロンの労務管理相談を受けている、この企画の監修を担当。美容業界を他業界に負けないくらい、オーナー、スタッフともに働きやすい環境にしたいと考えている。
  • ビューティー

    ビューティー

    秋田センセイの名アシスタントの猫。先生の言いたいことを伝言するために、ここそこに現れるこの企画の陰のキーマン。サロンオーナーたちがいい経営者になることを心から願っている。
オーナーは何をすればいいのでしょう?
POINT1

「労災保険」はひとりでも1日でも雇ったら、誰でも必加入

もう入ってる?

 人を雇ったら法人でも個人事業主でも加入しなければいけないのが「労働保険」の2つ(労災保険雇用保険)ということは前回解説しました。なかでも「労災保険」は名前の通り労働災害が起こったときに、ケガなどをしたスタッフの治療費として支払われる保険のことで、「人をひとりでも、1日でも雇ったら、雇用形態にかかわらず必ず加入」が義務づけられています。つまり、バイトでもパートでも加入しなければならないということ。
 もしまだだったら即刻加入しましょう。

どうやって加入するの? 加入しないとどうなるの?

 「労災保険」に加入するには、管轄の労働基準監督署で手続きをします。労働基準監督署は、厚生労働省が管轄する各都道府県の労働局の下部組織で全国にあります(下記リンク先で所在地を確認できます)。
 手続きできるのはサロンの経営者(またはその業務を担当する人)ですが、社会保険労務士、労働保険事務組合は申請等の代理ができます。
 「労災保険」に加入していないことが発覚すると、行政からの指導を受ける可能性があります。また、加入は上記のように義務なので入っていることが当たり前。求人の際にも、最低限、労働保険に入っていなければ、採用が難しくなるでしょう。

※都道府県ごとの労働基準監督署の所在地案内はこちら

POINT2

「労災保険」の保険料は事業主が全額負担

保険料も気になるね

 労災保険が他の保険と異なるのは、保険料が全額事業主側の負担となることです。社会保障の他の保険は、事業主と被保険者であるスタッフの両方が保険料を負担します(負担率は保険の種類によって異なる)。
 全額事業主負担といっても、他の保険料に比べれば大きな額ではなく、従業員ひとりに付きその従業員の年間給与の3/1000(0.3%)です。
*平成27年度(2015年4月~2016年3月)の美容業[その他の各種事業]の場合(料率は年度、業種によって異なる)。
例:年間給与が400万円のスタッフの場合
  年間で12,000円

労災保険の保険料をスタッフのお給料から引いちゃいけないの?

 絶対ダメです。労災保険の保険料を事業主が全額負担するのは義務なので、スタッフの給与から差し引くことは違法行為です。

POINT3

労災保険の災害は、「業務災害」「通勤災害」の2種類!

困ったらご相談ください

労災と認定された場合、治療費は全額労災保険から支払われます。
 労災として認められる災害には大きく分けて2種類あり、「業務災害」と「通勤災害」があります。

【業務災害とは】
 業務災害は、仕事中になんらかのケガなどをして治療が必要になった状態のことです。美容室でよくある業務災害は、はさみで手を切るケガです。
【通勤災害とは
 通勤災害とは、働く人が職場に通勤、または職場から自宅へ退勤途中に事故などで治療が必要になった状態のことです。ただし、帰宅途中で飲み屋に寄った後のケガや、通勤経路を著しくはずれて通勤・退勤した場合は通勤災害とは認められないケースがあります。

 業務災害や通勤災害に当てはまるかは微妙な場合もあり、労災の認定は、スタッフがケガなどをした際に労働基準監督署に書面で請求(申請)をすることで支給・不支給の判断がされます。書類を書くのも、手続きをするのも意外と面倒で労力がかかるため、資格を持った社会保険労務士や労働保険事務組合に委託する方が無難です。

労災と認められなかったら、スタッフの治療費はどうなるの?

 労災の認定を受けられなかった場合の治療費は、通常の健康保険の適応となります。ですから、スタッフの健康保険の加入も重要になります。健康保険についてはVol.7で詳しく解説する予定です。

今回のポイント

とにかくすぐに加入が必要な労災保険。未加入の場合はスタッフに万一のケガなどが起こる前に、加入しておきましょう。けれど一番大事なのは、労災保険を使わずに済むように、業務中も通勤時も、安全で健康に過ごせる職場環境づくりやスタッフ教育であることは言うまでもありません。

次号では、もうひとつの労働保険である「雇用保険」について解説します。

秋田繁樹さん

監修

特定社会保険労務士

秋田繁樹さん

プロフィール:

社会保険労務士法人 秋田国際人事総研代表。東京都社会保険労務士会所属。国内大手生命保険会社、大手企業のシステムインテグレーターなどを経て、独立開業。人事労務のスペシャリストとして、多店舗展開の美容室の労務管理や就業規則・社内規定などにも詳しく、多数の美容室の指導相談に当たっている。http://www.akita-sr.com/

編集・取材・文
長島佳子
イラスト
木村𠮷見

※掲載されている情報は2016年01月25日現在のものです

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