サロンオーナー必見!

人を雇ったら知っておきたい
労務のキホン

スタッフを雇ってサロンを経営していく上で必要な、労務関連の制度や法律の基本知識について解説していきます。

vol.6

〜「雇用保険」を知る編〜

スタッフが雇用保険を気にするのはなぜ?

前回(Vol.5)では、「労働保険」のひとつ「労災保険」の詳細についてお伝えしました。今回はもうひとつの労働保険である「雇用保険」について解説します。
※青文字・下線が付いた箇所をクリックすると、その言葉の説明が見られます。

連載ショートストーリー

「サロンRの日常」6
  • 須多井 リスオ

    須多井 リスオ(スタイ リスオ)

    アシスタントを2年経験し、スタイリストデビューをしたばかりの23歳。「サロンR」勤務。デビューして意気揚々。オーナーも店も基本大好きで、サロンとともに成長したいとはりきっている。
  • 小尾奈 サロヒコ

    小尾奈 サロヒコ(オオナ サロヒコ)

    「サロンR」オーナー。スタイリストとして7年間別のサロンに勤務した後独立。「サロンR」を開業して3年目の33歳。スタッフを大事にしてサロンを成長させたいが、経営の知識はない。
  • 赤出 ミーコ

    赤出 ミーコ(アカデ ミーコ)

    「サロンR」に勤務するスタイリスト歴5年の須多井リスオの先輩。27歳。指名が多く、新婚で公私ともに絶好調。同僚からの信頼も厚いが、結婚を機に子どもがほしいと考え始めている。
  • 秋田センセイ

    秋田センセイ

    社会保険労務士。多数のサロンの労務管理相談を受けている、この企画の監修を担当。美容業界を他業界に負けないくらい、オーナー、スタッフともに働きやすい環境にしたいと考えている。
  • ビューティー

    ビューティー

    秋田センセイの名アシスタントの猫。先生の言いたいことを伝言するために、ここそこに現れるこの企画の陰のキーマン。サロンオーナーたちがいい経営者になることを心から願っている。
友だちがもらっている「失業保険」の正体は?
POINT1

雇用保険は働けなくなったスタッフを守る保険。

スタッフが困ったときの保険だよ

 「雇用保険」とは、スタッフがサロンを辞め、働く意志があるのに働けない状態になったときや、出産後の育児休業期間や親などの介護をする場合に、国から給付金をもらうための保険です。給付金を受け取るのはスタッフですが、加入手続きは事業主であるオーナーに義務づけられています。
 俗にいう「失業保険」とは正しくは「基本手当」のことで、雇用保険に加入していた人が職を失った場合にもらえます。また、女性スタッフが出産後に育児休暇を取得した場合は「育児休業給付金」がもらえます。いずれの場合も、法律で定められた期間以上、雇用保険に加入していることが条件で、そのスタッフがもらえる額や期間は、本人が雇用保険に加入している期間やその間の給与額によって異なります。

どうやって加入するの? 加入しないとどうなるの?

 雇用保険に加入するには、管轄のハローワークで手続きします。ハローワークは厚生労働省が管轄する公共職業安定所のことで全国にあります(下記リンク先で所在地を確認できます)。
 手続きできるのはサロンの経営者(またはその業務を担当する人)ですが、労災保険と同様に社会保険労務士労働保険事務組合は申請等の代理ができます。
 雇用保険の加入は義務なので入っていることが当たり前。加入していないことが発覚すると、行政からの指導を受ける可能性があります。オーナーが加入手続きを怠ったことによって、雇用保険に入るべき女性スタッフが育児休業給付金をもらえずトラブルになるケースもあります。きちんと加入しておきましょう。
*育児休業給付金など、女性スタッフに関わる労務については、今後この連載で解説していく予定です。
※都道府県ごとのハローワークの所在地案内はこちらから

POINT2

スタッフの働き方により、加入できる条件が限定される。

加入には条件があります

 人を雇ったら法人でも個人事業主でも加入しなければいけないのが「労働保険」の2つ(労災保険雇用保険)です。ただし、雇用保険は、前回の労災保険とは異なり、スタッフの働き方によって加入できる条件が限定されています。
 雇用保険に加入できるスタッフの条件は、「31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること、かつ1週間の所定労働時間が20時間以上であること。」です。この条件に該当すれば、正社員はもちろん、パートでもアルバイトでも同様です。ただし該当していても、昼間の学校に通う学生や、日雇いのスタッフ(毎日その都度賃金を払っているスタッフ)、65歳以上のスタッフなど、雇用保険に加入できないケースもあります。

正社員からパートになったスタッフの雇用保険はどうなる?

 子育てなどの事情で、正社員からパートに変更するなどのスタッフもいると思います。パートになっても上記のように「週20時間以上かつ31日以上雇用される見込みがある」場合には雇用保険はそのまま加入しますが、その条件に満たない労働時間になった場合、雇用保険の喪失の手続きをする必要があります。それを知らずに継続的に保険料だけ払っていても、後にそのスタッフが基本手当育児休業給付金が必要となった際に申請しても、給付を受け取れる資格が満たされずに受け取れなくなります。雇用形態や労働時間が変わるたびに細かくチェックする必要があるので注意しましょう。

POINT3

雇用保険の保険料は事業主と従業員の双方が負担。

保険料も気になるね

 雇用保険の保険料は、事業主と従業員であるスタッフの両方が負担します。
 従業員ひとり当たりの年間保険料は、その従業員の年間給与の13.5/1000(1.35%)。このうち事業主負担が8.5/1000(0.85%)で、従業員負担が5/1000(0.5%)です。
*平成27年度(2015年4月~2016年3月)の美容業[一般の事業]の場合(料率は年度、業種によって異なる)。
例:年間給与が400万円のスタッフの場合
  年間の保険料:5万4,000円
  負担の内訳:事業主3万4,000円、従業員本人2万円

雇用保険の保険料はどうやって納付して、スタッフ分はどうするの?

 雇用保険の保険料は、労災保険料とともに年に1回(6月1日から7月10日の間)事業主が申告と納付を行います。スタッフの負担分は、毎月の給与から天引きして徴収します。

今回のポイント

雇用保険でわかりにくいのは、スタッフによって加入させるべきか条件が細かくことなることです。日頃の接客や経営で忙しいオーナーの皆さんにはなかなか難しいので、専門のスタッフを雇うか、社会保険労務士に委託する方が得策です。

次号では、社会保険のひとつ「健康保険」について解説します。

秋田繁樹さん

監修

特定社会保険労務士

秋田繁樹さん

プロフィール:

社会保険労務士法人 秋田国際人事総研代表。東京都社会保険労務士会所属。国内大手生命保険会社、大手企業のシステムインテグレーターなどを経て、独立開業。人事労務のスペシャリストとして、多店舗展開の美容室の労務管理や就業規則・社内規定などにも詳しく、多数の美容室の指導相談に当たっている。http://www.akita-sr.com/

編集・取材・文
長島佳子
イラスト
木村𠮷見

※掲載されている情報は2016年02月08日現在のものです

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