サロンオーナー必見!

人を雇ったら知っておきたい
労務のキホン

スタッフを雇ってサロンを経営していく上で必要な、労務関連の制度や法律の基本知識について解説していきます。

vol.7

〜「健康保険」を知る編〜

健康保険って必ず加入しなきゃいけないの?

前回(Vol.6)までは、「労働保険」についてお伝えしました。今回は「社会保険」のうちの「健康保険」について解説していきます。
※青文字・下線が付いた箇所をクリックすると、その言葉の説明が見られます。

連載ショートストーリー

「サロンRの日常」7
  • 須多井 リスオ

    須多井 リスオ(スタイ リスオ)

    アシスタントを2年経験し、スタイリストデビューをしたばかりの23歳。「サロンR」勤務。デビューして意気揚々。オーナーも店も基本大好きで、サロンとともに成長したいとはりきっている。
  • 小尾奈 サロヒコ

    小尾奈 サロヒコ(オオナ サロヒコ)

    「サロンR」オーナー。スタイリストとして7年間別のサロンに勤務した後独立。「サロンR」を開業して3年目の33歳。スタッフを大事にしてサロンを成長させたいが、経営の知識はない。
  • 赤出 ミーコ

    赤出 ミーコ(アカデ ミーコ)

    「サロンR」に勤務するスタイリスト歴5年の須多井リスオの先輩。27歳。指名が多く、新婚で公私ともに絶好調。同僚からの信頼も厚いが、結婚を機に子どもがほしいと考え始めている。
  • 秋田センセイ

    秋田センセイ

    社会保険労務士。多数のサロンの労務管理相談を受けている、この企画の監修を担当。美容業界を他業界に負けないくらい、オーナー、スタッフともに働きやすい環境にしたいと考えている。
  • ビューティー

    ビューティー

    秋田センセイの名アシスタントの猫。先生の言いたいことを伝言するために、ここそこに現れるこの企画の陰のキーマン。サロンオーナーたちがいい経営者になることを心から願っている。
「健康保険」と「国民健康保険」は何が違う?
POINT1

健康保険は、組織で加入する「健康保険」と、個人で入る「国民健康保険」の2種類。

法人は必須だよ!

 健康保険はみなさんにもなじみがあると思います。病院などに行った際、受付で提出を求められるのが「健康保険証」ですね。健康保険は医療費を支払う際に自己負担が軽減される公的な保険です。
 健康保険には大きく分けて2種類あり、会社などの組織で入る「健康保険」と、個人で入る「国民健康保険」があります。(*このページでは、「①総称としての健康保険」と、「②会社などの組織で加入する健康保険」を区別するため、②の場合に「健康保険」とカッコ付きで表記します。)
 サロンの場合どちらに入るかは、法人登記しているか否かで異なります。

●サロンが法人の場合
 サロンが株式会社や有限会社など法人登記している場合は、オーナーひとりで経営していても、会社などの組織で入る「健康保険」への加入が義務づけられています。

●サロンオーナーが個人事業主の場合
 オーナーが個人事業主である場合は「健康保険」の加入は任意となります。通常は個人事業主でも5人以上雇っている場合は「健康保険」への加入が義務づけされていますが、美容業は強制適用ではない業種のため、任意加入となります。事業所としての「健康保険」への加入は任意でも、国民はいずれかの健康保険に加入する義務があります。そのため、事業所として「健康保険」に加入しない場合は、オーナーもスタッフもそれぞれで「国民健康保険」に加入しなければなりません。

「健康保険」と「国民健康保険」の違いは?

 「健康保険」も「国民健康保険」も、病院などで治療を受ける際の自己負担額は現在は3割と同じです。ただし、加入手続きの方法や保険料の納付方法、従業員の負担率などで違いがあります(下記の「POINT3」参照)。また、「健康保険」にはスタッフが業務外の原因でケガや病気になって働けなくなったときの生活のために、最長で1年6カ月支給される「傷病手当金」があり(業務上の原因のケガなどの場合は、労災保険から支給)、「国民健康保険」にはこの制度はありません。

POINT2

パートなどのスタッフは、条件によって加入できない場合も。

スタッフの条件もあります

 サロンが法人の場合、正社員のスタッフは必ず加入させる義務があります(ただし、夫や親の「健康保険」の扶養になっているなど被保険者でない人は除きます)。しかし、時間限定のパートなどのスタッフは、働いている条件によって「健康保険」に加入できる場合とできない場合があります(下記の条件参照)。

●労働時間による条件
 正社員であるスタッフの1週間の労働時間の、概ね3/4以上の労働時間があることが条件です。例えば正社員が1週間で40時間働いている場合は、原則としてパートスタッフは30時間以上勤務すればサロンで「健康保険」に加入しなければなりません。

●雇用期間による条件
 2カ月以内の期間を定めて雇用する者は、被保険者から除外されます。よって、雇用契約期間は2カ月を超えていることが必要です。

 これらの条件を満たしていれば、パートでもアルバイトでもサロンで「健康保険」に加入させなければいけません。

サロンは法人だけれど、条件に満たないスタッフはどうすればいい?

上記の条件を満たしていないスタッフには、「国民健康保険」に入るよう伝えてください。ただしそのスタッフが夫や親の扶養になっていて、健康保険も扶養扱いになっている場合は別です。

POINT3

「健康保険」の保険料は事業主と従業員が折半で負担。

保険料も気になるね

 法人であるサロンが「健康保険」に加入するには、所在地の管轄の年金事務所で申請します。加入義務のあるスタッフを採用するたびに申請手続きをしなければなりません。
 「健康保険」の保険料は、事業主と従業員が折半で負担します。保険料は、従業員ごとの給与によって、また事業所のある都道府県によって毎年料率が異なります。平成27年度の料率の目安は、全国平均で約10%です。
*平成27年度(2015年4月~2016年3月)に料率が10%の場合(料率は年度、都道府県によって異なる)。
例:月収が30万円のスタッフの場合
  月々の保険料:約3万円
  負担の内訳:事業主1万5,000円、従業員が1万5,000円

 一方、個人事業主で「国民健康保険」の場合は、前述のように事業主も従業員も、それぞれ自分で、住んでいる自治体の役所で加入手続きをします。保険料率は都道府県によって異なります。「国民健康保険」の保険料は全額本人負担です。

「健康保険」の保険料はどうやって納付して、スタッフ分はどうするの?

 「健康保険」の場合は、保険料は事業主が毎月、管轄の年金事務所または健康保険組合に納付し、従業員負担分は毎月の給与から天引きして徴収します。「国民健康保険」の場合は、それぞれの自宅に自治体から納付書が届くので、個人で納付します。

POINT4

「健康保険」に未加入の法人は取締りを受ける可能性も。

法人はすぐ加入!

 法人であるサロンは「健康保険」の加入が義務で、未加入の場合、行政の取締りを受ける可能性があります。最近は取締りが厳しくなっており、行政が加入を促進しています。その指導に従わない場合、強制加入させられます。

未加入であることがばれなければいい?

 「健康保険」に未加入でも、スタッフにはお給料は支払っていて、毎月所得税を納付していると思います。マイナンバー制度の導入で、税と社会保障については、行政機関でデータが容易に把握できるため、未加入であることは行政に知られます。未加入の場合は早めに加入手続きを進めましょう。

今回のポイント

健康保険はスタッフにとって最も利用する頻度が高い保険。加入についてスタッフから尋ねられることもあるかもしれないので、スタッフにきちんと説明できるようにしておきましょう。

次号では、もうひとつの社会保険の「厚生年金保険」について解説します。

秋田繁樹さん

監修

特定社会保険労務士

秋田繁樹さん

プロフィール:

社会保険労務士法人 秋田国際人事総研代表。東京都社会保険労務士会所属。国内大手生命保険会社、大手企業のシステムインテグレーターなどを経て、独立開業。人事労務のスペシャリストとして、多店舗展開の美容室の労務管理や就業規則・社内規定などにも詳しく、多数の美容室の指導相談に当たっている。http://www.akita-sr.com/

編集・取材・文
長島佳子
イラスト
木村𠮷見

※掲載されている情報は2016年02月22日現在のものです

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