Vol.1/美容業界の常識は社会のヒジョーシキ!?
- サロンの労務知識
美容の未来のために、学びと調査・研究を
サロンオーナー必見!
須多井 リスオ(スタイ リスオ)
小尾奈 サロヒコ(オオナ サロヒコ)
赤出 ミーコ(アカデ ミーコ)
秋田センセイ
ビューティー
「厚生年金保険」は、国の年金制度の一種です。年金制度には大きく分けて2種類あり、会社などの組織で加入する「厚生年金保険」と、個人で加入する「国民年金」があります(*「厚生年金保険」加入者も厳密には「国民年金」にも加入しています)。
サロンの場合どちらに加入するかは、法人登記しているか否かで異なります。厚生年金保険は前号でお伝えした「健康保険」と合わせて社会保険と呼ばれ、通常セットで加入するもので、加入の条件も以下のように「健康保険」と同じです。
●サロンが法人の場合
サロンが株式会社や有限会社など法人登記している場合は、オーナーひとりで経営していても「厚生年金保険」への加入が義務づけられています。
●サロンオーナーが個人事業主の場合
オーナーが個人事業主でかつ従業員が5人未満である場合は「厚生年金保険」の加入は任意となります。通常は個人事業主でも5人以上雇っている場合は「厚生年金保険」への加入が義務づけされていますが、美容業は強制適用ではないため、任意加入となります。事業所としての「厚生年金保険」への加入は任意でも、20歳以上60歳未満の国民は、「国民年金」加入が義務づけられています。そのため、事業所として「厚生年金保険」に加入しない場合は、オーナーもスタッフもそれぞれで「国民年金」に加入しなければなりません。
サロンが法人の場合、正社員のスタッフは必ず加入させる義務があります。しかし、時間限定のパートなどのスタッフは、働いている条件によって「厚生年金保険」に加入できる場合とできない場合があります(下記の条件参照)。
●労働時間による条件
正社員であるスタッフの1週間の労働時間の、概ね3/4以上の労働時間があることが条件です。例えば正社員が1週間で40時間働いている場合は、原則としてパートスタッフは30時間以上勤務すればサロンで「厚生年金保険」に加入します。
●雇用期間による条件
2カ月以内の期間を定めて雇用する者は、被保険者から除外されます。よって、雇用契約期間は2カ月を超えていることが必要です。
これらの条件を満たしていれば、パートでもアルバイトでもサロンで「厚生年金保険」に加入させなければいけません。
上記の条件を満たしていないスタッフには、「国民年金」に入るよう伝えてください。ただしそのスタッフが夫の扶養になっていて、「厚生年金保険」も扶養扱いになっている場合は別です。
法人であるサロンが「厚生年金保険」に加入するには、所在地の管轄の年金事務所で申請します。加入義務のあるスタッフを採用するたびに申請手続きをしなければなりません。
「厚生年金保険」の保険料は、事業主と従業員が折半で負担します。保険料は、毎年国で料率が定められ、従業員ごとの給与によって異なります。
*令和4年(2022年9月~2023年8月)の料率18.300%の場合(料率は年度によって異なる)。 例:月収が30万円のスタッフの場合 月々の保険料:約5万4,900円 負担の内訳:事業主2万7,450円、従業員2万7,450円
*賞与にも別途かかります。
以下の「国民年金」の保険料と比べて高く感じるかもしれませんが、将来年金としてもらえる保険なので老後の生活を考えるととても大切です。
一方、個人事業主で「国民年金」の場合は、前述のように事業主も従業員も、それぞれ自分で、住んでいる自治体の役所で加入手続きをします。保険料は毎年変わりますが誰でも一律で、令和4年度(2022年4月~2023年3月)の保険料は月々1万6,590円です。「国民年金」の保険料は全額本人負担です。
「厚生年金保険」は、保険料は事業主が毎月、年金事務所に納付し、従業員負担分は毎月の給与から天引きして徴収します。「国民年金」の場合は、それぞれの自宅に自治体から納付書が届くので、個人で納付します。
次号からは、労務管理で重要な労働時間について解説する予定です。
監修
特定社会保険労務士
秋田繁樹さん
プロフィール:
社会保険労務士法人 秋田国際人事総研代表。東京都社会保険労務士会所属。国内大手生命保険会社、大手企業のシステムインテグレーターなどを経て、独立開業。人事労務のスペシャリストとして、多店舗展開の美容室の労務管理や就業規則・社内規定などにも詳しく、多数の美容室の指導相談に当たっている。http://www.akita-sr.com/
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