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Special Interview

美容業界が描く「女性活躍」のカタチ

SNIPS 

オーナー 由藤秀樹さん

ママがいることで成長する。
競争ではなく「共創」の精神で
個性派集団を作る!

「新潟から日本の美容を盛り上げる」ことを使命に、4店舗の個性あふれるサロンを展開している「SNIPS」。常に第一線でいるために、「個性派集団であれ」とスタッフを成長させているオーナーの由藤さん。自身も週5日はサロンに立ち、経営は親族や「お番頭」に任せていると言いつつ、世界を見据える高い視点でサロンを率いています。現在社員60名中、ママスタッフが8名。信頼する女性店長は産休中も店長職を維持させるなど、キャリアダウンすることなく仕事と育児の両立を可能にしています。その女性活躍の理念についてうかがいました。

Profile

1968年、新潟県新潟市生まれ。有限会社KLAI代表取締役。中央理美容専門学校(東京都)を卒業し、神奈川県のヘアサロンに入店。約10年間勤めた後、1998年に新潟市内でヘアサロン「SNIPS」を開業。現在はコンセプトの異なる4店舗を展開。全国各地でセミナー講師としても活躍。また2014年に設立された「一般社団法人 アジアビューティーアカデミー」の立ち上げ時より参画した理事のひとりであり、国内はもとよりアジア各国の理美容業界の教育と発展に向けて精力的に活動している。

女性活躍支援の取り組み

  • 産休・育休復帰後は時短でも基本は正社員
  • 産休・育休中も役職は継続
  • 子どもの病気休暇は、上限なしで有休扱い
  • ママスタッフを周囲が助ける風土づくり

PICK UP!

上記の中から、一部を抜粋してご紹介します

  • 産休・育休復帰後は時短でも基本は正社員

    ママスタッフ本人からの希望がない限り、産休復帰後に保育園の送り迎えなどの事情で時短勤務になるスタッフも、全員正社員のまま雇用。

  • 産休・育休中も役職は継続

    女性店長の産休・育休期間中も、役職はそのまま。休業終了後も店長として復帰させている。「店長の役割はサロンに立っている時間のことだけではない」という考え方から、スタッフのメンターである店長職は維持したまま産休に入れる。

  • 子どもの病気休暇は、上限なしで有休扱い

    未就学の子どもがいるママスタッフは、子どもの病気のために有休が取れる。これは、法定の有給休暇とは別に、日数の上限なく有休として取得可能。

Q

現在ママスタッフが8名いますが、ママでも働きやすい環境はどのようにつくってきたのですか?

A

最初はママ1号となった店長に、どうしたら続けやすいか考えてもらいました。

出産より仕事を選ぼうとした店長に、子どもができても安心して働ける方法を選ばせた。

 3店舗目の「CAOS」の店長である杉浦が最初のママスタッフでした。本人から妊娠の報告を受けたとき、杉浦は店長として仕事が楽しくなっていた時期で「産みたくない」と言い出した。「ばかやろー、産め」と一喝しました。子どもができることは本人にとっても経験値があがることで、サロンとしてもスタッフに多様性が生まれます。けれど前例がなかったため、どうしたら仕事を続けたい女性スタイリストが安心して休んで復帰できるのか、お互いにわかりませんでした。しかも、自分は男で妊娠・出産する大変さがわからないから、「きつかったら休みたいだけ休め。続けてほしいから無理はするな。産休も自分で取りたいだけ取れ」と本人に任せました。

スタッフの成長のチャンスと信じ、店長のまま産休に入らせた。

 そもそも杉浦を店長にしたのは、トップスタイリストだったからではなく仲間から好かれる人間力があったからでした。予想通り、彼女はスタッフたちのメンターとして目配りが効き、信望が厚い店長になった。仲間から好かれる人間はお客さまからも愛され、技術のスキルアップの努力もあり、売上げも取れるようになった。そんな人材を産休だからといって店長からはずすという選択肢は私にはなく、店長のまま産休に入らせました。
 また、杉浦の妊娠を知ったとき、実は「人が育つチャンスだ」と思ったのです。杉浦は当然戻ってくると思っていたので、店長が産休で休んでいる間、「頼れる上司がいなくなった若手たちに権限が仮委譲され、成長のきっかけになる」と。店長がいない分、後輩たちはがんばるし、成長する。それと同時に、店長の復帰を心待ちにするようになりました。

産休による失客は、解決できる。大事なのは失敗を次に活かすこと。

 産休中の引き継ぎについても本人に任せていました。杉浦は現在2人の子どもがいますが、1人目の産休のときは引き継ぎをちゃんとできなかったらしく、月に200人いた指名のお客さまの半分以上を失客しました。それについて私は何とも思いませんでした。失客した半分は引き継いだ後輩に留まったので、サロンとしての実質的な失客は25%。傷はそんなに深くない。杉浦ならすぐに解決できる範囲だと思ったからです。ちゃんとやる人には結果は必ずついてきます。杉浦はママになった強みを活かして、自分と同じ境遇のお客さまをどんどん増やした。そして2人目の産休のときには、1人目のときの失敗を活かして、引き継ぎノートを作るなどきちんとやって、失客を未然に防ぎました。彼女が個人ギネスを達成したのは2人目の出産の後ですから大したものです。杉浦の姿を見て、ママになるスタッフがその後どんどん増えていったのです。

ママスタイリスト1号の杉浦さんと。「学校でビリだった杉浦をここまで育てたのはオレのおかげ」と笑いながら語る

Q

制度作りなどは社員に任せているそうですが、実際にどのように制度ができているのですか?

A

幹部合宿で話し合い、ES(従業員満足)を高めるための制度をつくっています。

がんばったスタッフが仕事を続けて報われるような制度を。

 私は経営よりもアートディレクターでいたいタイプ。できることならずっとお客さまの施術をしたり、新しいヘアデザインや技術を考えていたい。だから制度作りなどは「お番頭」(事務系を預かるマネジャー)に任せています。しかし、経営者としてESは絶対に考えなければなりません。経済が縮小して、美容師を目指す若者も減っている時代に、経営者の都合だけでサロンを運営することはできません。社員を経営者の犠牲にしてはならないし、経営者が社員の人生に貢献しなければならない。そこで5年前くらいから幹部合宿を開いて、有休の在り方や、産休・育休制度の整備、社員が病気になったときのことなどを話し合う場をつくりました。スタッフの生活にこれから起こることを予想しながら、がんばった人が報われる制度をつくろうと思ったのです。

制度を活用して「自由に生きられる」実力あるスタッフに育ってほしい。

 小さな子どもがいるスタッフが気兼ねなく休めるように、子どもの病気のときには有休が取れるなど、スタッフたちの状況に合わせて働きやすい制度や環境をつくっています。ただし、社員は制度に依存するのではなく、まずはその制度を使うにふさわしい人間になってほしいと思います。たとえば有休にしても「がんがん休め!」と言っていますが、実力がないのにただ休みがほしいというのはダメです。スタイリストとして力がつけば、お客さまがスタイリストにスケジュールを合わせてくれるようになります。「この日は夏休みだから」と言ったときに、「じゃあ他の人で」と指名を変えられるうちはまだまだ。お客さまに「待つ」と言ってもらえるように成長しなければなりません。そのときに、自由な生き方を手に入れられるのです。うちのスタッフにはそういうライフスタイルを歩んでほしいと思います。

改善より「洗練」、競争でなく「共創」。

 ママスタッフたちが時短勤務となったとき、当初はまわりのスタッフに不満があったと思います。でも大変な状況にある人を助け合えるのが組織であるメリット。「みんなで支えてがんばろう」と伝えました。うちのスタッフには「人として素敵」でいてほしい。「困った人がいたときに支える人と支えない人ではどちらが素敵? どっちが気持ちいい?」と問いかければ素敵な方を選んでくれます。私は何かあったときに「改善する」というより「洗練」させたい。仲間同士は「競争」ではなく「共創」してほしいと思っています。困っている人とともに、より気持ちよく働くために洗練された方法を考えて、お互いに幸せになってほしい。私の目的は会社を大きくすることではなく、「いい美容師集団をつくる」ことです。ママスタッフたちの存在は、後輩の女性にとっては人生のロールモデル。男性スタッフにとっては「時短なのに売上げを伸ばす、生産性の高い先輩の見本」です。マイナス面ではなく、いい面を見て学んでほしいと思っています。

由藤さんは「美容師は生涯できる仕事だと自分が体現して、素敵なスタイルを作り続けなければ、スタッフに夢を与えられない」と使命を語る

Q

これから取り組んでいきたい、と思っていることについて教えてください。

A

美容業界のトップを走るサロンとして、みんなでずっと「とんがって」いたいです。

女性の活躍は当たり前。女性が抱える課題は人それぞれなので、柔軟性を大事にしたい。

 女性活躍として今後取り組みたいことは、現段階では何もありません。というのは、女性に立ちはだかる課題は個々の問題で、状況は一人ひとり違うからです。そのときの状況に応じてそれぞれの課題に各々のやり方で対応していけばいいと思っています。本人ががんばっていれば、私はそれを許容します。制度も大事ですが、柔軟性の方がもっと大事です。
 

20代でがんばって成長した女性こそが、望んだライフスタイルを手にできる。

 社員に何か起きたとき、柔軟に対応できる会社としての体力も必要です。つまり売上を常に上げる自信です。例えば、「社会保険に入ったら、それ以上の福利厚生を社員に与える余裕がない」会社があるとすれば、それは「売り物」が弱いから。サロンにとっての「売り物」とはヘアデザインと技術に他なりません。ただのデザインではなく、再現性があり、お客さまが五感で感じるものです。10人並みのスタッフが1000人いても会社は強くはならないので、うちは「個性派集団」を目指しています。ママスタイリストといっても、彼女たちは20代で必死にがんばって自分を磨き、コンテストで賞をいくつも取っている「とんがったヘアデザイナーたち」なのです。普通じゃダメなんです。自分の個性をもち、ファンがたくさんいる存在だからこそ、お客さまからも会社からも必要とされています。私は彼女たちをそういう存在に育ててきた自負があります。会社も社員から必要とされなければならず、それが経営者の役割であり、存在価値だと考えています。

「プロから見ても美しいヘアをつくり、お客さまの要望の常に上をいく提案ができなればならない」と由藤さん

 ヘアデザインのことでも、経営のことでも「洗練」という言葉を何度も使われた由藤さん。その言葉通り、ご自身も洗練されたビジュアルで、編集部スタッフの目も楽しませてくださいました。ヘアのスタイリングはもちろん、嫉妬してしまうほどツルツルのお肌は思わず見入ってしまうほど。乾燥と引力対策はきちんとされているそうです。
 由藤さんの視点は、女性活躍やサロンの経営のみならず、「日本人としてどうありたいか」という高いところに向かっています。「『美容師としてアジアにどう貢献できるか』をライフワークとしていきたい」と、熱い想いを軽やかに語るお姿が印象的でした。「守りに入らず、誰もやらなかった新しいことを生みだして、世界で勝負したい」とのお言葉。我々も見てみたいです!
インタビュアー
服部美奈子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
編集・取材・文
長島佳子
撮影
森若匡

※掲載されている情報は2016年08月31日現在のものです

Company Data

SNIPS

創業年
1998年
店舗数
4店舗
会社URL
http://www.snips-net.com/
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