イノベーターが
見ている未来
vol.80
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。
ORIGAMI
代表取締役 大川 亮平さん (age.44)
さまざまな業界で、DXの重要性が叫ばれて久しい。「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは、進化したデジタル技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させるという概念。美容業界において、その先端をいくサロンが徳島県にある。美容室を3店舗展開する「ORIGAMI(オリガミ)」だ。生産性157万円を可能にした、そのDXの手法とは?
・ORIGAMI(Instagram)
@origami_mainichi
第1章美容室×ブライダル事業
「売上を2~3倍にしようと思ったら、
このモデルを拡大していくしかない」
大川さんは、異業種からの転身だとか?
最初は、人材派遣業界の最大手で人材活用を提案する営業をしていました。当時、約300名いる社内で営業成績がトップになったこともあり、その実績をもって、26歳で専門学校の「穴吹カレッジグループ」に入りました。企業と学校をつなぐキャリアコンサルタントとして11年勤めた後、37歳のときに今の会社を起業しました。
現在、「株式会社オリガミ・キャリアデザイン」は人材・映像・DX・WEB事業。「株式会社オリガミ・トイロ」は美容室の運営で、そのなかにブライダル事業「ORIGAMI Bridal」(B to Bの法人契約。結婚式当日のヘアメイク、前撮り撮影)と、フォトウェディング事業「CANAEL」(B to Cの個人契約。CANAELの運営・オペレーション、フォトウェディングのヘアメイク)があります。
なぜ、ブライダルを?
美容師である妻がブライダルをやりたいと希望したのと、通常のサロンワークだけで大きく収益を伸ばすのは難しいと思ったからです。うちは7~8割がママさん美容師で、完全週休2日制。生産性をあげるには、収益の柱を増やし美容室とブライダルの二刀流でやらないと無理だと思いました。
結婚式は土日が多いので、美容室の稼働を平日に寄せる必要があります。そこで、需要と供給のバランスを見ながら料金を変動させる「ダイナミックプライシング」を導入しました。ただし、平日の料金は下げたとしても、10分・1000円を割らないように。割ってしまうと、ただの安売りになってしまうので。カラー・トリートメントの時間にうまいこと一人カットに入るとか、メニューとの構成比を考えながら試行錯誤しました。現在は、平日・朝・時季・曜日・時間帯で分けた5つのプライシングがあります。
美容室とブライダルは、親和性が高そうですね。
ブライダルは2パターンあります。まずひとつは、提携している徳島の人気結婚式場「パークウエストン」を通じてお客さまから発注いただき、うちで結婚式場の前撮りや当日のヘアメイクを担当する形。もうひとつのフォトウェディングは、自社で受注しプロデュースまでワンストップでサービスが叶います。
フォトウェディングというと、今までは写真館が受注する形でしたよね?このモデルは、逆。美容室が受注して、写真館や衣装屋さんに専門性の高い部分をサポートしていただく。美容室が受注先であれば、顧客の層も広がり集客力があがります。また美容師は、お客さまの好みもよくわかっているので、共感力高く対応できるのがポイントです。
店舗を増やさずに売上を2~3倍にしようと思ったら、このモデルを拡大していくしかありません。家族や親友以外で、お客さまに一番近い存在って「美容師」だと思うんです。なので、フォトウェディングは、美容師が「営業」の役割を担っている。
またフォトウェディングは、ヒアリングや問合せ対応を、アナログでやると大変です。そこもDX。サイトに問合せが入った場合は、自動返信でWEBアンケートを実施。それをもとに見積りや資料を送付し、オンラインでお互いの認識差を埋めていきます。来店時にはWEB上で、過去のヘアメイク作品や動画を活用しながら最終意思決定を支援します。これで成約率がグッとあがります。
自社でも動画制作を行っているのですか?
動画制作会社と技術連携をし、2020年9月からは自社でも本格的に動画事業を始めました。スタッフの旦那さんが沖縄に転勤になったので、そこでも仕事ができるようにと、2021年8月には沖縄でも業務ができる体制を整えました。
動画には、大きな可能性を感じていたんです。口で説明するよりも、テキストベースよりも、動画だと短時間で何倍も伝わる。
たとえば、ブライダルフェアで他社が口頭で説明しているなか、僕らはiPadとイヤホンをお客さまに渡して、動画を観てもらう。観終わるとすぐ、契約してくださることが少なくありません。他社だと4~5人いるスタッフも、1~2人で済みます。
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