第3章未来の美容業界のために想うこと
「お客さんを担当できる技術があれば十分なのに
学校もサロンも、無駄な教育をしていると思う。」
店舗運営とは別に、今年の5月からは経営オンラインサロン「NO LIMIT」をスタートさせて、そちらもすでに会員数750名を超す盛況ぶりですね。こちらを始めたきっかけは?
一緒に「NO LIMIT」を主宰している、美容室「GULGUL」代表の大河内隆広さんから誘われたのがそもそもの始まりです。僕はWEB媒体を活用した集客を得意とするので、そうした集客法を中心にしたコンテンツを担当しています。
オンラインサロンが増えているなか、多くの会員を集めることに成功しているのはなぜだとお考えですか。
もうひとりの共同主宰者である美容室「hair brace」の鈴木淳也さんも含めて、僕たち3人はいわゆる有名美容師ではありません。ですが、僕のWEB集客のようにそれぞれに強みがあり、それについて自己発信してきた点が会員獲得に結び付いた理由のひとつでしょう。
また、オンラインサロンの魅力は情報共有。「NO LIMIT」のコンセプトのひとつでもあるのですが「美容室経営は“知らない”ことが一番のリスク」だから、たくさんの会員が集まり情報共有できる場として活用してもらえるように、月会費を低めに設定しています。今では僕たちからの発信だけではなく会員同士の情報共有が盛んなのも、嬉しい結果ですね。
こちらのオンラインサロンは「2店舗目出店」を目指す人に向けた経営セミナー。おもしろい着眼点ですね。
たとえば65~70歳くらいまで働くとして、独立後に30年くらいは店を続けるわけです。でも美容室のように労働集約型の業態で1店舗しかないと利益率も低く、そこがダメになったらおしまいですよね。2店舗あれば、その経営リスクを減らすことができます。ただ、独立して1店舗目を構えるまではできるけど、2店舗目となると難しいと考える人も多い。どうしたら2店舗目を出店できるかというノウハウに、ニーズがあると思っています。
「ALIVE」も現在、表参道と原宿の2店舗があります。今後も増やしていくなど、店舗運営の将来像は?
「ALIVE」の企業目標は「日本を代表するサロン」。そのためにもカラーという「ALIVE」の強みを磨きながら、店舗は増やす予定です。来年(2018年度)は新卒者も10人くらい採用したい。いわば「攻めの採用」です。出店地は、やはり表参道周辺エリアを考えています。立地にも夢がないと、やる気がでませんからね。そのうちスタッフから要望が出てきたら、ほかのエリアを考えるかもしれませんが。
これからの美容業界についての考えもお聞かせください。業界が発展していくため、改善すべきだと思う点はありますか。
教育面は改善が必要だと思います。まず美容学校の教育に無駄が多い。だって美容学校を卒業したのに、サロンに入ってからみんなすごく練習するでしょう。「学校で習った期間はなんだったの?」って思う人は多いはずです。
そして先ほども話した通り、サロンでの教育にも無駄がある。要はお客さんを担当できる技術があればいい、できないことを探すより得意分野を伸ばしたほうがお客さんはついてきます。店としてもできないことは、他店を紹介すればいいんですよ。いまはSNSが浸透して、ウソが突き通せない世の中になっています。あれもこれもできると取り繕うよりも、ウリをはっきりさせたほうがお客さんには響くと思います。
地方のサロンの場合、ウリを絞り込んだら都心部のようには集客できないという声があるかもしれません。その場合も店自体のウリを絞るのではなく、個々のスタッフのウリを絞ればいい。僕が20代の頃は「美容師歴10年」とか「トップスタイリスト」みたいな“肩書き”が重要視されていました。でもいまは“何ができるのか”でお客さんが選ぶ時代。だからスタッフそれぞれ、ハイライト、ショートカット、パーマ…みたいに違ったウリがある「スペシャリスト」に育てたらいいんです。
最後に、西川さんご自身の将来像について。今後もサロンワークは続けていく予定でしょうか。
いま僕は月に6日間しかサロンワークをしていません。自分でやるよりも、スタッフを育てたい気持ちのほうが強いです。
なかなか後輩に任せられない経営者も多いなか、教育方針としても「やらせる教育」を重視されていますし、西川さんは引き継ぎがとてもスムーズにできていますね。
スタッフに恵まれていますから。それに任せることは難しくはないですよ。見ていて歯がゆく、手を出したくなる気持ちもありますが、できないからといって怒ることはありません。だってスタッフたちが一所懸命やっている姿は、見ていて嬉しいじゃないですか!
今後、店舗展開をしていくためにも僕自身は試合に出たいと思わない。少しずつ、監督業に専念していきたいですね。
それは、西川さんが「毎日」投稿していることを意味しています。
こちらは読んでいるだけだというのに、
西川さんの日々の進化についていくのがやっとです。
発信力、 行動力、 思考力。それよりも発信量、行動量、思考量。
「力も大事だけれど“量”をやらないと力はつかない」と、
自らを追いつめるかのように、すべてを超スピードで実行していく。
「名選手、必ずしも名監督にあらず」とはよく聞きますが、
“名選手であり名監督”。西川さんは、そんな人です。