僕自身はブラックとは思わないですけどね、わかりやすい伝え方としてブラックと言っています。

以前勤めたサロンでは年功序列じゃなく、条件をクリアしたら店長やフランチャイズ（FC）オーナーになる機会が与えられていた。それを参考にして、FCオーナーには1年間の修業期間を設けました。「1日も休まない、サロン営業の9時から22時まで働く、給料から100万円を貯める」。この条件を適えたら、1年後には必ずオーナーにすると約束しています。

2店舗目として、まつエクサロンをオープンした3カ月後に美容室をオープンしたんですが、他の人にオーナーになってもらったのはその店が最初ですね。

その店はもともと業務委託サロンで、うまくいっていなかった当時の経営者から「店を買わないか」と話を持ちかけられて。二つ返事でやりますって言ったはいいけど、他の店舗もあるから僕の手が回らない。それで考えたのがオーナー制度です。

それでスタッフに話をふったら、やりたいと手を挙げた人がいて。じゃあ開業資金はこっちでどうにかするからと、主導権は全部与えました。そうしたら店のスタッフもがんばって集めてくれるし、僕は何もしなくていいからほんとラク(笑)。開業のために借金を負うけれど、新店を出店したという「実績」が得られる。これはいいなと。

店を「任せる」のではなく「与える」と言うようにしています。与えたってことはもうその人が責任を負うということ。だからオーナーはすごくがんばってくれます。

あとは経営者としての精神をたたき込みました。店の営業終了後は朝までミーティング、次の日も寝ずにミーティング、ちょっと眠ったらまた働く…。でもそうしたら、その最初のオーナーは脱落してしまった。

「僕ができたんだから、誰だってできるんだよ」と言ってしまいましたが、それではダメだと反省して。少し和らげたのが現在の条件です。

働き方で「2・6・2の法則」ってあるでしょう？優秀な上位2割、平均的な中位6割、働きのよくない下位2割で組織は構成されるという考え方。これって下位2割を設定している時点で僕はよくないと思っていて。うちで働いてくれていることに感謝すべきで、その人たちも真ん中の6割に入れ込んで8割は同クラスだと考える。そして徹底的に働きやすい、ホワイトな環境を用意すれば、長く働いてくれるはず。下位の2割をどうにかしようと悩むより、この方がよっぽどいい。

一方で、夢に向かって前進できる上位2割には、夢を叶えるための条件を用意する。独立開業資金を貯めていた当時の僕みたいに、がんばってやり抜かせるんです。相手に本気を見せてもらわないと、こっちも本気になれないですから。銀行通帳から何から全部相手に与えて、売上金の管理もすべて任せて、それでいて出店費用は全部僕が持つわけだから、信頼がないとできないでしょう。だから「やれと言ったことを1年間やりきったら信頼するよ」ということです。

条件を与えても、やりきれる人って少ないんですよ。自分から言ったわけじゃなく、人から言われた条件だしね。代わりに、やり抜いたら必ず店を与えてオーナーにする。

そしてオープンから半年間は僕に対するバックはいらない。経営にも慣れて軌道にのる半年後からは、月22万5000円をロイヤリティとしてもらいます。月800万円の売上があるとして、これくらいなら負担じゃないだろうってことで決めた金額です。売上の何％という形にすると、せっかくがんばったのに持っていかれる額も多くなって嫌でしょ。だから固定費にしています。

ほんとそうです、僕には利益ってないし、費用を回収するのも7年くらいかかる。だから、「1店舗目はすべて僕が与えるから、1年以内に自力で2店舗目を出すように」とオーナーたちには話しています。「そうしたらやっと僕の利益になるから、わかってるよな？」って（笑）。

ただ、ゼロからの新店はうちの役員にやらせて、独立開業するFCオーナーには既存の黒字店舗を与えます。だからオーナー1年目でも黒字にできる体制を整えている。そうすることで2店舗目を出しやすくしています。