HOT PEPPER Beauty Academy未来会議 特別イベント
「ヘアサロンではじめる訪問美容」~その可能性と課題を考える~
2015年4月7日(火) 東京・八重洲
10年後の活力ある美容業界を目指して、未来につながる様々な兆し・テーマについて参加者同士で話し合い、考えるイベントです。
どんな仕事?何から始める?ニーズはある?
新しい未来への第一歩、「訪問美容」を考える。
「訪問美容」とは、高齢や疾病などでサロンに行くのが難しい方を対象に、美容師が施設や自宅にうかがって施術をする出張美容のことです。急速に高齢化が進む日本において、今後さらにニーズが高まっていくことが予想される一方、美容業界ではまだノウハウが確立・浸透していなかったり、条例が整備されていなかったりと、これからの領域でもあります。今回のイベントでは、実際に訪問美容をされているサロン様などをお招きして、訪問美容の可能性と課題について、来場者全員で考え話し合いました。
第一部 講演
「訪問美容の可能性と課題について」
実際に訪問理美容に取り組んでいらっしゃるNPO法人全国福祉理美容師養成協会(以下ふくりび)の赤木理事長、岩岡事務局長より、資格や制度などの基礎知識、マーケットから見た可能性と課題、現場での体験などについてお話しいただきました。
NPO法人全国福祉理美容師
養成協会(ふくりび)
理事長 赤木 勝幸 氏
事務局長 岩岡 ひとみ 氏
赤木さんは、1995年にヘアサロンを開業したのを機に、近隣の介護施設への訪問理美容を始めた。2007年にふくりびを立ち上げ、現在では訪問理美容・訪問理美容師養成・医療用ウィッグの開発・途上国での職業訓練など活動は多岐にわたる。岩岡さんは、子育てをしながらネイリストとしてヘアサロンで働いていた時に、訪問理美容活動に参加。その後、ヘルパー2級、美容師国家資格を取得し、同協会設立時に事務局長に就任。
第二部 参加型ワークショップ
「ヘアサロンではじめる訪問美容」
第一部でお話しいただいたふくりびさんに加えて、サロンを経営しながら訪問美容をされている「美容室 空」の杉本オーナー、美容専門出版社「女性モード」の寺口さんをパネラーにお迎えし、参加者の方とお話しいただくワークショップをまじえながら進行しました。ここでは、参加者から出た質問とパネラーの回答を中心にご紹介します。
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美容室 空
代表 杉本 剛英氏美容専門学校卒業後、3店舗を経て2004年に東京・八王子に「美容室 空」をオープン。現在、サロンワークのかたわら、定休日に訪問美容を行う。2003年にホームヘルパー2級の資格を取得。
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女性モード社
代表取締役 寺口 昇孝氏「ヘアモード」「美容の経営プラン」などの美容専門誌や、ふくりびさんによる「訪問理美容スタートBOOK」を発行する女性モード社で、2012年より代表取締役に就任。全国各地で美容サロン向けの講演も行っている。
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「訪問美容をしています」ということを、どのように宣伝していますか?
美容室 空:杉本さん
ヘルパーさんやケアマネージャーさんからの紹介が多いです。お店のお客さまでもそういうお仕事をしている人はいっぱいいると思うので、その方にまず情熱を伝える。ただ「訪問美容をしています」ではあまり意味がないので、熱い気持ちを伝えることが大切です。
ふくりび:岩岡さん
地域特性がすごくあるので、事前に調査はしていますね。例えば「この団地には高齢者が多い」といった地域のマーケティングや、年間でどういう広報・広告を打つのか。手段は新聞広告か、フリーペーパーか、チラシ配布か。また、ケアマネ―ジャーの会合に出たりもします。多方面からアプローチをして、継続していくことが大事です。
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実際に訪問美容の最初の一歩を踏み出す時に、気をつけた方がいいことはありますか?
女性モード社:寺口さん
今の資源=スタッフの皆さんを、どう活用するのかというのが一番重要ではないでしょうか。今働いてくれているスタッフが、何年どういう形でやりたいかなど、スタッフときちんと対話する。結婚した後に訪問理美容をやりたいのか、結婚した後は午前中だけ働きたいのか、午後だけ働きたいのか。ヒアリングすることも第一歩だと思います。
ふくりび:岩岡さん
「いつまでに何を」という数値の設定は、絶対にした方がいいです。そうすれば、あとはその決めたゴールの設定をさかのぼっていくだけ。目標を何に置くかも大切ですね。「女性スタッフが産休・育休中に訪問美容で働くことで離職させない、サロンへの復帰をスムーズにするというのが目的なのか」「サロンの売り上げを伸ばすためか」。はたまた「独立して訪問美容だけで開業するのか」など・・・。
美容室 空:杉本さん
訪問美容でご自宅にうかがう時、例えば自分が何か病気で、お客さまにうつしてしまったら大変なことになります。そういった最低限のルールはきちっと分かった上で行くことが大切です。美容師の資格があれば、行くこと自体は法的に問題ありません。皆さん美容専門学校で学んでいると思いますが、それは健常者に対してのもの。やはり高齢者や障がい者の方に対しての「最低限のルール」をきちんと学んでから、やっていただきたいと思います。
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介護の度合いなどが人によって違いますが、美容師はどういう知識と道具を持って行けばいいでしょうか?
ふくりび:赤木さん
例えば「自分がもし、寝たきりになったら」ということを想像してみてください。頭を何日も洗っていないとします。その時に「何を持って行けばいいのか?」という想像力を働かせると、どういう手段で頭を洗うことが可能になってくるでしょう?例えば、ドライシャンプー。あとは、台所に行って洗面器を借りるとか、子どもいるところだったら紙おむつを使ってシャンプーをするということもある。そういう発想で考えていくと、必要なものが見えてくると思います。
美容室 空:杉本さん
私のところでは、スタッフ全員に美容学校の訪問美容講習を計4日間、受講させています。法的な問題に始まり、実際に寝たきりの人をシャンプー・カットするにはどうしたらいいかなど介護技術も教えてくれます。加えて、高齢者向けのメイクや、車椅子の方への着付けなども。
また、そこに集まってくる訪問美容を志している人たち、実際にもう始めている人たちと交流して、多くの事例も聞けます。訪問美容に関して語るなら、このイベントの時間だけではとても足りない。だからぜひ、そういったところに自分で足を運んで、情報交換をして「自分がお客さまを担当した時、どうするのがいいのか?」とイメージをめぐらせることが大事ですね。なかには身体的なことだけではなく、精神的な障がいを持つ方もいらっしゃいます。そういった場合はヘルパーさんすら入れてくれなくて、もう何年も髪を洗っていないことも。そこに行って無理やり施術をするのではなく、まずは人としてのつながり、コミュニケーションをどうとるかということも必要になってきます。女性モード社:寺口さん
やはり結局のところ、オーナーの方が「サロンを今後どうしていきたいか」ということが最初にないといけないかなと思います。「訪問美容にこのように取り組んでいく」という、サロン一丸の思いがないと、なかなか進まない。ふくりびさんも空さんも、やはりここまでくるのに約10年の歳月がかかっています。成功されていてすごいと思いますが、本当にすごいのは「年月をかけて蓄積してきていること」だと思います。
参加者の声
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具体的な課題が分かり
問題解決の糸口が
見えた! -
難しく考えすぎず、まずは
自分の地域の状況を
調べることから始めたい -
実際に行動にうつすため
自分たちがもっと
勉強する必要があると
感じた -
今日を
きっかけに
したい! -
分からないことが
分からなかったので、
少し目の前が見えた
気がする -
実際に訪問美容をしているサロンの
具体的な話を聞けたのが
参考になった
ホットペッパービューティーアカデミーより
企画担当 坂本理恵 (株)リクルートライフスタイル リサーチ&アカデミーグループ