第3章4年半で100店舗を達成
「やりたいことじゃない。
“勝てること”をやる。」
髪質改善の「艶髪(つやがみ)」に特化し、メニューがシンプルで高単価という点も特徴的ですね。
事業には寿命があり、時代に合わせられないとその寿命は短くなります。メニューひとつとっても、そうです。最近は「外国人風カラー」とかが人気ですが、その人気がかげる日が来るでしょうし、求められる髪形も時代によって変わります。そうした背景を考えつつ、時代とずれないで事業を継続するには…と考えた結果が「艶髪」でした。
紫式部の時代から髪につやを出すために油をぬったりしていたように、「艶髪」は時代を超えて求められてきました。だから僕らが生きている間に、艶髪に対するニーズがなくなる時代は来ないだろうと思ったんです。僕はやりたいことよりも「勝てることをやる」って考え方をします。世の中で受け入れられることをベースに、やりたいことを考えるんですよ。
現在は出店100店舗を達成し、「2020年までに全都道府県に出店」という目標を掲げています。こうしたスピード出店、拡大路線は立ち上げ当初から考えていたものですか?
そうですね、当初から全国展開を構想していました。というのも、美容室は1店舗だけじゃ月100万円ほどの利益しか生み出せません。それでは、やる意味がない。だってアフィリエイトのほうが稼げますからね。美容室をやるなら多店舗展開が必要であり、じゃあインフラにしちゃおうと考えました。日本全国どこにいても、「Dears」があるから髪をきれいにできるよって状況にしてしまえばいい。そこまでの認知を獲得できたら、もはや集客・求人で苦労するという概念すら必要なくなるでしょう。
むしろそのポジショニングになれないなら、他社と50歩100歩の闘いを果てしなく続けることになります。自社が有利になるためには、どういう経営が必要か。それが全国展開であり、これなら「勝てるな」と思えたから、美容室経営を始めたんです。僕は美容室経営には「技術とマーケティングが50:50で必要」だと考えているので、こうして一つひとつ構想を練っています。
北原さんの言う、マーケティングとは?
市場認知を奪うこと、相手の時間を奪うこと、行動起点を奪うこと。そのための方策ですかね。「コンビニと言えばセブンイレブン」みたいに、「髪の毛に艶を、と言ったらDears」と名前が挙がるくらい市場認知を奪う。ネットでうちの情報を見る時間や、サロンに来る時間をもらう。そして、うちのお客さまの髪の変化を見て「私もああなりたい」という行動起点になる。そうなるためには全国に、スピーディーに店舗展開して、業界に発信していく必要があるのです。
開業4年半で100店舗というスピード出店を叶えた仕組みは?
すべて直営店というのは大変なので、フランチャイズ(FC)展開をしています。いま105店舗中、直営店は7軒であとはFC。FC店でも同質のサービスを提供できるように、マニュアル化しています。マニュアルというのは「本日担当させていただく北原です」と名乗る接客のところから、すべて決めています。お客さまが入店してから帰るまでのセリフ、行動を定めた台本ですね。
使う薬剤は独自に開発したものを卸していて、集客などのマーケティングは全店まとめて本部で行います。集客ができないから潰れそうになって、うちのFCになったわけですからね。FCオーナーの仕事は給料を出すことくらい。本部の経営軸には立ち入りません。あとは社員教育ですが、教育といってもこちらが用意した動画を見せながらマニュアルに沿ってやるだけ。早い人で2週間、遅くとも3週間で教育期間は終わり、実際にお客さまを担当します。
早いですね!
こうした方法で、新規客のリピートは85%、継続リピートは97%です。次回予約を90%~100%取れるマニュアルを用意していて、次回予約のキャンセルは10%ほどなので、自然とリピート率は保たれます。他のサロンでお客さまが取れなかったスタッフも、マニュアル通りにやれば売れっ子になりますよ。
FC加盟店になるためのロイヤリティは?
最初のころは加盟するのは無料で、潰れそうな店舗に介入してうちの方式で立て直し、黒字化した時点で売上の3%~10%をいただいていました。そして今後うちのFCとしてやっていくか、辞めるかを選択してもらう。「加盟しない」という選択をするオーナーさんはいませんでしたけどね。
店舗数が増えるにつれて加盟料を上げていて、現在は加盟時に150万円もらってマニュアルを提供し、その後は売上の10%を歩合として納めてもらっています。あとはうちから薬剤を卸しているので、その料金も必要ですが、この枠組みでFCの利益率が30%にはなります。