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イノベーターが
見ている未来

vol.52

確固たる世界観を持ち、新しい取り組みをしている「次世代リーダー」へのインタビュー。
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。

GULGUL

大河内 隆広さん (age.42)

財務のプロフェッショナルが語る、
withコロナ時代の美容室経営とは。

新型コロナウイルスによって、美容室経営も大きな転換期を迎えています。あらためて、財務知識の大切さを痛感した方も多いでしょう。今回は、財務のスペシャリストとしても知られる大河内さんに、現状と未来をうかがいました。

1978年、東京都生まれ。株式会社GULGUL・代表取締役。30歳で1号店を立ち上げ、現在は東京と千葉に美容室9店舗を展開。また美容サロン経営を学べるオンラインサロン「NO LIMIT(ノーリミット)」をALIVE 西川礼一さん、ブレイス 鈴木淳也さんとともに主宰し、財務のプロフェッショナルとして活躍している。
https://www.hairsalon-gulgul.com/

第1章飲食店からの撤退、そして美容室の赤字

「撤退するか、しないか。
仮説を立てて判断するしかない。」

「GULGUL表参道店」では美容室初となるプロジェクションマッピングを導入。ドアを開けると歩調に合わせて画面が変化し、水の流れる音が出る

コロナの影響であらためて財務の重要性が浮き彫りになりました。そこで今回は“財務のプロフェッショナル”である大河内さんに、そのあたりもうかがいたいと思います。
早速ですが、最初に現在の事業内容を教えてください。

美容室がメインで、個室型サロン「GULGUL(グルグル)」が5店舗、カラー特化型の半個室サロン「ao akua(アオ アクア)」が1店舗、個室ではない低価格帯サロン「smoos’(スムーズ)」1店舗、業務委託の低価格帯サロン「ali’i(アリー)」1店舗、白髪染め専門店「いろ髪」1店舗と、計9店舗を展開しています。あとドライヘッドスパサロン「王様の昼寝」のオープンを予定していたんですが、延期になりました。

当初、4月オープン予定でしたよね?

はい、4月前半オープン予定でしたが、コロナの緊急事態宣言発令と重なったのでやめました。再オープンの見立ては、正直立ってないです。もう内装もできていて、すぐにオープンできる状態ではあるのですが・・・。コロナの状況次第ですね、最初からコケたくないので。ドライヘッドスパということもあり、どうしても密感があるし、コロナと合わないなと。これから第2波がくるかもしれないので、もしかして1年くらい寝かせるかもしれません。こればっかりは世間の状況もあるし、わからないですね。

大河内さんは、イタリアンレストラン「トンガリアーノ」も経営されていました。「フライパン美容師(美容師・料理人という2足のわらじ)」という働き方が、2019年テレビ東京系『ガイアの夜明け』でも取り上げられるなど注目されていましたよね。今回、突然の撤退には驚きました。

3月初旬で100名を超えていた「トンガリアーノ」の団体予約が、すべてゼロになって。それまでは少し楽観的だったところもあったかもしれませんが、3月という宴会需要の多いかきいれ時の予約がすべてキャンセルになったことで、「これは、やばい。やばすぎる」と思うようになってきました。

「トンガリアーノ新小岩店」は、4月5日の営業を最後に自粛休業に入り、4月7日の緊急事態宣言発令を待って、4月9日に撤退休業を決めました。緊急事態宣言発令から2日後のこと。わりと早い決断だったんじゃないかと自分でも思います。それまでの間で大黒字まではいっていなかったことも理由ですね。アフターコロナの世界で、飲食店を走らせるというのは割に合わない勝負だと。こういうときの撤退って、特にコロナで日々変わる状況の中では、全部自分で予測するしかないんですよね。

外食産業も、コロナの影響を大きく受けていますよね。

特にアルコールを伴う飲食って難しいですよね。「トンガリアーノ」はお客さんのうち女性が6~7割で団体のお客さまでした。女性はこういう状況だと、なかなか外食に出かけません。また男性も前よりは行きづらいですし、会社の経費も飲食では使いづらいですよね。緊急事態宣言が終わったところで、コロナはなくならない。どんなに甘い見立てでも、年内は赤字だろうなと。本業である美容室を守るためにも、飲食店からの撤退を決めました。

美容室に関しては?

「美容室はなくならないもの」だと思うものの、緊急事態宣言後は「今後はわざわざ電車に乗って、都心まで髪を切りに行く人が減るのでは?」と感じました。それまでは実際、今まで表参道店まで切りに行っていた人が、新小岩の店舗に来ることも増えていましたね。4月半ば時点では、都心=表参道は復活の見込みがないのでは、と。

4月の売上は昨対比で60~80%、表参道は50%。表参道は基本的に家賃・広告宣伝費という2つの固定費が高いので、一番マイナス率も大きくて。

売上が戻らなければ赤字になってしまうので「撤退するか、しないか」の見極めをするしかないと思っていました。でも、そのときの対応策は自分なりの仮説を立てながらも「様子をみる」しかなかったんです。

2017年に髪書房さんから出された書籍『独立から2店舗目をめざすサロン成長戦略会議(NO LIMIT)』のなかで、大河内さんが「現金を持つということは災害にも強い。美容室は現金商売だから、手元に現金がないと倒産してしまう」と書かれていました。今のコロナの現状を予測していますね。

そうですね。規模によって、どのくらい必要なのかは違いますが、うちの場合、借入は今回3億円以上集めて持っておいています。コロナでこの先大きいものがこなかったとしたら、間違いなく借り過ぎではあるんですが・・・。ただ、このタイミングで借りるということは、そのくらい現金を借りられるチャンスだったわけです。

財務に詳しい人は、借りられるタイミングを「チャンス」と表現する人が多いんですね。「使わなかったらどうするの?」と聞かれるけど、「使わないと思ったときに考えればいい」と。今回の制度融資は、借りておかないと損、という内容でしたし。

  • 「GULGUL表参道店」はTV・DVDも鑑賞できる個室型。隣の席との間は2メートルの間隔(仕切り)があり、会計も個室内で済ませることができることが、コロナ禍においてあらためて支持されている

  • 内装・ロゴも完成し、あとは4月のオープンを待つだけだったドライヘッドスパ専門店「王様の昼寝」

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