第3章コロナで変わる美容室のあり方
「たとえるなら箱ティッシュ。
美容室は、準生活必需産業。」
先ほど飲食店から撤退されたお話がありましたが、美容室のお客さまの戻りは?
7月に入った現在は、100%お客さまが戻ってきています。美容室というのは基本的に一人で行くもの。飲食などと違って人を誘うものではないので、自分のペースで行けますよね。
「生活必需産業がどこか」って世間でも話題になりましたが、もし分類するのであれば「美容室は準生活必需産業」だと思ったんです。今って娯楽産業、いわゆる贅沢産業は、全部厳しい。「きれいにするって必需なの?」という議論もありました。
美容室は娯楽・贅沢にも入るかもしれないけれど、でもやっぱり「準生活必需」だなって。たとえるとしたらトイレットペーパーって、生活必需品だと思うんです。家でいきなり切れたらピンチですよね。じゃあ、「準生活必需って何だろう」と思ったときに、箱ティッシュかな?って。なくても何とかなるけれど、生活が平常に戻りつつあったら、箱ティッシュを買いたい。だから、美容室はそれくらいの位置付けかなと。
今後の美容室のあり方はどうなると思いますか?
コロナによって、今は人との接触を最低限におさえたほうがいいと考えると、日本が今まで大切にしてきた「おもてなし」の部分を削るという方向になるんだろうな、と。現在はドリンク、本、肩もみサービスなどのホスピタリティ系をなくしている傾向にあります。コロナ感染で一番気になるのは「飛沫」ですよね。お客さまの近くで会話ができなくなったとしたら・・・。同じ店内にいるのにタブレットとか使ってバックルームとセット面でお客さまと会話する日が来るかもしれない。カウンセリングは、事前にTV電話でやってからの来店、とかになるかもしれませんよね?
あと、美容室経営者が気になっているのは物販のECサイトだと思います。今までも注目されていたものの、なかなか発展はしなかった。それがコロナをきっかけに、急速に進化しそうですよね。
SNSなどでの発信内容をみても、大河内さんはコロナについてかなり勉強されていますよね?
財務を勉強したときもそうでしたが、今回のコロナもそうで、僕はオタクになって徹底的に調べます。ニュースや記事、コロナを解説しているYouTubeなど、少なく見積もっても毎日6時間くらいは目を通していたと思います。
そこまで調べたうえで「なぜ飲食店を閉めなくてはいけないと思うか」をスタッフに伝えました。そうしないと、スタッフは納得感をもって動けないと思うので。僕たち経営者は、仮説のうえで行動をとっていくしかない。でも、その「仮説」は調べ尽くさないとわからないんです。
大河内さんはいつも、ズバッと決断されるイメージがあります。
僕は、昔やっていたパチンコでは、いわゆる「損切り」がヘタでした。負け始めてるのに、ついつい後追いしちゃって大負けするタイプ。数年前の仮想通貨のときもそうですね。今回の飲食店撤退の判断は、そのときの経験が反面教師としていかされているかもしれません。もちろんパチンコとは違います、仮想通貨とも違います。
株式会社GULGULを背負って臨む大切な勝負なので、「絶対に負けられない」というのが、今回のコロナとの戦いで強く思っていることです。何が正解かもわからないけれど、正解だと判断したことを1%でも良くするために、経営者は勉強し続けなければならない。
いま、やれることは決まっています。「経費を削る」「お金を持つ」「売上を工夫して上げる」、この3つです。一方で、思考を止めることなく、ワクワクするような“攻めの事業計画”も考えていきたいと思っています。
「コロナが来なかったら、不景気にならなかったら、と考えても仕方ない。
コロナは来ちゃったわけだし、不景気にもなってしまったのです。」
折に触れ感じていた、メンタルが強い秘訣をたずねると・・・。
「ひとつだけ思うのは、人ってどうしようもないことに時間を使って、悩みません?ここで時間使ってもしょうがない、ってことに時間を使いすぎる。それは意識的にしていません。考えて、考えて、でもここで考えても来月になったらわからない、と思ったら考えるのをやめる。それだけで、“メンタル強くなった風”になれます(笑)。」という返答が。
インタビュー中、何度も出てきた言葉。「うーん、わからない!」
それは決して投げやりではなく、大河内さんがもつ“強さ”の表れです。