第2章なぜ病院をつくるのか?
「保険分野への参入と同時に、
メディロムホスピタルをつくりたい」
創業時から「ヘルスケアの総合商社」を掲げていましたが、最初に「Re.Ra.Ku」などリアル店舗から事業を始めたのは、なぜですか?
リラクゼーションスタジオを展開することは、データ収集ができるという利点もあります。会社員時代、ギックリ腰になったことがありました。整体や接骨院を何軒もまわって、そのたびに電話や住所、年齢、持病、体調など細かい質問事項の記入を求められ…。自分も治療に影響するかと思うと、真剣に回答する。そのときに「これだ!」と。こうしたデータは、さまざまな企業がお金を出してもほしい貴重な情報です。
データは複数の店舗を抱えてユーザーが増えるほど、よりたくさん集められる。健康情報のデータベースができれば未病の調査・研究、そして医療・生命科学分野の事業にも役立ちます。なので「Re.Ra.Ku 」では、こういった顧客の健康状態をiPadで取得し電子データにしたんです。
これらのデータをもとにすれば、店舗では解決しきれない部分は、オンライン上でトレーナーを選定して生活指導を受けられる自社アプリ「Lav」での提案ができます。「MOTHER」も加わり、さらなるデータ取得ができる体制になりました。
ビジョンである「ヘルスケアの総合商社」に、どんどん近づいていますね。
今後も、リラクゼーションスタジオの温浴施設などへの出店は強化していきます。データ収集のタッチポイントを増やすことが目的です。
それらの“データベースの見える化”によって、「リスク判定ができること」ということを、目指しています。「Lav」は体重変化や食事の習慣がデータでとれるので、いずれ「あなたは、発ガンリスクが高まっていますよ」と知らせることができるようになるのではないかと。保険のリスク判定にも使えるし、個人でも生活習慣の見直しをすることが出来ます。
人はなぜ病気になるのか?疾患はほとんどが、後発的なもの=生活習慣に起因します。難病をのぞいて、ほとんどの病気は生活習慣に問題があるのに、大規模なデータ収集と研究はまだまだこれからです。あらゆる疾患にはエビデンスがある。ガンもアレルギーも、その前の段階である“伏線”が存在します。それを解き明かそうと、数年前に「DNA検査」ブームが起きましたよね。でも1回やったら終わりで、いわば“占いの域”を出なかった。聞いて終わりではなく、きちんと生活習慣の変化を捉えて病気の予防につながるものを提供したいと思っています。
江口さんは常に長期的な視点をお持ちですが、今後の構想は?
中期的な構想としては、保険の分野に参入し、保険の組み立てを行いながら、海外の病院の買収をして「メディロムホスピタル」の運営にチャレンジしたいと考えています。
健康増進・医療の市場で一番大きいのは、製薬部分。国や行政とも密接に関わり、ワクチンや治療薬など、世界中から渇望されている市場です。ゆくゆくは、そのマーケットにも参入するために、逆算でいこうと考えたのです。
製薬会社は病院を必要として、病院は保険組合を必要とする。健康保険組合は「現在は健康だけど、将来疾患のおそれがあるユーザーデータベース」を必要としている。そしてリラクゼーションスタジオ事業は、ヘルスケアデータが取得できる。このデータを基に保険事業に参入し、その後に病院の経営や製薬会社にまで領域を広げることができるのではないかと考えています。
ちなみに、「日本の医療は進んでいる」というイメージを持っている人は、少なくないですよね?でも医療分野においては、先進国の中で遅れをとっていると思います。ガン患者は、アメリカでは減り続けていますが、日本では年々増えている。アメリカで承認された医薬品が日本にくるのに数年かかることもある。日本で仮に「ステージ4のガン」と宣告されたら絶望的になりますよね。でも、アメリカで治療すれば、治って帰ってくる可能性が高まることも…。でも英語が話せないとか、手続きが煩雑、など実際に渡米することは難しい。医療のボーダレス化を目指したい、というのが創業時からの想いです。