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イノベーターが
見ている未来

vol.64

確固たる世界観を持ち、新しい取り組みをしている「次世代リーダー」へのインタビュー。
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。

関西美容専門学校

副校長/雨積 直紀さん (age.35)

果たして、美容専門学校での学びは
サロンワークに即していないのか?

美容専門学校の中で、にわかに注目を集めているのが大阪にある「関西美容専門学校」。入学志願者数は年々増加、学生向けヘアコンテストでもグランプリ受賞多数と結果を出している。2015年、異業種から転身した副校長・雨積さんが入り、革新的な取り組みをさらに加速。人間力が育つ、独自のカリキュラムとは?

雨積 直紀(あまづみ なおき)さん/学校法人関美学園 関西美容専門学校・関西ビューティプロ専門学校 副校長。1986年、兵庫県生まれ。大学を卒業後、渡英し「サスーンアカデミー」へ。帰国後、2011年に株式会社リクルート入社。関東の専門学校などを担当する進学事業に携わったのち、2015年から関西美容専門学校に着任。
https://www.kanbi.ac.jp/

第1章入学志願者数が、年々増加

「いい学校は、間違いなく
学生も校門もキラキラしている」

美容専門学校の方とお話させてもらう機会が多いのですが、なかでも、関西美容専門学校(以降「KANBI(かんび)」)の取り組みは、突出している印象があります。今日は、そのあたりを中心に、うかがいたいと思います。
まず最初に、学校を設立されたのはいつですか?

もともと美容室をしていた僕の祖母が創立者で、1947年に開校しました。現在は、父の光廣が理事長、母の郁枝が校長、僕が副校長をしています。

「KANBI」に入る前は?

僕は兵庫県生まれで地元の大学に通っていたんですが、いずれは「KANBI」に入りたいという気持ちがあったので、「美容に近しいことを学びたい」と。そこで在学中に、美容師の免許を取り、大学卒業後にイギリス・ロンドンの「サスーンアカデミー」で10カ月学びました。

リクルートに就職したのは、大学時代、フリーペーパーの『ホットペッパー』を見て、「美容室の情報も載っているんだ!いいな」と思ったのがきっかけですが、イギリスから帰国後、美容のことは少し学べたので、「学校のことを勉強したい」と、まなび事業部を希望しました。関東の専門学校がクライアントで、営業の仕事が中心。2011年から3年で辞めるつもりが、楽しくて…結局、4年半ほど在籍しましたね。

その後、東京・銀座の美容室「PEEK-A-BOO(ピークアブー)中央通り店」で、半年ほどアシスタント研修をさせてもらいました。当時、僕は30歳になる手前でしたが、同期はみんな20代前半。今でも、頭が上がりません(笑)。いい意味で、厳しく教育を受けさせてもらい、アシスタント目線は、そこで培われましたね。そして2016年、30歳のとき「KANBI」に副校長として着任しました。

リクルート時代は専門学校を担当していたとのこと。「KANBI」を、どのように見ていましたか?

当時は「KANBI」の情報をすべて、シャットアウトしていました。何となく、フェアじゃない気がして。なので、うちの学校がどういう状態か、入るまで全然知らなかったんです。リクルート時代は、70~80校くらいの専門学校を担当し、休みの日は趣味で各学校のオープンキャンパス(学校内施設やサークル、学食などを見学&教員や在校生との会話を通じ、学校の雰囲気を体感できるイベント)に参加しました。多いと、月に4~5回くらい。たくさんの学校を見ているうちに、その学校に一歩足を踏み入れただけで「いい学校か、そうではない学校か」が、わかるようになりました。いい学校は間違いなく、そこにいる学生も、校門も、キラキラしている。美容室でもありますよね?入っただけで、わかるような。そういう感覚です。

確かに、人間関係がうまくいっているサロンと、そうでないサロンは、入ったときの雰囲気で伝わりますよね。「KANBI」は、どうでしたか?

学校に入った瞬間、「いい学校、満点の学校」だと。その後、内部の環境や教育をじっくり見ても、あらためて感じました。「これは大きなことをしなくても、ちょっと伝え方を変えるだけで、もっとよくなる」と思いました。

リクルート時代に広報関係の経験はあったので、最初は広報メインで。人事・財務は勉強しながら身につけていきました。たまにカット講師もしたりと、「なんでも屋」です(笑)。

新しいことを考えるのは、おもにどなたですか?

僕が入る前は、校長やキーマン3~4人で決定する、いわゆるトップダウン。決して高圧的なものではなかったのですが、校長も、その状況を変えたいと常々言っていました。なので、僕が意識したのは、先生や学生の意見を吸い上げよう、と。距離を近く感じてもらいたかったので、副校長など肩書きがつくのがイヤで…。着任当初は、先生や学生に「直紀と、下の名前で呼んでください」と言っていましたね。

美容専門学校は定員割れのところも多いですが、「KANBI」はどうですか?

定員が280名で、常にそれを超える志願者がいる状態でした。3年前に、定員を320名に増やして落ち着くかと思ったら、さらにそれを超え年々増えている状態です。

入学者にアンケートをとって分析してみると、学生の満足度が高く、口コミによる部分が大きいことがわかりました。卒業生は「KANBI大好き」と言ってくれる子が多く、美容師さんづたいに、「KANBIの卒業生はいいよ」、と聞いたといった声も。

コロナ禍でも、志願者は減らなかったのですね。

うちだけではなく、美容専門学校全体で見ても、むしろ増えたように思います。コロナの景気悪化で、高卒就職が厳しくなりました。ホテル関係の職に就く予定だった子が、美容専門学校に入学したり。美容の仕事は、コロナ禍でも「必需」であり、「手に職」というイメージがあるからだと思います。

コロナで、在籍する生徒に変化は?

精神的に病んでしまう子が多くなりました。特に、遠くから出てきて一人暮らしをしている子は、孤独を感じてしまいがち。そこで、2021年からメンタル面のケアができるよう、LINEでスクールカウンセラーに気軽に相談できる体制を整えました。

授業のオンライン化も、2020年4月の3~4週目には開始したので、早いほうだったと思います。オンラインは、いい面も、悪い面もあり、学生の評価も真っ二つに分かれますね。

いい面でいうと「オンラインのほうが、カメラで手元の技術が見えやすい」「動画化すると繰り返し見える」という意見。実際、ワインディングはオンライン授業で受けた子のほうが、きれいにできる割合が多かった。悪い面は「細かな作業や微細な毛流れ等はネット環境が弱かったり、スマホ等だと見えにくい所がある」「一人ひとり直接見て指導ができないので、できる子とできない子の差が出てしまう」ことです。

でも、オンライン授業があったことで、学生たちは「リアル実習」のありがたみを感じたようです。またいつ、オンラインになるかわからない状況で、日々の練習の大切さに気づき、いままで以上に真剣に実習を受ける子が多くなりました。

  • “カットのKANBI”というくらい、カット技術の習得に力を入れている。世界的なヘアアーティストであり、KANBIの顧問も務める「PEEK-A-BOO」代表 川島 文夫先生によるカットコースもある

  • SNSの総フォロワー数・約60万人!東京・表参道の人気サロン「Ways TOKYO」のセミナーも。KANBI卒業生の木村 一平さんら6名が講師となり、SNS活用やヘアアレンジを伝授(2021年6月、オンラインにて実施)

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