第2章人間力を育む、カリキュラム
「美容業界に進むことがメイン。
でも、それがすべてではない」
「KANBI」のビジョンを、教えてください。
『美を通して、社会で活躍する心身を育てる』。そういった人材を輩出していくことが、ビジョンであり、理念です。大事にしているのは「人間力を育てる」こと。主体性・コミュニケーション力・個性を、どう“自ら”会得してもらうか?
人前で気持ちよく挨拶ができること、相手の話をちゃんと聞けること、自分の主張をきちんと伝えられること、人としてまわりの人間を大切にできること。その上で自分の「意志」を持つこと。そうした「人間力」が、豊かなクリエイティビティを生み出すことにつながります。なので、それらをカリキュラムや環境づくりに反映しています。
「多様な科目から選べる」ことも、そのひとつですか?
はい。もちろん「国家資格に合格させる」という、学校としての大前提はありますが。必修科目は、学生がイヤイヤやっている雰囲気を感じたんです。でも、選択科目になると、とたんにイキイキする。そこで、選択科目の数を増やしました。2年間で最大9科目(カット・メイク・ブライダル・ネイル・カラーリストなど)を選択できます。この体制を整えるのは、かなりパワーがかかるので、ほかの学校ではやめてしまっているところも多いのでは…。
学生や先生が考えて実現した、カリキュラムやセミナーもあります。プレゼンテーションをしてもらい、採用の可否を決めるのですが、その過程でも自主性が育ちます。実際に、受講した子からの満足度も高いですね。また、先生方もほとんど「KANBI」卒業生です。そういう教育を受けて育った先生だから、学生にも伝わっていく。いい循環ができています。
美容業界は、離職率が高いですよね。いまは美容業をしていない卒業生もいるけれど、その子たち=悪い子になってしまうのか?いや、そうではない。ほかの仕事で、ものすごく成功している子もいる。「KANBI」のことを卒業後も好きでいてくれる子、学んでよかったと言ってくれる子もいます。卒業生は美容業界に進むことがメインではありますが、“それがすべてではない”。なので、もし将来、美容業以外のキャリアに進んだとしても役に立つことを念頭に置いています。たとえば、SNSやマーケティング、プレゼンテーション・コミュニケーション力、人間力といったものは、どの仕事に就いたとしても、きっと役立つものです。
ほかに、新たな取り組みは?
2019年から「AOフロンティア制度」を、始めました。3~4年前まで課題としてあったのが、入学志願者に対して、面談で評価していくこと。1~5で点をつけるのですが、ある年に入試を受けた子は3が多く、言葉は悪いかもしれませんが、可もなく不可もなく、といった感じでした。「もっと、KANBIらしい子に入ってもらうには?」と考えたのが、この制度です。
入学する前の段階で、東京や海外に目が向いている子は、優秀である傾向が強かったんですね。そういった子たちを選抜できないか、と。成績や過去の経験だけでは語れない「将来の目標」、そして「やる気」が選考基準です。合格者は全員、「KANBI」卒業生が在籍する東京の人気サロンでの施術を、上限5万円まで学校が負担します。さらに上位1名は「海外研修特待生」として、ロンドンの「サスーンアカデミー」へのカット留学費用、または海外研修費用を学校が負担、という特典があります。
面談だけでなく、自分でプレゼンテーションを考えて発表するなど、合格には高いハードルがある。それを苦とせず、高校生でありながらプレゼン能力が高い、特筆すべきレベルの子が入ってくるようになりました。2019年の初年度は、10名合格の枠に、3倍の30名くらいからエントリーが。卒業後は、競争率の高い人気サロンに就職できた子が多いですね。
学生向けヘアコンテストでも、「KANBI」の名を多く見かけます。直近だけでも、「全国美容専門学生 ヘアメイク総選挙(2021年6月)」の1位・2位。「全国理容美容学生技術大会 大阪地区大会 理美容甲子園(2021年6月)」チャレンジヘア部門・最優秀賞受賞&優秀賞、へデザイン部門・優秀賞&敢闘賞…と、素晴らしい実績ですね。
応募を強制することはないのですが、自主的にやらせるからこそ、やる子は、とことんやる。それを見た高校生たちが「自分もやりたい」と、いいサイクルができて、結果につながっています。
うちは自主的にやらせるので、学校から「あれしなさい」「これしなさい」とは言いません。自由なんです。ただ、そうすると「やる子は、めちゃくちゃやる」けれど、「やらない子は、やらない」ということも、正直あります。なので、オープンキャンパスなどで「そういう学校ですよ。主体性がないと楽しくないですよ」と、伝えています。