イノベーターが
見ている未来
vol.83
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。
フルーツルーツ
代表取締役社長 榎戸 淳一さん (age.42)
コロナ禍になってから、収益の柱として「店販」に注目が集まっている。東京・学芸大学駅のほど近くにあるオーガニックエステサロン「フルーツルーツ」では、店販率が40%を超えるという。それを可能にした、自社オーガニック製品へのこだわり。そして、お客さまが買いたくなる、アプローチ方法とは?
https://www.fruitsroots.com/
第1章コンサル時代に気付いた、業界の課題
「店販が売れるサロンをつくれば、
エステ業界が変わるはず」
榎戸さんは、以前はコンサルタントのお仕事をされていたんですよね。
はい。船井総研時代、エステ業界に課題を感じたことがきっかけで、社内でエステ業界向けコンサルティング事業を立ち上げました。
今から10数年前…新規集客が減ってきたり、高単価での契約がとれる時代ではなくなってきていました。かといって、店販は利益率が低いこともあって、当時はまったく注目されていなかったんです。サロン平均で、売上の10%にも届かなかったのでは?
この業界は、スタッフの入れ替わりが激しく、長期で人材が安定しにくいですよね。だから「誰でも売上をつくることができる再現性」が大事。人の技術に左右されず、気に入れば継続購入してもらえる「店販が売れるサロン」をつくったら、業界が変わっていくんじゃないかと。そこで2010年、自分のサロンをオープンしました。
店販で置く製品を、オリジナルにしたのは?
新しいサロンをつくるなら、独自性を出したい。またコンサル時代、いろんなサロンと関わる中で、エステティシャンの手荒れも気になっていました。毎日施術で化粧品を使うので、肌にやさしいものをつくらなければ、業界の発展もない、と。
そこで、アメリカのニューヨークに、スパ施設の視察に行きました。マンハッタンのソーホーでは、人々の生活にオーガニックが馴染んでいた。日本でも、きっと5年後、10年後に、オーガニック市場が広がっていくと予想しました。
製品の原料はすべて「日本産」にしたかったので、そこから日本全国の農場・農家さんをまわって。みなさん、理念やこだわりがあるから、とにかく話がおもしろい!でも、オーガニックって、苦労するわりには、そんなに儲からないという課題も…。こうやってがんばっている生産者さんに、きちんと還元できる製品をつくり、広めていこうと決意しました。
オーガニックの中でも「フルーツ」に特化したのは、なぜですか?
10年前のオーガニックって、すごく“地味”で(笑)。色や香りも少ないし、女性の心を上げる要素がなかった。でも、ニューヨークで見たものは、香りがあって、色とりどり…。そんな中からフルーツのインスピレーションが生まれ、「これでいこう!」と。
店舗での商品の並べ方も参考になりましたね。お客さまが気軽に試すことができる化粧品を入り口にして、エステサロンに興味を持ってもらう。これなら業界が抱える「新規集客・店販の拡大」、どちらも解決できると思ったんです。
お客さまを“フルーツ漬け”に!?
エステ店販率、驚異の40%超。