Special Interview
美容業界が描く「女性活躍」のカタチ
株式会社ブロッサム
代表取締役 西良人さん
地域密着型のサロンとして、東京・埼玉で36店舗を展開する株式会社ブロッサム。早くから、女性スタッフの存在が企業として成長するための鍵になるということに着目。「女性がイキイキと働き続けるために、どのような提案ができるか?」という課題に真摯に取り組み、試行錯誤を続けています。創業30周年を迎えた今、その原点や「女性スタッフの活躍」に懸ける想いを代表取締役・西良人さんに伺いました。
1987年、大手ヘアサロングループ勤務を経て独立。美容師である奥さまと共に、自身のサロンを東京・板橋区にオープン。次々と出店を重ね、現在はヘアサロン36店舗を展開するグループに成長。社名“Blossom”には、「花が咲く」のほかに、「キレイに魅力的になる」「元気になる」という意味も。会社のスタッフ一人ひとりを愛情を持って育て、やがて花開いたスタッフ達がお客さまを笑顔にし、その笑顔が集まり地域を元気にする。そんな環境を作り続けていくという西さんの想いが込められている。
女性活躍支援の取り組み
- 女性管理職の活躍(役員2名、FC社 副社長4名、GS本部長1名)
- 産休・育休・働きやすい雇用形態の整備
- 休眠美容師の技術サポート
- 女性スタッフへのキャリアパスの提示
- ママスタッフが働きやすい店舗の開発
- 女性リーダーを育てる
- 男性マネージャーの女性理解を促進
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ママスタッフが働きやすい店舗の開発
約5年前に、「女性の働き方をつくるサロン」として常盤台店をリニューアルオープン。続いて、「ママを応援するサロン」としてキッズスペースを備えた北上尾店をオープン。いずれもスタッフは全員女性で、家事と育児の両立がしやすいように営業時間を9時〜18時に早めている。練習会も、営業時間内や営業を早めに切り上げるなど店内で工夫しながら行い、スタッフがすぐに帰宅できるようにしている。
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女性リーダーを育てる
女性リーダーの育成と女性のキャリア形成を目的とする教育プログラムを作成。リーダーを目指す、または自身のキャリアに悩みを抱えている女性メンバーに向け、キャリア設計やリーダーシップに関する学びの場を提供。卒業生は店舗の運営マネジメントで活躍している。
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男性マネージャーの女性理解を促進
女性スタッフに働き続けてもらうためには、男性店長の「女性への理解」が重要。女性をうまくマネジメントできる店舗こそが成長できると考え、女性の心理を学ぶ男性向けの勉強会を開催。女性スタッフのモチベーションを上げるための日常的な言葉使いなど、店舗ですぐに使える内容も多く、男性スタッフからも好評だ。
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Q
「女性の活躍を支えたい」という想いは、いつ生まれたのですか?
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A
美容師の妻に支えられてきた道のりの中で生まれました。
美容師をしていた妻と結婚し、21歳で父親に。
共働きの中、家事・育児はすべて妻に任せていた。
私は20歳で妻と鹿児島から上京し、大手サロングループに入社しました。当時は年中無休で朝から晩まで働くことが許されていた時代。美容師としてのスキルを上げながらマネジメントを学び、やがて25歳で独立。夫婦で店を切り盛りするようになってからも、私が100%仕事に捧げられるよう、妻は仕事に加え、家事・育児もすべてやってくれていました。シッターを雇うお金もなく、子供たちをお店のまわりで遊ばせるしかない。土日も忙しいので、待ち合い用の椅子をくっつけて昼寝をさせたり、店のスタッフに保育園のお迎えを頼んだりして、何とかやりくりしていたんです。
美容業界で「子育てと仕事を両立できる環境」を作りたい。
経営者として全力を尽くすために、ハサミを置いた。
修業時代から、美容師というのは女性には厳しい職業だと思ってきました。独立してからは目の前の妻が、仕事の途中に家事をしに家に戻り、「戻らなくていいよ」と言ってもまたお店が好きで戻ってくる。そしてイキイキと仕事をするのを見ていると「妻も、もっと美容を続けたかったのだろう」と考えるようになりました。
では、妻のように苦労して美容師免許を取った女性たちが、子育てと仕事を両立できる環境を作るにはどうしたらいいのか。そう考えたとき、しっかりと経営に専念していかなくてはならないと思い、完全にハサミを置いたのは32歳。5店舗を展開していたときでした。
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Q
取り組みの背景には、どのような考えがあるのでしょうか?
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A
事業を継続するためには、女性の力が必要ということです。
多店舗展開し、生産性を高めるには女性の力が絶対必要。
そのためにも永く働ける環境を整えている。
女性のお客さまが多いヘアサロンにとって、女性スタッフは絶対になくてはならない存在。女性ならではの感性や視点を取り入れることは、会社にとって大きなプラスになります。そのためには、女性が結婚や子育てしながらでも長く働ける環境を作ることが不可欠です。
美容業界の弱点は、個人の技術力でサロンは存続できると過信している点。でも実際は、個々のメンバーの夢を実現していく共同体でないと長く続けることは難しい。人材を育てて輩出し、多店舗展開に向かっていかなければ、美容業界は氷河期に入ってしまいます。
スケールメリットを活かした
女性のための店舗設計と教育制度に挑戦。
女性に活躍してもらうために必要なのは、働きやすい雇用形態の整備。今まではフルタイムで働いていた人が、結婚や子育てで18時に帰らなくてはいけなくなったとき、その条件を受け入れられる店舗がなければ新しく店を作ればいい。多店舗であれば、その店舗がはじめは採算が合わなくても、グループ全体で支えれば組織として成り立ちます。
もう一つは、女性たちを導くことができる指導者やロールモデルの存在です。「女性リーダー塾」や「ブロッサム大学」、「女性の心理を考える」という男性社員のための講座もその一環。女性が技術を一通り覚えたときに、次のキャリアとしてリーダーになることを選んでも、得意なものを伸ばしていってもいい。ただ、その階段を登っていくときに、面倒を見てあげられる指導者を育てることが大事だと思っています。
女性店長やママ、ベテランスタッフの活躍が、
お客さまの満足にもつながっています。
約5年前に「女性の働き方を作る」というコンセプトを持ってリニューアルオープンした常盤台店は、60代の女性が店長として活躍しています。彼女には、「女将さん的な存在として、お店にいてもらうだけでいい」と伝えています。人生経験を通して培ったものは、それだけでお店とスタッフのためになります。スタッフのチームワークを生み、あたたかな雰囲気を作る。それが、50代、60代の地域のお客さまからの支持にもつながっています。
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Q
今後、グループが目指す未来とは?
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A
美容師という職業で、お客さまと地域社会の役に立ちたいんです。
長く働ける雇用を生み出すために、
経営陣がどれだけ戦術化できるかが大事。
高齢化が進む中、これからのために私たちの仕事でできることは、美容師として定年を迎えられるような環境を作ることだと思っています。そのためには、時代の流れに沿って働き方を変えていくことが必要。20代を経て30代・40代・50代とやりたいことも環境も変わっていく中で、スタッフの望む働き方を実現するために、経営陣がどれだけ戦略を立てられるかが大事だと思います。
現在、ブロッサムでは本格的な経営者教育を行う「ブロッサム大学」をつくり、キャリアに幅広い選択肢が持てるようにしています。また、40〜50代のロングキャリアスタッフの活躍をコンセプトにしたサロンづくりも考えています。
お客さまの元にこちらから行く。
地域と共に福祉に取り組んでいきます。
美容業界は地域社会の一員として、もっと地域や社会に進出していかなくてはいけない。老人ホームやデイケアなどの福祉にも、ビジネスとしてお手伝いしていかなくてはいけないと思っています。
まずは、お店に来てくれているお客さまが外出できなくなったとき、こちらから訪問できる体制を整備したいと思っています。実現できれば、働ける時間、日数に限りがあるママスタッフのキャリアパスの一つにもなります。そのために今、介護士の資格取得や福祉美容の勉強をしながら準備をしています。目指すのは、地域に、そしてお客さまにどれだけ自分たちの職業で役に立てるのかということ。それを考え続けて、進化していきたいですね。
取材後、独身の取材スタッフに、会社のスタッフさんをご紹介してくださろうとする一幕も。社内結婚も多いというブロッサムさんのアットホームな雰囲気を感じることができました。
女性の気持ちを理解し尽くす西さんが率いるブロッサムさん。今後の展開がとても楽しみです!
Company Data
輝き続けられる環境に。
美容を通じて街に、人々に
笑顔の花を咲かせたい。