2020年3月、東京・代々木にネイルケア専門の「地爪ケアクリニック」をオープン。“ケア”ならではのターゲット設定、打ち出し方の工夫で、リピート率&単価UPに成功!さらには、ホットペッパービューティーを徹底的に活用&複数出店することで、DX化につながる!?
株式会社TAT/鍵井 輝子さん
ネイル材料の卸し・商品開発メーカー「TAT」内における、地爪ケアクリニックサロン事業部/事業部長。
不動産会社勤務、ネイリストを経て、2002年に「TAT」入社。新規事業のひとつであった、ネイルケアサロン運営を2020年より始動。さらに2022年から「サロン事業部」を独立させた形でスタート。
なぜ、「ケア専門」サロン?
ーTATさんといえば、ネイルメーカーとして有名です。1店舗目のサロンを「ケア専門」にしたのは、なぜですか?
弊社「TAT」は創業から20年、いわゆる“おしゃれネイル”で、業界発展に寄与してきたと自負しています。くわえて、ここ数年は未来のネイル人口・ネイリストの働き方を広げるため、“ケア”の分野を打ち出してきました。一般のお客さまへの認知も高めるため、「地爪ケアクリニックサロン」を発信基地にしたいと考えたんです。
ーケアの場合、スタッフの方は特殊な技術が必要ですか?
はい、地爪育成の専門家であるネイルトレーナーやケアネイリストが多く在籍しています。爪のトラブルで悩んでいる方に、プロならではの知識と高い技術を提供し、悩みに寄り添うカウンセリングを武器にしています。
ーコロナ禍の2020年3月オープンから、2年ちょっと。集客面は、いかがですか?
順調に伸びています。ここ最近でいうと2022年3月7日~3月21日、東京都は「まん防(新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置)」がありましたよね。その期間は落ちました。20代の若いお客さまは来てくれましたが、単価が高いこともあってか、なかなかリピートにはつながらず…。でも「まん防」が明けて、この4月から一気に、50代を中心とした年齢層の高いお客さまが戻ってきました。新規のお客さまも、増えていますね。
効果的なクーポンで、リピート率UP!
ーお客さまの年代は?
下は小学生から、上は60代の方まで、幅広い年代の方にご利用いただいています。男性のお客さまも1割くらい。
ホットペッパービューティーに出している『新規』向けクーポンに、「50歳以上限定」「ビジネスマンの方向け」「学割U24」「就活生・新社会人」といったワードを入れ、ターゲットを広く設定しているんです。50代以上の方や、男性って、ネイルサロンに行きづらいと思っている方が多いですよね?でも、クーポンに「50歳以上」「ビジネスマン」とあれば、「自分もネイルサロンに行っていいんだ!」と思ってくれます。さらに、「巻き爪ケア」「噛み爪補強」と、お悩み別で選べる工夫も。
あと必ず、『全員』向けクーポンも出しています。爪のお悩みは、“サロンに通うことを日常化”するからこそ、トラブルネイルの予防になる。続けてもらう=リピーターになってもらうことが大事なんです。なので季節に応じて、梅雨の時期は「ジメジメ季節」、夏は「夏ボーナス」、サンダルになるタイミングで「角質ケア」、秋・冬は「保湿」「乾燥」といったワードを入れるようにしていますね。
ー「単価UP」の観点で、取り組んでいることはありますか?
1日に施術できるお客さまの数には限りがあるので、単価は低いより高いほうがいいですよね。お客さまが入れ替わるごとに、掃除&コロナ禍では消毒もしないといけない。入れ替えが多くなるほど、インターバルが長くなります。それなら、ハンドとフットのセットメニューを作って、1人当たりのお客さまの時間を長くしたほうが生産性が高い。
店販にも力を入れています。売上のうち、店販比率は15%をキープ。ネイルケアは、家でのメンテナンスも重要です。サロンに来られない3~4週間の間、キレイになった爪を維持できるように「ネイルエッセンス・オイル・爪補強ハードナー」の3つをセットにして、「ハッピーバッグ(税込4,000円)」と名付けて販売。セットにすれば、当然単価も上がります。
ーお客さまにとっても、より本格的にホームケアができるので、いいですね。
ケアでサロンに来てくださっているお客さまなので、ケアへの意識が高く、価値を感じてもらえれば購入してくださいます。そのために、施術中やカウンセリングで、きちんと店販商品を説明する時間をとって、「家でのケアがいかに大事か」「次、来店する時にはどう改善できるか」ということをお話します。うちでは「1カ月で1本使い切る容量」の商品を販売しているので、それが終わるタイミングで「前回購入いただいたもの、きちんと使っていますか?」という確認も。
爪に悩みを持っている方がほとんどなので、次回来店までの「3~4週間後の未来」を伝えてあげると、とても励まされるという声が多いですね。「これが欲しいんです」と、“店販目当てで”施術に来る方もいるくらいです。
サロンボード分析を、スタッフ教育に活かす
ーホットペッパービューティーの予約・顧客管理システム「サロンボード」で、特によく使うものは?
一番助かっているのが、『集計・分析機能』と『サロンレポート』ですね。どういった年齢層の方に、どのメニューを利用してもらったか一発でわかるので、そこから次の新しいメニュー展開を考えたり…。また「フットのほうが、断然お客さま単価が高い」とわかれば、『DM(メッセージ自動配信)機能』を使って、「そろそろカサカサになってくるタイミングなので、フットケアしませんか?」と、クーポン付メッセージを送ります。
さらに、「スタッフ別の売上・リピート率・店販比率」も把握できます。これを、月1回・2時間あるスタッフとのミーティングに活かしています。スタッフ向け資料を作るときも、『集計・分析機能』があれば短時間で作成可能です。
ーミーティングでは、どんなお話をされますか?
店販の売上が伸び悩んでいるスタッフがいた場合は、得意なスタッフが「こういう声がけをしているよ」といったアドバイスをすることも。店販をオススメする=お客さまに無理強いしている気がして、抵抗がある人もいますよね。でも、うちではミーティングを通して「そのお客さまのためを思ってオススメする」という意識が、みんなで共有できています。
あとは「今月はこのメニューがよく出たから、次はパックのついた保湿効果の高いメニューを組み立てよう」「3回目のリピートがとれているスタッフは、とれていないスタッフと、何が違うんだろう?」とか。みんなでセッションしながら、意見を出し合います。スタッフ同士、お互いに助け合ってほしいから、そういった数字をすべてオープンにするんです。
スタッフはみなさん業務委託なので、自分の売上が伸びれば、収入が増える。ネイリストさんは、数字が苦手な方も多い印象ですが「自分がどれだけ売れているかを数字で可視化」することが大切。新規を1名とるのに、どのくらいのお金がかかっているか?どれだけリピートがあれば、収入につながるか?そういったことがわかるようになると、すべて「自分ごと」になります。
ーナレッジ共有も、改善ポイントに対しても、みなさんで取り組んでいるんですね。
ミーティングでは持ち回りで、発表する場を設けています。テーマは自由ですが、たとえば「こういうお客さまがいらっしゃって、こんな施術をした。改善できたこと、できなかったこと」などの内容を、パワーポイントやキーノートで資料作成し、みんなの前で発表します。
初めて使うというスタッフがほとんどですが、全員できるようになりました。TATとしても、「ネイリストの価値を上げたい」という想いがあります。何かチャンスがあった時に、それを逃さないようにして欲しい。「DX」が叫ばれている時代、技術だけやっていてもダメだと思うんです。きちんと資料が作れて、プレゼンができれば、どこにいっても通用する“力”になりますから。
あらゆる方向から「DX」!業務負荷を削減
ー先ほど「DX」という言葉が出ましたが、サロン運営の中で、意識していることは?
SNSなど他経路からの予約も、ホットペッパービューティーで一元管理しています。バッティングの心配がなく、何より給与計算や売上管理が一括でできて、運用がラク(笑)。
うちの場合は、TATという会社が母体なので、定期的に役員報告をする必要があります。そんな時も、必要な数字は『集計・分析機能』でサッと出せる。追加で「こういう数字はない?」と聞かれても、パパッと出せます。
お客さまに関しても、そう。2回目以降の予約は、自社HPやLINEから、というサロンもあるかと思いますが、その手間と費用対効果を考えると、うちは2回目以降もホットペッパービューティーを案内します。お客さまには「ポイント溜まりますよ!」って、メリットも伝えられるので。
ー鍵井さんは大阪に住んでいらっしゃるとのこと。特にコロナ禍では、東京のサロンに行くことが難しかったのでは?
オープン時から現在も、ほとんどサロンに行くことはありません。スタッフとのミーティングはオンラインで行い、連絡や情報発信はマメにLINEでやりとりしているので、不便を感じたことはないですね。クレームがあって落ち込んでいるスタッフとは、Zoomで話したり…。もし私がいつもサロンにいたら、嫌なことを言ってしまうかも(笑)。だから、むしろよかったかな。
ー支払いは現金不可で「キャッシュレス」というのも、効率化の観点からですか?
サロンに管理者が常駐しないこともあって、お金を置きたくなかったのがひとつ。あと、TATで商品販売の店舗があるんですが、レジ締めで1円合わないだけで、何人分かの残業代がかかります。仮に、1円多く払わせてしまっているお客さまがいたとしたら、そんな迷惑はかけたくはない。
なので、リクルートさんの『Airペイ(カード・電子マネー・QR・ポイントも使える決済サービス)』を導入しました。コロナ禍で現金を触りたくないという風潮も追い風になったのと、なんといってもお客さまごとの会計が速く、レジ締めという作業が必要ないのがいいですね。スタッフも「前にいたサロンでは、毎日レジ締めに30分~1時間かかっていたけれど、今は施術が終わったらすぐ帰れる」と喜んでいました。私も、銀行にいく手間が省けます。
あと、うちは店販で扱う商品数が多いのですが…。サロンボードの『レジ機能』を使えば、商品マスタをメニューとして作っていけるので、「この商品がいくら」と覚えなくても、スムーズに会計ができます。
「サービス業って、お客さまに満足してもらうところに時間を多く使うべき」だと考えます。すべてリクルートさんのシステムやサービスを使うことで、時間の費用対効果が高いな、と思うんです。
ー弊社のシステムやサービスを通して、「サロンのみなさんが本来やりたい仕事に集中できる時間を生み出したい」という、私たちの想いを体現してくださっています。
あまりに理想的なお答えで、この記事を読んでいる方に「無理やり言わせているんじゃないか?」と思われたらどうしよう…と心配になるくらいです(笑)。
じゃあ、あんまり言うとあれかもしれませんが(笑)。今、代々木店はスタッフが7名いますが、ホットペッパービューティーの『求人ページ』から応募してくれた方が、3名働いてくれていますよ。
あと『ホットペッパービューティーアカデミー』の「美容センサス」などの調査でカスタマー動向をチェックしたり、動画も片っ端から観ています。「スマホ撮影テクニック(人物編/スタイル・エステ・リラク)」動画を参考に、実際に撮影もしました。スタッフにも「観てね」って伝えています。あ、もうほぼ観尽くしてしまったので、もっとコンテンツを増やして欲しいです!特にネイルの!(笑)
この成功事例を、全国へ!
ー今後の構想は?
今のサロンは「ビューティー」という枠組みの中ですが、ゆくゆくは整骨院など「医療」分野と提携して、爪に深いお悩みを持つ方にも対応できるようになりたいですね。特に、高齢者は爪トラブルが深刻になるので、おばあちゃん専用のネイルサロンをつくるとか。あと、「赤ちゃんの爪を切るのが怖い」という親御さんもいます。「産婦人科」とコラボできれば、気軽に利用してもらえるのでは?
ーネイル人口が、広がりそうです。FC展開も進んでいますね。
2022年6月10日に、仙台店(宮城県)・伊那箕輪店(長野県)・長堀店(大阪府)をオープンしました。このあと新潟店(新潟県)、豊岡店(兵庫県)もオープン予定で、そちらを含め、出店が決まっている店舗を合わせると、計10店舗になります。開店前の講習をバラバラに行うと教育が非効率なので、東京・大阪で年4回、まとめて開催できるように、出店もある程度、同時期にしています。
ネイリストさんが、お昼ごはんも食べず、しんどい思いをして働いても、あまり稼げない…という環境は、なくしたい。「地爪ケアクリニックサロン」として、まずは我々が“ケア領域”での成功体験をつくる。アートサロンの価格競争から脱却すべく、「ケアでもこれだけの単価設定ができる」ということを、みせたいですね。
一方、お客さまにも「ケアだけのためにサロンに来るという、“身だしなみ文化”を醸成したい。そのためにも、全国に、サロンを展開していきたいです。
SALON DATA
-
地爪ケアクリニックサロン 代々木
- アクセス
- JR「代々木駅」より徒歩3分
- 創業年
- 2020年
- 店舗数
- 4店舗(2022年6月現在)
- 設備
- 2席
- スタッフ数
- 7名