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第2章リピーターが約9割を占める秘訣

「仕事は“対ヒト”。
人は周りの人達の笑顔で幸せになる」

「オトコネイル」の特長、ウリをお教えください。

そもそも従来のネイル業界には「男性のネイルケアができるネイリストはいない」と言える状況でした。ネイルサロンは女性のジェルネイルが中心で、美容室で言えばジェルはブリーチ、ケアは髪質改善みたいなもの。やることが違うので、ネイルサロンの勤務経験は役に立ちませんし、スクールでも女性客を前提にした技術を学びます。

そうした状況で、イチから男性のケアに関する独自のノウハウを構築していきました。甘皮や爪の厚さに関しても男性のほうが手ごわいので、プッシャーの使い方や力加減も女性相手とは異なります。男性は振動を嫌がる傾向にあるためファイリングの方法も変えるなど、工程の一つひとつをお客さまのご意見を聞きながら考えてきました。ですから「男性のネイルケア」そのものが独自のものであり、うちのウリ。現在は60分でひと通りのケアとハンドマッサージを行うコースが一番人気です(手の爪「健康コース」約60分:東京 7,150円、大阪 5,500円)。

お客さまはどんな方が多いでしょう?

当初は25歳~35歳くらいの方がいらっしゃるかと想定していたのですが、実際は40代、50代のビジネスマンが多いですね。仕事で成功されているエグゼクティブ層、富裕層の方が多い点も、想定以上でした。

メニューを拝見すると60分、75分、90分とコースがわかれていますね。時間制にした理由は?

男性は女性以上に時間にシビアだからです。仕事のスケジュールに合わせて動かれているので、5分のロスでもその後に響いてしまいます。よかれと思って予定より長めにハンドマッサージをしても、「時間を大事にしてくれ」と注意をいただきます。お客さまから「時間をかければ誰でもできる、それじゃあプロとは言えない」とご指摘いただいたことも。ですからスタッフには、「丁寧さは時間をかけることではなく、仕上がりで評価される」と教えています。

現在はリピーターの方が大半で、枠が足りなくて予約が受けられないほどだとか。お客さまはどの部分に価値を感じていると思いますか?

お客さまがおっしゃるには「人」であると、つまり接客を評価していただいています。ネイルは対面で行いますから、人との相性が大事。私もネイルサロンへ行きますが、作業と思って施術しているのか、相手を思ってしているのかって、なんとなくわかりますよね。また、お客さまから「接客=人がよければ、60分1万円でも払うよ」と言われたこともあります。ですから、うちでは接客を非常に重視しています。

お話を聞いていると男性用ネイルケアは、リラクゼーションに近いのかなと感じます。

そうですね。爪の先まで誰かに気を遣ってもらえる、というのが価値の一つでしょう。主要なお客さまである40歳以上の方は、役職も上がって上司にも部下にも、そして取引先や家庭でも気を遣う年代。自分が気遣ってもらえる場面ってなかなかないのでは?爪というのは、美容のなかでも優先順位が低い部分。そこに時間とお金をかけてくださるのは、「自分のことを気にかけて大事にしてもらえる空間」と思っていただけているのかもしれません。

満足してもらえる接客、サービスを提供するための教育体制について教えてください。

「中途半端な状態では表に出さない」というのが基本です。うまくできないうちにお客さまを担当させてはスタッフが自信をなくしますし、お客さまを練習台にしてはならないと考えています。人に喜ばれた対価としてお金をいただくのですから、「新人だけどがんばります!」というのは通用しません。

とはいえ時間をかけて教育すればいいわけでもありませんので、効率よく2~3週間の研修でサロンワークに出られるようにしています。教育は座学と実習があり、理念や心構え、技術や接客を学んでサロンワークに入るという流れです。

接客において若いスタッフとオトナ世代のお客さまの世代間ギャップで苦心している話をよく耳にします。「オトコネイル」では世代や性別のギャップに関する課題をどうクリアされていますか。

うちはネイリストの平均年齢が38歳で、一般的なネイルサロンよりは高めではあります。そのうえでコミュニケーションについては接客の研修に盛り込んで、「仕事ベースの男性はこう考える」っていうのを具体的に教えています。男性のほうが敬語とか細かい部分、プロとしての姿勢に厳しいですからね。

理念を浸透させるのは難しいと思うのですが、そのためにしていることは?

まず面接の時点でうちの理念や行動指針を伝えて、共感できる方に来てほしいと伝えています。「人は周りの人達の笑顔で幸せになる」が経営理念。お客さまに笑顔になっていただくことが事業の在り方であり、たまたまそのツールがうちではネイルであるだけというのが私の考え方。ネイリストは技術に走りがちですが、仕事は「対ヒト」であるということを新人研修ではもちろん、その後も伝え続けています。

採用時に、理念の共感以外に気を付けて見ている点はありますか。

採用は本当に難しいですよね。でも思うのは、結局長く働いてくれるのは「聞く耳を持つスタッフ 」ですね。経験や認定講師などの資格があっても、過去の成功体験を引きずっている人は成長しないし、接客も向上しません。うちの理念に共感できるか、あとは素直さ。ここを見るのが大事だなという考えに至りました。

新人研修以降の教育制度やキャリアプランはどのようにしているのでしょう。

キャリアパスを設定し、スタッフに共有しています。デビュー直後の新人から、新人を支えるメンター、教育係、店長など8段階にグレード分けをし、次の段階に上がるには何を身につければよいのか、各段階の給与の目安はどれくらいかを明示し、そのための研修も用意しています。

そのほかに教育というか組織運用の一環として、全スタッフが集まる全体ミーティングでは店舗運営や接客に関する考え方の共通認識を育んでいます。スタッフの教育状況についても、たとえば「誰々さんには来月グレードアップすることを目標にがんばってもらっています」ということを教育担当から発表してもらったり。

全体ミーティングは幹部だけではなく本当に全体、全スタッフが参加される場なんですね。

みんな会社の状況は知りたいはずですし、実際に会社を動かしているのはサロンのスタッフです。なので幹部だけではダメで、全員が現在の状況を把握しておくべき。たとえ店舗運営など話の内容を最初はすべて理解できなくても、そういう話をしておくことが重要です。

また、全体ミーティングではスタッフ間で感謝の気持ちを伝えて「ありがとうカード」を渡す場も設けています。みんなの前でほめられるとやっぱり嬉しいですよね?それに、自分以外の人がほめられる発表を聞くと「こういう行動をすると喜ばれるんだ」と学びになって、スタッフの成長にもつながります。「ありがとうカード」がもらえない、問題行動があるような子に対して個別に注意するのではなく、本人が未熟さに気づいて学ぶ姿勢になる環境においてあげるのです。環境は人を変えることができますから。

教育や組織運用について、かなり作り込まれている印象です。すべて坂下さんが考えたものですか。

何かを基に作ったものではないですが、最初から一気に体系化できたわけではありません。教育はどうしよう、ミーティングも必要…と少しずつ試しながら内容を固めてきました。ネイルケアの方法に関しては自分がモルモットになって(笑)、すべて現場の実践から引き上げるスタンスです。でも現在のものが決定版ということではなく、教育もキャリアパスも、これからも改善していくつもりです。

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