Vol.1/美容業界の常識は社会のヒジョーシキ!?
- サロンの労務知識
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サロンオーナー必見!
須多井 リスオ(スタイ リスオ)
小尾奈 サロヒコ(オオナ サロヒコ)
赤出 ミーコ(アカデ ミーコ)
秋田センセイ
ビューティー
人を雇ったら法人でも個人事業主でも加入しなければいけないのが「労働保険」の2つ(労災保険と雇用保険)ということは前回解説しました。なかでも「労災保険」は名前の通り労働災害が起こったときに、ケガなどをしたスタッフの治療費として支払われる保険のことで、「人をひとりでも、1日でも雇ったら、雇用形態にかかわらず必ず加入」が義務づけられています。つまり、バイトでもパートでも加入しなければならないということ。
もしまだだったら即刻加入しましょう。
労災保険が他の保険と異なるのは、保険料が全額事業主側の負担となることです。社会保障の他の保険は、事業主と被保険者であるスタッフの両方が保険料を負担します(負担率は保険の種類によって異なる)。
全額事業主負担といっても、他の保険料に比べれば大きな額ではなく、従業員ひとりに付きその従業員の年間給与の3/1000(0.3%)です。
*令和4年度(2022年4月~2023年3月)の美容業[その他の各種事業]の場合(料率は年度、業種によって異なる)。
例:年間給与が400万円のスタッフの場合
年間で12,000円
絶対ダメです。労災保険の保険料を事業主が全額負担するのは義務なので、スタッフの給与から差し引くことは違法行為です。
労災と認定された場合、治療費は全額労災保険から支払われます。
労災として認められる災害には大きく分けて2種類あり、「業務災害」と「通勤災害」があります。
【業務災害とは】
業務災害は、仕事中になんらかのケガなどをして治療が必要になった状態のことです。美容室でよくある業務災害は、はさみで手を切るケガです。
【通勤災害とは】
通勤災害とは、働く人が職場に通勤、または職場から自宅へ退勤途中に事故などで治療が必要になった状態のことです。ただし、帰宅途中で飲み屋に寄った後のケガや、通勤経路を著しくはずれて通勤・退勤した場合は通勤災害とは認められないケースがあります。
業務災害や通勤災害に当てはまるかは微妙な場合もあり、労災の認定は、スタッフがケガなどをした際に労働基準監督署に請求(申請)をすることで支給・不支給の判断がされます。請求書類の作成も、手続きするのも意外と面倒で労力がかかるため、資格を持った社会保険労務士や労働保険事務組合に委託する方が無難です。
労災の認定を受けられなかった場合の治療費は、通常の健康保険の適応となります。ですから、スタッフの健康保険の加入も重要になります。健康保険についてはVol.7で詳しく解説する予定です。
次号では、もうひとつの労働保険である「雇用保険」について解説します。
監修
特定社会保険労務士
秋田繁樹さん
プロフィール:
社会保険労務士法人 秋田国際人事総研代表。東京都社会保険労務士会所属。国内大手生命保険会社、大手企業のシステムインテグレーターなどを経て、独立開業。人事労務のスペシャリストとして、多店舗展開の美容室の労務管理や就業規則・社内規定などにも詳しく、多数の美容室の指導相談に当たっている。http://www.akita-sr.com/
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