第2章生産性アップの肝
「やり方を変えない経営者は、
はやく隠居してくれ、と思う」
この4年で、年商1億円が12億円にまで伸びたとか。急成長の秘訣は?
一言でいうと「マーケティング力を上げたから」です。fifthグループは、メンズ・レディース・ユニセックス、それぞれ得意なスタイルを特化させて、狙ったシェアを確実に取りにいく。同じヘアスタイルのオーダーが集中することで技術を平準化させ、誰でもできるように落とし込めば、デビューまでの期間を短くできる。
施術時間も短いです。パーマは2人体制で巻いて「カット・パーマで合計90分」。ちなみに僕は、60分で終えます。結果、生産性が上がり、離職も減りました。
パーマは習得するまで時間がかかるイメージがありますが?
従来は、そうだったかもしれません。でも、僕が教える理論はムダのないカット・パーマ技術なので、習得が速く、アシスタント1年目からパーマが巻けるようになります。お客さまにとっては、サロンでの時短も叶う。
技術って、教える人によって違いますし、全部が正解。だから、自分が教える技術に、いかに説得力を持たせるか?ここ数年、外部からのセミナー依頼も増え、そういった場に数多く出ることによって、「木村が言うなら正解なんだ」と思わせるようにしました。
なるほど。ほかに、売上を伸ばした秘訣はありますか?
平均客単価のアップに成功したことです。以前は8,000円台、いって9,000円だったのが、この2年で3,000円~4,000円アップし、平均客単価1万2,000円。
うちのメンズサロンの場合、パーマ比率は全体のうち75%以上、レディースサロンの場合ブリーチ比率は80%以上。たとえば「カット+波巻きスパイラルパーマ」の場合、初回1万4,000円、2回目以降は1万6,000円。
HOT PEPPER Beautyのスタイル写真・クーポンなどでも、得意のスタイルを徹底的に打ち出して、自然とそれをオーダーしたくなる導線をつくっています。
オペレーションに関しての工夫点は?
メンズの「fifth原宿」であれば波巻きスパイラル、「by fifth 原宿/表参道」はセンターパート、レディースの「cinq(サンク) 原宿/表参道」はデザインカラー・ベージュカラー・インナーカラーと、店舗ごとに得意なスタイルを特化させることで、オペレーションもシンプルに。ひとつのサロンでメンズ・レディースが混在すると、スタッフの能力によってはパンクしてしまうことがあるので。
うちは、担当スタイリストの手があいている限り、担当のお客さまにフルコミットします。「スタイリストがシャンプーに行かない」とかだと、アシスタントにシワ寄せがきてしまう。なので、スタイリスト全員に「シャンプーに行け」と言っています。あと、「アシスタントを“使う”っていう言い方はするな」とも。アシスタントはモノじゃない。昔、僕が上の人たちに対して違和感があったことは、僕もしないし、スタッフにもさせないようにしています。
「いままでうちの会社はこうだったから」って、やり方を変えない経営者は、相手の可処分時間を奪っていることになります。それだと、つぶれる可能性が高くなるし、スタッフがフリーに流れてしまう。そういう経営者には、「はやく隠居してくれ」と思いますね。美容業界のためにも。
木村さんは、常に「美容業界全体」のことを考えている印象です。
とにかく、美容師のマネーリテラシーを上げたいんです。美容師、特に業務委託の人って、月の自分の給料をショットで見ているだけで、1年後・3年後・5年後を見ていない。会社なら、ある程度保障されているけれど、歳をとってから、その先どうするの?って。
だから僕は日頃から、スタッフにお金の話をするんです。「毎月300万円の売上があれば、次の給料はこれくらい」とかではなく、「年間来店回数、年間単価を上げれば、月収ではなく年収がこれだけ上がっていく」と、将来までを見据えて、具体的な数値を持って説明しています。