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第2章常識を覆して生まれた、新しいサロン

「寛げないレセプションスペースに疑問を感じて、
サロンの入り口にカフェを作ろうと思ったんです。」

「SORA」は3名の共同経営。サロン立ち上げに際しては、どういった想いを込めたのでしょう。

「SORA」という店名は「人(相手)・心(自分)が、空(世界)の下でつながっている」というところから命名しました。共同経営って少し珍しいかもしれませんが、中身としてはスタンダードな美容室です。

「SORA」のウェブサイトを拝見すると「街とコラボする」というテーマで、サロンのある街のショップやカフェを舞台にしたヘアモデルの写真が掲載されています。面白い試みですね。

僕は全国各地でヘアスタイル写真の撮影ノウハウに関するセミナーをすることもあるんですが、あるときふと「これって何か変じゃない?」って思ったんですよ。「まわりが田んぼだらけの、のどかな街の美容室に、キメッキメの”東京っぽい写真“が本当にふさわしいのかな?」って。ヘアスタイル写真と、美容室の外の現実=街のギャップが激しすぎますよね。僕は「目の前にいるお客さん」と「その人が生活する街」をつなぐのが美容師の役割だと思う。それでもっと自然体で、街に溶け込むようなヘアスタイル提案を探った結果が「街とコラボする」というものだったんです。

この試みのおかげで美容室がある街のお店の人たちともつながりができて、そこから新しいお客さんも来てくれた。今はネット社会で遠くにいる人とのつながりを求めがちですよね。SNSなどを活用することはもちろん大切だけど、もっと身近な、フェイス・トゥ・フェイスのつながりも大事にすべきだなって思います。

まさに「人・心・空」がつながったわけですね。そして、「SORA」ブランドとは別に「SALON“アンド”」を2015年3月にオープンされています。こちらはまた違う雰囲気ですね。

「SALON“アンド”」はヘアサロンのほかにコーヒースタンドやギャラリースペースなどいろんなコンテンツを用意して、「人が集まる場所」をキーワードにしています。「SORA」はオープンから13年経って、当初から計画していた3店舗を展開することもできた。じゃあ次はどうしよう…と考えたとき、イチから新しいものを作りたいと思って手がけたのが「SALON“アンド”」です。

「SORA」はスタンダードな美容室で、それは時代に左右されるものではないし、13年という歴史を積み重ねてきたからこその深みもある。だけど今の自分から見て、「新しくない」って思ったんです。これは当たり前なことで、「SORA」の立ち上げ当時と流行は違うし、31歳の僕の考えと今が同じわけがないですよね。まぁ僕はすごく飽きっぽい性格で、次々と新しいことに挑戦したくなっちゃうだけなんですけどね。

「SALON“アンド”」は入り口がカフェスペースで、その奥にサロンという造りが特徴的です。コーヒーだけ飲みに来る人もいるのでは?

そういった利用もありますね。カフェを併設したのは、さっきのヘアスタイル写真と同様によくあるサロンのレセプションに疑問を感じたのが発端。ホテルのレセプションやロビースペースと違って、サロンのレセプションってちっとも寛げないですよね。そこに人がいるとスタッフは焦るし、早く到着したお客さんも「待たされている」って感じで落ち着かない。なんだか形だけカッコつけてる、変な場所なんですよ(笑)。

どちらかといえば昔ながらの理容室の方がレセプション機能はあると思う。実家の理容室でも、順番待ちのお客さんと、関係ない近所のおじさんが待合室でおしゃべりしているのが普通でした。そんな光景がどこか頭にあって、「SALON“アンド”」で表現したというのもあります。

  • 地域とのつながりを大切にする「SORA」。地元神社のお祭りでは、北原さんはじめスタッフ総出で、神輿の担ぎ手として毎年参加している

  • こぢんまりしたショップが並ぶ商店街に佇む「SALON“アンド”」。使用するコーヒー豆はサロンが位置する祐天寺のショップから仕入れている

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