イノベーターが
見ている未来
vol.90
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。
株式会社storage
代表取締役 倉崎 淳平さん (age.42)
「number(ナンバー)」「newi(ネウィ)」「JAM(ジャム)」など美容室を中心に、現在40店舗展開。DXに向けては自社システムやアプリの開発、さらにはSDGsにつながる商品開発やEC事業までも手がける。そこまでこだわる理由、そして実現したい世界とは?
・HP
https://storage-group.co.jp/
・倉崎さんInstagram
@jumpei_kurasaki_jj
第1章DXを実現するために
「毎日の“締め作業”も
ITで見える化・効率化」
現在、美容サロンを40店舗展開と、スピード感がありますね。そのほか、さまざまな事業を展開されているのが特徴です。
そうですね。美容系の商品開発から販売まで行うEC事業、基幹システム・自社アプリの開発・運用、グローバルに活躍する人材を創るための海外事業などを行っています。
そこまで手広くされているのは、なぜでしょう。
根底に、スタイリスト・アイデザイナー・ネイリスト・エステティシャンなどビューティシャンという職業に可能性を感じているのと、美容をDXすることへの可能性も感じているからです。
美容業界は、ほかの業界に比べて、まだまだ「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が進んでいません。DXって、人や企業によってさまざまな解釈があるとは思いますが、僕らは「デジタル革命=ITを使って見える化・効率化する」と、定義しています。
DXの取り組みは、どのようなものですか?
まず、2020年から運用している「STORAGE CHANNEL(ストレージチャンネル)」という自社アプリ。これは、店舗数やメンバーが増えていくなか、効率的に情報共有ができたらいいな、と思ったことがきっかけです。
たとえば、定期スケジュールやメディア掲載といった会社からのお知らせ、各店の新メンバー紹介、毎月の店舗・個人売上報告、カット動画やマニュアルの格納、店長やマネージャーに直接言いづらいことを相談できるホットラインなどがあります。
正社員・業務委託に関わらず、すべてのメンバーが、いつでも気軽にスマホで見ることができる。僕も、「年始の挨拶」などメッセージを送ることがあります。
かなり充実した内容ですね。
そうですね。うちはマーケティングや人材教育、採用など、あらゆる分野で専門のチームを置いているのも特徴です。「STORAGE CHANNEL」に関しても、専門のチームが開封率などをチェックして、毎月のミーティングで振り返り、改善を繰り返しています。
情報の発信・格納場所を一元化したことによって、運営側・受け手側の作業時間が減り、情報取得の効率化につながりました。
あと、情報伝達の機会が増えて、コミュニケーションの密度が濃くなったように思います。初めて会ったメンバーやしばらく会ってないメンバー、地域が離れているメンバーでも、共通の情報を持っているので。
なるほど。そのほか、DXの取り組みはありますか?
課題に感じていたのが、サロンでの「締め作業」です。毎日時間を使いますし、ミスが起こりがちでした。うちはスタイリストもアシスタントも完全フレックスですが、この作業が嫌で、遅番の時間帯をNGとするメンバーもいて…。そこで「DCS(デイリークローズシステム)」を、2020年12月から運用しています。
これは、各スタイリストが一日の売上と入客数(各、指名・フリー別々に)、お直し金額、店販売上など、会計処理したデータをDCSにいれる→店舗の担当者がDCS上で必要なデータを抽出→即、経理に情報が届くので、経理側で必要なデータを適切な状態に変換して排出する、といったシステムです。
その複雑なシステムを、自社で開発されたというのは、すごいですね。
ありがとうございます。うちのメンバーが優秀なので(笑)。
それまでは、計算が合わないと30分以上かかったことも…。今は、各スタイリストの作業は、ものの5分。最終で締め作業をする担当も、1時間かかっていたのが、10分以下に短縮されました。手作業がなくなったので、ミスも大幅に減りましたね。
スタイリストは、より業務に専念できますし、運営サイドとしても一人ひとりの稼働が増えたことで、全体の売上が伸びました。
待っていてはダメ、ないならつくる!
サロンを軸にDX×SDGsに挑むワケ。