第2章コアバリューでV字回復
「増収・増益のウラにある
コアバリューという見えない力」
コロナ禍においても、業績が好調とうかがいました。
原価高騰の波は来て、セール回数・特需売上もない状態でしたが、2022年は過去最高である94億9,000万円でした。
創業から25年。ずっと順調にきましたか?
いえ、2014年から3期連続、減収・減益を味わったことがあります。2016年に僕が代表に就任したタイミングで、「コアバリュー=企業文化」をより大切にしました。そこからV字回復し、現在まで増収・増益を続けています。「コアバリュー」という目には見えない力を、実感しています。
最初に取り組んだのは、「自分たち=TATらしさを取り戻すこと」。全社員にアンケートをとって、「なぜTATに入ってくれたのか?」「TATのどこが好きか?」「TATが大切にしていることは、なんだと思う?」の3問を聞きました。その後、当時の幹部で60時間ミーティングして、いまのコアバリューができたんです。
まさに「TATらしさ」をあらわしている、コアバリューです。TATの方とは何人もお会いしたことがありますが、みなさん明るく、仕事に対しても非常に前向きですよね。
ほんまですか?それは、うれしいです!外部の方から「何かTATさんは雰囲気がいいですね」と、よく言っていただけます。その“何か”っていうのが、これまた説明しづらい“空気感”なんです。それが、僕たちの最大の強みだと思っています。
逆に、「TATらしさ」を発揮できないルールや制度がないか、常に見直しています。昔は、「あだ名で呼ぶのはダメ」「ジーパンNG」とかいう決まりもあったんですが、廃止しました。
ちなみに、来年(2024年)1月から「役職制度」をなくす予定です。うちのバリューに、ヒエラルキー(階級制)は、合わないと思ったからです。
大きなチャレンジですが、不安はありませんか?
もちろん、外部からみたときの責任の所在など、考えるべきことはあるので、いま実証実験中です。
もし、うまくいかなかったら戻ればいいんです。うまくいけば共有して、みんなでマネする。新しいことをするときに「後戻りできない」と慎重になりすぎてしまう人もいますが、ほとんどのことって、やり直せると思うんです。
だから、僕はメンバーからあがってきた提案に対して、危険なこと以外は「NO」と言わない。「やってみたら?」と。TATでは、まわりの人も応援してくれる風土があるし、たとえ失敗しても「ナイストライ!」と言います。そうすれば、次の打席でもバットを振りやすいので。
それが、「自分たち=TATらしくいられる」ことにつながり、関係の質がよくなる。そうすると、思考・行動の質もよくなり、いま以上にいい結果が出せるようになると考えています。
コアバリューや経営指針をつくっても、なかなか浸透しない場合もあります。TATでは、どのように醸成していますか?
古いと思われるかもしれませんが、朝礼は毎日やっています。そこで、TATのコアバリュー・理念・クレドから抜粋して、「今日はこれを意識していきましょう」と話していますね。
経営指針書も、2006年に完成させてから毎年見直して、進化を続けています。一年に一度、「MOKbook(モックブック)」という名前で、デジタルで全員に配布するんです。コロナ禍の前は、ホテルのホールを貸し切って経営指針発表会「MOKfes(モックフェス)」を開催していました。ここ数年はオンラインで行いましたが、来年(2024年)は、リアルとオンラインでのハイブリッド開催を予定しているんです。
TATさんの社内イベントは、盛り上がりそうですね。
はい、みんなで楽しく盛り上げます。だけど、真剣にやる。目標と振り返り、クレド総選挙などの表彰もあります。みんながんばっているから、コメントも感動的で…。
最近は「MOKfes」ですら、僕の手を離れています。みんなの自発性が、高すぎて(笑)。
素晴らしいですね。自発性が生まれるのは、なぜだと思いますか?
TATのキーワードのひとつに、「お役立ち」という言葉があります。自分の喜びより、他者に喜んでもらうことを優先する文化が、会社全体に浸透しているからではないでしょうか。誰かが困っていたら、必ず誰かが助けに行くような…。
取引先に対しても、社内のスタッフ同士でも、仕事を通して「人の役に立つ喜び」を実感できているのだと思います。