第3章長く続くブランドとは
「フィロソフィーを持ったブランドは
絶対に、値崩れすることがない」
今後、「HEAVENS」をどのようにしていきたいと考えていますか?
「HEAVENS」をどうしたいとか、 自分の仕事をどうしたいっていうのは、考えていても、その通りにはならないと思うんです。時代の変化もあるので、アンテナを張りながら、判断していけたらいいんじゃないかな。
あとは、スタッフである、“彼らがどうしたいか”。それを大事にしています。
設立から、今年(2024年)で31年目。「HEAVENS」というブランドを、どのように思っていますか?
僕は毎朝、表参道まで電車で通勤しています。駅からサロンまで、ハイブランドの店舗が並んでいますよね。この3月に表参道のCHANELはリニューアルで新しくなったりして、うまいこと変化しているなと感じるブランドもあれば、最近どうなんだろう…というブランドもある。
伝統があって、スタンダードな価値があり、フィロソフィーを持っている…例えばCHANELとかLOUIS VUITTONやHERMESって別格ですよね。絶対に、値崩れすることがない。
それが、僕らにとってもひとつの憧れです。“ブランド”って簡単に言ってしまうけど、簡単になれるものじゃないからね。取材でそう言ってもらうこともありますが、自分たちで言うのはおこがましいし、まだまだという気持ちもあります。
変化が激しい美容業界にあって、30年以上続くというのは、すごいことです。
僕だけが、ガムシャラにやってもブランドにはならない。うちはスタッフがコンテストや業界誌で活躍していたりと、おのおのに、いろんな存在価値を持っています。それを、みなさんが“ブランド”だと受けとめて初めて、真のブランドになれる気がします。
そのように、スタッフの方がスターになれるのは、どのような教育からでしょうか?
「技術は教えることができても、センスを教えるのは難しい」ってよく言いますよね。僕は、“感覚の物差し”を伝えることを大事にしています。 3つの柱があって、それは「似合う」「美しい」「新しい」。
「似合う」は、その人に似合っているということだけど、本当にできている人って少ないのでは?ヘアスタイルだけではなくて、色の入り方が似合っているかとか、いろんな要素があるので。難しいからこそ、ずっと求めなきゃいけない。僕のなかではエネルギーの元になっています。
「美しい」は、髪の毛がきれいであることは前提で、ボブとかレイヤーとかカテゴリーごとに“これは美しい”というものが存在します。
「新しい」というのは、世の中にとっても、その人にとっても、自分にとっても、新しいこと。
これらを、言葉だけじゃなくて“意識として共有”することを、教育に入れています。親のしつけと同じで、繰り返すしかない。最初にお話した、朝礼で毎日のように掃除や片付けのことを伝えているのも、そういうことですね。
基準をきちんと伝承し、教える人を育てるといったところが、うまく回っている秘訣だと感じました。
スタッフが、そういう人に育ってきたというか、“育ってくれた”ことが、すごくありがたいですよね。 僕と同じような感覚で、決断や判断をする人たちに恵まれた。どんなに天才だったとしても、一人でできることは限られている。理解して、協力してくれる人が、まわりにどれだけいるか。「HEAVENS」が長く続けてこられた根底に、それがあると思います。
小松さんについてたずねると、こんな答えが返ってきた。
『自分の親より一回り上なので、親から聞いた話とは、また違うことを知る毎日です。
サロンワークでのお客さまへの接し方、朝礼でおすすめしてくれる本や写真展。私は、そこから影響を受けていることが多くて…。小松さんはいつも新しいものを見ていて、私たちが知らない世界を教えてくれるんです。』
31年目に突入した「HEAVENS」。常に新しいものを取り入れていることこそ、ブランドたるゆえん。“感覚”を引き継ぎ、そのDNAを武器に、今後も進化を続けていくのだろう。