第2章トップダウンは一切なし!?
「世代の違いを、どこまで許容できるか。
そのキャパシティが大事」
現在4店舗展開されています。スタッフの方は何名くらいですか?
小野●4店舗合計で、スタッフは約100名です。創業当時、「100名くらいのデザイナー集団をつくろう」と八木岡と決めていたので、今後はより発展的にしていきたいと考えています。
Z世代スタッフの育成に悩むオーナーも多いですが、DaBさんで工夫していることなどは、ありますか?
八木岡●「いまの世代はこうだから、こういう教育をしよう」というのはないですね。
「僕らが若い時とは違う」というのは、わかっている。昔のように“怒る”ことはいけないし。正直、自分の好みではない志向もある。でも、「理解できない」ということはない。だから、「僕も変わらなきゃ」というのは常にあります。
小野●世代の違いを容認できる、キャパシティが大事だと思います。経営者としての許容ですね。さらに各店舗における現場の長も、僕らと同じ理解なので、日頃サロンで年齢差によるギャップを感じる空気はないです。
八木岡●DaBには大人世代のお客さまもいますが、新規のお客さまの多くはZ世代。ヘアスタイル、生き方…それらをどう素敵にするかが、美容師の仕事。
紹介で、中学生や高校生のお客さまも来てくれます。僕のお客さまは、本来“お任せ”のみ。でも、いまの子はスマホで希望のスタイルを美容師に見せることがコミュニケーションの手段になっているから、そこは合わせます。
若い世代のお客さまがサロンに入り続けているから、ほかの職業の方より、その世代への理解が深まる気がします。だから、寛容になれるんじゃないかな。
先ほど、八木岡さんとスタッフの方が話しているのをお見かけしましたが、フラットな関係性であることが伝わってきました。八木岡さんほどの方が相手だと、もっと萎縮してしまうのかなと思っていたので、意外でした。
八木岡●社長と思っていないんじゃないかな(笑)。昭和のような関係性ではないですね。
小野●八木岡は普段、声を荒げることも一切ないです。昔はこわい時もありましたが(笑)。
スタッフの方とのコミュニケーションで、気をつけている点はありますか?
小野●月に一回、幹部・店長・副店長による会議を設けています。そこで価値観や方法論をすり合わせる。自分たちが意見を出し合って導き出した答えだから、言葉に厚みが出るのでしょう。彼らから現場スタッフに伝える際も、納得感を持って落とし込めているように思います。
トップダウンで何かを決めるというのは、ここ20年、ほぼないですね。
なかなかできることでは、ないと思います。
ちなみに、求人応募はどのくらいありますか?
小野●ピーク時は、年間600~700名の応募がありましたが、ここ数年は80~100名くらい。そのうち、毎年約20名を採用しています。
恵まれた応募状況ですね。みなさん、DaBのどんなところに魅力を感じているようですか?
八木岡●もともと、お客として来てくれていたスタッフが多いですね。DaBのデザインや雰囲気に惹かれて、それらを身につけたいと。本人がきちんとサロンを知ったうえでDaBに来ており、サロン側もDaBに合った人材を採用できているからか、離職も少ない。
教育の部分で、意識していることは?
小野●八木岡や山田、幹部がやっている仕事を、臆せずやれる。それを会社が認める勇気が大切だと思います。Z世代うんぬんではなく、目の前のスタッフが何をしたいと思っているのかを汲み取り、どうすればそこを伸ばせるか。また、心配ごとがあれば、それを取り払う相談役でありたいですね。
美容師の仕事は一人では完結しないものなので、みんなで日々ディスカッションできる雰囲気づくりを心がけています。あとは、時に“人にゆだねる”ことも、マネジメントかなと。
こちらも教育につながると思いますが、小野さんはアシスタントによるヘアショー「JUNIOR TOKYO」発起人のお一人。僕も毎年拝見していますが、クオリティの高さに驚きます。
小野●今年で7回目になりますが(2024年10月22日開催)、14サロンが参画しています。
自分たちでショーをつくりあげて、当日の集客までを行う。そこには、各サロンのコンセプトやクリエイティブも入ってくる。その過程も“教育”になると感じています。
八木岡●人生の豊かさには、“衝撃”が大事。たとえば、一年の食事って1,000回くらいある。普通においしかったとしても、記憶に残るかといったら、ほとんど残らないですよね。
「JUNIOR TOKYO」に出演することは、一生の中で見ても強烈な記憶として残るはず。デザイナーやクリエイターにとって、原動力になるのでは?
小野●「ヘアデザインを勉強しましょう」と言うより、自分で体験したプロセスのほうが衝撃として大きい。「このマインドが新しいものをつくるんだ!」という気づきがあると、さらなる高みを目指すようになります。