第2章愚直に続けたSNS&独自の教育法
「継続するって大変だけど大事。
ある日、24時間で50万回再生!」

コロナ禍で大変な状況のなか、取り組んだことは?
TikTok・Instagram・YouTubeなどのSNSに注力するように。英語でお客さまのカウンセリングをして、施術内容を決めて、カットやカラーをして仕上げるまでを、英語と日本語の字幕を付けた動画にして投稿しました。
当初は、再生数もフォロワーも全然伸びなかったんです。でも、コロナ禍はほかにできることがないので、試行錯誤しながらやり続けるしかない。継続するって大変だけど大事なこと。年間450本くらいのペースで制作しました。
あまり反応がないと、心が折れてしまいそうです。
でも、ブランドを確立するにはコンテンツが必要です。誰かに頼む資金もないから、自分たちでやるしかなかった。どうしたらバズるのか、動画の構成・撮り方をひたすら考えて制作。最初は教材用としてノーカットの動画にしていたのを、施術のビフォー・アフターの比率を9:1くらいにして、テンポがいい90秒のショート動画に。そうしたら、ある日初めてバズったんです。24時間で50万回再生され、その後もぐんぐん伸びていきました。SNSを本格的に始めてから、2年半経ってからのことです。
最初にバズって世界中に僕らの動画が広まったのが2022年の8月で、外国人が来日できるようにコロナ禍の入国制限が解除されたのが、その年の10月。それまでは会社を閉める瀬戸際まで来ていたので、タイミングのよさに「神さまっているんだな」と思ったくらいです(笑)。
やり続けたことも、すごいです。
どんな点が、海外の方にウケたと思いますか?
動画はお客さまが「こんなヘアスタイルにしたい」という見本の画像を持ってきて、じゃあこう施術していきましょう…とカウンセリングをして、実際に希望通りに仕上げる内容。それ自体が、外国の方たちの目を引いたのだと思います。
外国の美容師って、お客さまから「こうしたい」とオーダーがあったとしても、自分がやりやすいもの、自分ができる範囲の施術に持っていってしまう。もちろん日本人でもすべての美容師ができるわけではないけれど、外国はその傾向がより顕著ですね。
お客さまの希望通りに仕上げるところが、注目された?
そうです。ASSORTの教育は、「お客さまが持ってきた写真のスタイルを再現できること」に特化しています。たとえばスタイリストを集めて、「これと同じ色を再現してください」とヘアカラーをした写真を見せる。それでみんな一斉にカラー剤を配合して染めて、できたものを見せ合う。カットも同様に、見本と同じように切って、仕上がりを評価し合い、その方法を学ぶ。そういうことを繰り返すと、見る目も腕も養われていきます。
そのように、海外でも通用する美容師の育成を徹底的に行っています。海外のサロンは美容師への教育がほぼなくて、技術セミナーも正直たいした内容じゃないのに数千ドルしたりする。
うちのように日本の技術をしっかりと学べる、しかも働きながら教わることができるサロンは希少です。だから海外店舗でローカル採用の求人をすると、応募がたくさん来るんです。技術教育に力を入れていることが、集客面でも求人面でも、強みになっています。
いい循環が、まわっているんですね。
僕たちは「日本と海外のハイブリッド型サロン」を目指しています。接客や技術といった体験価値は、日本ならではの素晴らしい文化。ただ日本は、アプリが使いにくかったりするようにソフトウェア面やDXは弱い。そこは、海外のほうが優れているように思います。
なので、日本と海外の強みを融合して、世界に発信・提供できるサロンにしたいですね。
リアルな接客風景が垣間見える、ASSORT のTikTok。フォロワー数は87万9,000人(2025年3月時点)。字幕付きなので、美容室ならではの英会話の勉強になると、ほかのサロンからも好評だ
ASSORTのYouTubeチャンネル登録者数は、11万9,000人(2025年3月時点)。シルバーの盾は10万人を超えた証。その数は全体の上位1%程度といわれる