先輩女性インタビュー
サロンで働く先輩女性たち
長く活躍しているさまざまな女性スタッフに、どんなキャリアを歩んできたのかインタビューしていきます。
自分なりの「なりたい私」を見つけてください!
vol.60
復帰後、指名のお客さまが5割失客。
1年かけて完全復活させたママの取り組みとは?
水戸駅から車で15分ほどの大きな道路に面したサロン「ヘアワークフラックス」は、オーナー以外は全員女性スタッフ。誰かが結婚し、妊娠、出産をしている環境が珍しくないのでスタッフ同士のサポート態勢は万全。菊池さんも産休前まですべて順調にすすんでいた。そんな菊池さんが、スタイリスト人生でもっとも心が折れそうになったのが、産休明けの失客の酷さだった。菊池さんがそんな窮地をどう乗り越え、今の輝きを取り戻したのか伺いました。
Staff Data
菊池みの里(きくちみのり)さん 41歳
スタイリスト
ヘアワークフラックス勤務。
スタイリスト歴17年、ヘアワークフラックスには14年勤務。既婚、現在9歳になる男の子がいる。
現在、週5日間、9時45分から17時のパート勤務、完全歩合制で働いている。
菊池さんのLife History
★…ターニングポイント
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17歳
高校3年の時、通信制の美容専門学校で学び、高校卒業後もインターンとして働きながら2年で卒業する。
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18歳
地元(水戸)が好きなので、地元での就職を希望。比較的小規模でやっているサロンに就職。
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22歳
大規模のサロンへ転職し、高橋氏(現サロンオーナー)と知り合う。
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24歳
高橋氏が独立準備のため退社。自分はスタイリストデビューして意欲的に働く一方で、個人経営のサロンで丁寧な仕事をしたいという気持ちが大きくなっていく。
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27歳
★高橋氏が新規サロンを設立。スタッフとして誘われたのをきっかけに、「ヘアワークフラックス」に入社を決める。
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30歳
スタイリストとして働きながら、アシスタントの教育にも携わる。以前よりお付き合いしていた男性と結婚。
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32歳
4月に男の子を出産。8月には週1日(日曜日)、10時~17時までの勤務に就く。自身の体調を崩すことが多かったがスタッフにフォローしてもらい乗り切る。
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33歳
4月に保育園に入るのをきっかけに、本格復帰。週4日、10時~17時までのパート勤務に。
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41歳~
35歳から現在までは週5日勤務に。完全歩合制なので、予約が入っていない時は早く帰宅でき、職場と家庭を両立することが可能に。
菊池さんへのインタビュー
Q. スタイリストとして初めての挫折が、出産後にやってきた?
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A. 出産後、復帰したら「お客さまがまったく戻ってこない」という状況に
正直、心が折れそうになりました。出産前は順調にキャリアを積み、目標となる入客数、売り上げも達成できるように。仕事にやりがいを感じていました。
ところが出産から1年が過ぎ、本格復帰のために勤務日程を週1日から4日に増やしたところ、入客が激減していたのです。この状況が続いた時は、さすがに心が折れそうになりました。心のどこかでお客さまは戻ってきてくれるもの、と過信していたんです。
そこで、初心に戻り、一度もお顔を見せないお客さまにひたすらお手紙を書きました。するとひとり、ふたりと来店者が増え、1年後にはほとんどの方が戻ってきてくれたのです。ただ待っていてはだめだと、新規のお客さまにもマメにお手紙を出す様になったのはこの頃からです。
このことをきっかけに、お客さまとのつながりについて真剣に向き合うことに。技術の向上だけでなく、人間関係を構築していくことの大切さに気付かされ、私自身が成長した1年だったと思います。
Q. スタッフが全員女性の場合、妊娠、出産への理解は深いもの?
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A. “語らずも通ずる”部分が多々あるのは事実。
その一方で、”親しき仲にも礼儀あり”です現在も、10人中7人は既婚者で、ママは5人、妊娠中が1名いるという状況。誰かが子どもが急に熱を出した、といって遅刻しても、まわりが「子どもってそうだよね」「うちもそうよ」という感覚なので、フォロー態勢は万全。遅刻したママスタッフも罪悪感が薄れます。その一方で、フォローしてもらった時は、感謝の気持ちを伝えて、おやつにお菓子をおすそ分けしたりして、ちょっとしたお礼をするように心がけています。「持ちつ持たれつ、だけれども礼儀をもって接する」という気持ちが自然にスタッフ間にあるのは心地いいですね。
私の場合はまわりの状況が見えすぎて遠慮してしまうことがありました。例えば、自分の結婚や妊娠のタイミングも、「今はふたりが妊娠中だから、私はもう少し後にしようかな」とか(笑)。
もちろん、誰もそんなことは口にしませんが、今までのようすを振り返ると、普段からみんながほんの少し気を遣いながら、うまく調整しているように思えるんです。
Q. 子どもが9歳になってもパート契約を継続。
正社員になってもっと上へ、という気持ちは?-
A. 今が私にとって理想の満ち足りた生活。
“もっと”というよりは”ずっと”を目指したい今、パート契約なので、朝は正社員の方が9時出社のところ、9時45分にしていただいているし、給料も歩合制なので予約のお客さまが終われば、早く帰ることができます。私が留守の時は、息子は主人のおばあちゃんが見てくれていますし、家族の協力がなければ、こうして美容師の仕事も続けられなかったでしょう。
今の職場がありがたいことに家庭との両立ができる環境なので、キャリアアップというよりは、「今のペースを守って、自分を指名してくれるお客さまのケアを丁寧にしていきたい」というのが本音ですね。名声を求める働き方もありますが、私はどちらかといえば満ち足りた生活を選ぶ、という感じです。
母も実家で美容師をやっていますが、なじみのお客さんとのおしゃべりも楽しそうで、張り合いを感じてやっています。私の目標は、”もっと”ではなく”ずっと”なんです。おばあちゃんになってもずっとハサミを握って、いつまでも大好きなスタイリストの仕事を続けていくことですね。
若手女性スタッフへ、メッセージをお願いします!
女性にとって家庭と仕事の両立は選択の連続です。自分の選んだ道が正しいか、間違っているかなんて正直誰にもわかりません。でも、確実に言えることは、「この仕事が本当に好きかどうか」を大切にして欲しいということです。迷わず「好き」と答えるなら、続ける方法を考える価値があります。私は、産休中に復帰する日を思い描くと、ワクワクしました。そして、実際に復帰後の仕事の方が楽しいと思えるようになりました。だから、「美容師の仕事が好き」と答えられるのなら、「辞める」という選択は少し横に置いて、「続ける」という選択を。環境が整っているサロンやサポートしてくれる人は必ず存在しますよ。
Salon Data
ヘアワークフラックス
- アクセス
- JR水戸駅から車、またはバスで15分
- 創業年
- 2002年
- 設備
- 12席
- スタッフ数
- 10名(うちスタイリスト7名、アシスタント3名)