第3章スタッフに残したい未来とは?
「自分で範囲を限定するのはもったいない。
勉強して挑戦すれば、ネイルはもっとおもしろくなる。」
近年はプライベートサロンやチェーン店など多くのネイルサロンができています。現在のネイル業界を見て、どう思いますか。
当たり前ですが、「ネイルサロンはネイルをするところ」です。でも最近は「うちはジェルネイルだけ」というように、自ら範囲を狭めているサロンが多い気がします。ケアもジェルもスカルプも3Dも、全部できてこそネイリストであって、ジェルしかできないのであれば、たとえば「ジェリスト」などの造語をつくった方が、お客さまもわかりやすいと思うんです。少なくともうちのサロンでは全部できる態勢を整えておいて、私たち施術者が選ぶのではなく、お客さまに選んでもらえるようにしたいという考えでやっています。
何かに特化するのもいいけれど、自分でできる範囲を限定することはマーケットを狭めることになって、もったいない。日本人の基本的技術力は他国に比べても高い。だからこそもっと技術を磨いて個性を出したら、日本のネイル業界はおもしろくなると思います。
今後、計画していることは?
現在3店舗ありますが、4店舗目は海外進出が目標。2017年にタイにオープンしたいと考えています。TVのお仕事で出会った方とのご縁でタイとのつながりができたことが始まりですが、相手を思いやる心や助け合いの精神が根付いたタイ人の気質がとてもいいなと思って。また、タイの富裕層にはネイルを楽しむ文化も浸透しているので、出店してもやっていけると考えています。
現在は東京に3店舗。次の舞台として海外を選んだのはなぜですか。
日本は人口が減少していきますし、極端な話をすると天変地異などがあったら働けなくなるかもしれない。そんな最悪の状況におちいったとき、国内のほかの都市部に出店しているよりも、海外に活躍の場があるほうが安心です。何が起きてもスタッフたちが働いて食べていける場所を確保することが、海外進出の理由です。海外で事業を行うのはいろいろと面倒もありますが、だからこそおもしろいとも考えています。
サロン立ち上げから法人化、雇用体制の整備に海外進出の準備…。新しいチャレンジをすることに、不安はないですか?
だって私はリーダーですから。ついてくる子たちは不安に感じてもいいけれど、リーダーがためらったり不安になっていたら、会社全体の元気がなくなっちゃうからダメでしょう。ひとりのときは落ち込むこともありますが、一歩外へ出たらマイナスなこともプラスにとらえるように意識しています。
高校時代は将来の明確な夢を描けなかった私でも、チャレンジを続けてきたことで現在のように評価していただくことができました。だから挑戦をしていけば誰にでも、そうしたきっかけはきっと訪れるはず。そして少し努力して一歩踏み出せば、自分の人生をつくっていける。それって、とても楽しいことだと思うんです。
「そんなのムリだ」といわれるとかえってヤル気になるんです。昔、誰かに「美容業なんて稼げない」といわれたんですが「だったら稼げるサロンを実現してみせる!」と思ったし、「ネイリストと経営者の二足のわらじは履けないよ」といわれたときも「私は片足ずつ履けちゃうんです」って言い返して実際にやってきました。
こうしてやってこられたのは私を支えてくれるスタッフがいるおかげ。そして、自分を求めてくださるお客さまがいることが励みとなり、不安を押しのけるパワーになっています。
現在もお忙しい合間をぬってサロンワークを続けられていますが、10年後も現場に出ていると思いますか?また、10年後に描く「Jill&Lovers」の姿は?
私自身は経営だけには絞らずに、サロンワークはずっと続けます。それが私の楽しみであり、存在価値ですから。サロン自体は「離島のリゾートホテル」みたいな存在になることが理想です。ホテルは全国各地にあるけれど、その中でも特別な存在感があって、遠くても高くてもわざわざ足を運びたくなる。そして訪れたお客さまから喜んでいただける。そんなサロンをスタッフたちに残していきたいと思っています。
計13名のスタッフのお弁当をつくっていること。
それを朝、3店舗にできるだけ自分の足で届けています。
スープや煮込みものは、前夜に仕込んで味をなじませる。
接客業でニンニクを使えないから他のものでうま味を出す工夫をする。
さぞかし大変かと思いきや、
「料理をつくるときは“無”になれて楽しい。
お弁当をつくるようになってから、カゼをひくスタッフもいなくなりました!」
と笑います。
インタビューでは、「リーダーとして」という言葉が何度も出てきました。
経営者として頼りになるのはもちろん、時に母のようにも映る存在。
スタッフにとことん愛情を注ぐ神宮さんは、
「Jill&Lovers」という“家族”をつくりあげていました。