学ぶ。つながる。発信する。美容の未来を創る場所。
女性が活躍するサロン
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
MYA 竜王店
山梨県甲斐市
山梨県甲府市・甲斐市に5店舗を展開するトータルビューティーサロン「MYA(マヤ)」。紹介客が多いという話にうなずける、和やかで居心地のよいサロンです。創業時から女性スタッフを多く採用してきたこちらに、初のママスタッフが誕生したのは約2年前。希望を聞きながら環境を整えてきた結果、現在はママスタッフが8名に(産休・育休中の4名を含む)。続々とロールモデルを生み出す環境づくりの工夫と、その根底にある会社理念について、代表の佐々木さんに伺いました。
1取り組み
正社員の勤務形態は、週休2日の早番・遅番制が基本。ママスタッフに関しては、それぞれの希望に合わせた時短勤務を採用している。出勤日数や勤務時間に定型はなく、1日8時間の週5日勤務や1日6時間の週3日勤務など、人によりさまざまだ。給与は月給制で、基本給をベースにそれぞれの労働時間に応じて金額を設定している。
時短勤務を取り入れたのは約1年前。会社で初めてのママスタッフが、産休・育休期間を終えて復帰するタイミングで導入した。「女性が多い会社なので、妊娠してママになるスタッフはいましたが、みんな出産で辞めてしまっていました。そんな中、産後も続けたいと言ってくれるスタッフが初めて現れた。女性の人生にはいろいろな転機があると思います。それを乗り越えて、長く働き続けていける会社にしてあげたかったのです」と佐々木さん。
時短勤務を可能にしたことで、「ママになっても働ける」という意識が広がり、他のスタッフが産後復帰を前向きに考えるように。また会社としても、この制度によってママネイリストなどの中途採用がしやすくなったという。
ママスタッフ第1号となったスタイリストの込山さん。「美容師として働く母を見て育ったので、出産で辞めるという考えはありませんでした」
2取り組み
技術講習や新しい薬剤の説明会、会社の全体会議などを行う際には、育休中のスタッフにも声を掛ける。参加を強いているわけではなく、「もし出られる状況であれば、顔を出して」という誘い程度だ。恒例のバーベキューイベントも同様で、子どもを連れて出席するスタッフもいる。
ママスタッフが産休・育休で休んでいる間に、店は変化する。「新しいスタッフが入ったり、新薬剤が使われるようになったり、1年休めば環境は様変わりします。知らないことが増えていくと、戻ってくる時のハードルが高くなってしまう。その不安を取り除くために、育休中のスタッフとも、こまめにコミュニケーションをとることを心がけています」(佐々木さん)。これに応じて育休スタッフが講習や説明会に参加することで、技術的なブランクと環境的なブランクの両方をフォローできる。実際にママスタッフからも、「育休中も会社とのつながりを感じられて心強かった」という声が上がっている。
全店を休みにして開催されるバーベキューイベントは、スタッフ同士の交流の場にもなっている
育休中だった込山さんも、子どもと一緒に参加した
3取り組み
年間売上に応じて、翌年の基本給が変動する歩合の制度を、全社員を対象に採用。働ける時間は限られていても、その間にどれだけのお客さまを満足させられるかで、翌年の収入が変わってくる。頑張れば頑張るほど稼げる仕組みが、時短スタッフのモチベーションに。
「会社全体ではなく、自分の売上でお給料を上げることができるというのが、歩合制の魅力です。しかも美容師というのは、本当に必要とされれば、自分の時間に合わせてお客さまに来ていただくこともできる。だからこそ、時短勤務のスタッフも頑張り甲斐があると思います」と佐々木さん。特にママスタッフほど、「子どものために稼ぎたい」と意欲的に取り組む人が多いという。
「一般的な会社員の場合、自分のお給料を自分で上げるのは難しい。それができるのが、美容師のよさではないでしょうか」と佐々木さん
4取り組み
誕生月のスタッフを集めて行う食事会「バースデーサミット」を毎月開催。人生の目標を聞いたり、相談にのったりと、佐々木さん夫妻がスタッフとコミュニケーションをとる場になっている。5つある店舗に顔を出す際にも、一人ひとりへの声掛けを忘れない。スタッフみんなの会社の「代表」として、相談しやすい環境づくりを心がけている。
「うちは会社理念に『スタッフの幸せ』を掲げています。働くことは必要ですが、まずは自分自身の人生を大切にしてほしい。そのために、『自分にとっての幸せとは何か?』『それを実現するために何をしたらいいのか?』を考えなければいけません。そこで1年に1回、人生の目標とライフプランを書いて提出してもらっているんです。スタッフの目標が分かれば、会社としてサポートできることも見えてきます」と佐々木さん。
密なコミュニケーションを通して、会社理念はスタッフたちに浸透。子育てと両立するための働き方や、独立の夢などを相談できる、風通しのよい環境が実現されている。スタッフの要望や提案を直に聞き出せるため、会社は対策をとりやすいというメリットがある。
「いつか美容師の母と一緒に働きたい」という夢を持つ込山さん。その実現に向けて、さまざまなアドバイスを送っている
佐々木さん夫妻が誕生月のスタッフを集めてお祝いする「バースデーサミット」
代表取締役社長の佐々木正史さん。横浜で育ち、渋谷の「国際文化理容美容専門学校」を卒業。鎌倉、山梨、横浜のサロン勤務を経て1996年に独立し、1999年「有限会社エム・ワイ・エー」を設立。2013年より理念経営に力を注ぐ。「夢や目標に向かって有言実行」がモットー
A. 2年前、初めて産後復帰の申し出を受けたことです。
お客さまの目線で考えると、50代、60代になって男女どちらの美容師に切ってもらいたいかというと、女性ですよね。長いつき合いで一緒に年を重ねてきた関係ならば、話は別ですが。そう考えると、女性スタッフが長く働ける環境でなければ、会社も長くは続かない。会社存続のために労働環境を変えていかなければとは、以前から考えていました。
うちは女性スタッフの多い会社ですが、スタッフたちは出産後も働き続けるイメージを持っていなかった。ロールモデルがいないと、ママさん美容師になるのは難しいことだと思います。そんな中、2年前に2人のスタッフが妊娠して、産後復帰を名乗り出てくれました。これが、ママさんスタッフのための環境づくりを始めたきっかけです。女性は子どもができると、よりパワフルに働くようになります。その活力が、店にも好影響を与えてくれていると思います。
A. ママさんサロンの開設やママ幹部の登用などを考えています。
これからさらにママさんスタッフが増えていくと思うので、ママさんサロンの開設を検討したいですね。日曜定休で利益をどう担保するか、考えてやっていきたいと思います。また、子育てが終わったママさんスタッフに対しては、幹部の提案もできるようにしたい。女性スタッフが子どもの成長に合わせたキャリアプランを描けるように、先々を見据えた環境づくりを進めていきたいと思います。
Salon Data
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