お客さまの「サードプレイス」をつくる、一歩踏み込んだ接客
Ysnicが掲げるサロンコンセプトは「サードプレイス」。髪を整えるだけの場所ではなく、忙しい日常から一歩離れ、安心して過ごせる場所を目指している。
接客で大切にするのは、お客さまを形式的に扱わず、自然に一歩踏み込んだ関係を築くこと。
髪の悩みだけでなく、日常のことも気軽に話せるような距離感を意識し、一人ひとりと長く付き合える関係を育てている。
店内も、開放感を持たせながら、照明などによって緩やかに空間を区切る設計に。
オープンな雰囲気の中でも個人の時間を保てる、日常とは少し異なる空間づくりを追求している。
データを毎日確認し、仮説と検証でページを改善
店長の大柿直生さんは、ホットペッパービューティーのデータをほぼ毎日確認している。
ページ全体の閲覧状況や前年との比較、クーポンの利用状況などを幅広く見ながら、改善できる部分を探っているという。
クーポンは、選択肢が多過ぎてお客さまが迷わないよう、数や表現を整理。利用数が少ないものは見直し、変更後の動きをデータで確かめる。
改善しても結果につながらない場合は、ホットペッパービューティーの営業担当にも相談しながら次の施策を考えている。
さらに、こだわりページではサロン全体の特徴だけでなく、スタイリスト一人ひとりの得意分野や個性を紹介。
数字を結果確認だけに使うのではなく、お客さまが本当に知りたい情報を考えるきっかけとし、次の改善につなげている。

マニュアルで縛らず、自ら考える力を育てる組織づくり
Ysnicには、接客を細かく規定したマニュアルがほとんどないという。
決められた型をなぞるのではなく、先輩の接客を間近で見たり、お客さまと接するなかで考えたりしながら、サロンが大切にする空気を身につけていく。
技術練習の時間は定期的に設けるものの、参加は本人の意思を尊重。休日や勤務時間も、希望に合わせて柔軟に選べる環境を整えている。
土日の休みや連休も取得しやすくし、仕事とプライベートを切り分けられる働き方を重視している。
一方、自由だからこそ、一人ひとりが責任を持って考えることが求められる。
数字や集客に関する情報は、スタッフにもわかりやすく共有する。ただし、そこから具体的な行動までを指示するのではなく、その情報をどう自分の仕事に活かすかはスタッフに委ね、自ら考えて動く力を育てている。
インタビュー

店長・大柿直生さん
1997年生まれ、徳島県出身。美容学校在学中の17歳からYsnicでアルバイトとして働き、卒業後に入社。アシスタント、スタイリストを経て店長に就任。現在は徳島でのサロンワークと店舗運営を中心に、スタッフ育成やホットペッパービューティーのページ改善にも取り組んでいる。
―大柿さんは、17歳からYsnicで働いているそうですね。
はい、高校生の頃にアルバイトとして働き始めました。専門学校を卒業した後はそのまま入社し、アシスタント、スタイリストを経て、現在は店長になりました。
東京で働いてみたいという気持ちはもともとありました。
Ysnicではオーナー同士が親交のある東京・表参道のサロンとつながりがあり、徳島のサロンでありながら、東京でも経験を積める環境があります。
そのため、東京に移り住むのではなく、以前は徳島で3週間、東京で1週間働くような形で、両方の環境を経験していました。
今は徳島の店舗を任されているのでこちらが中心ですが、情報交換も兼ねて年に数回は東京へ行っています。
―東京と徳島の両方で働くことで、どんなことを得られましたか。
東京はとにかく美容室の数が多く、第一線で活躍する美容師さんを間近で見られるので、モチベーションを高めやすい環境だと感じます。
一方、徳島には徳島の良さがあります。
東京で経験を積んだ後、こちらに戻ってくる美容師さんもいるため、そうした方をバックアップできる環境にもしていきたいと思っています。
両方を経験することで、それぞれの良い面や課題を見極められるのが、この仕組みの良さだと思います。
また、徳島から東京へ進学や転勤をされたお客さまを、東京のサロンで引き続き担当できることもあります。
環境が変わってもお客さまとの関係を続けられるのは、大きなメリットですね。

―サロンとして最大の強みはどこにあると考えていますか。
「サードプレイス」という雰囲気や接客が一番の強みだと思っています。
もちろん、技術は大前提として大切です。ただ、一定以上の技術を持つサロンが多いなかで、最終的な違いは、その人の好みやサロンで過ごす時間にも表れると思うんです。
だから、接客や空間づくりを大切にしていますね。
開放感はありながらも、照明によってエリアを緩やかに分けることで、大勢の中にいてもひとりの時間を保てるようにしています。非日常を感じられる空間を意識していますね。
技術だけではなく、スタッフとの会話やお店の雰囲気も含めて、来るとリラックスできる、安心できると感じてもらえること。それが、お客さまにYsnicへ来ていただく意味になればと思っています。
―接客では、具体的にどのような距離感を大切にしていますか。
良い意味で、お客さまを「お客さま」として扱い過ぎないことです。長く付き合ってきた大切な友人のように、自然に一歩踏み込める関係を目指しています。
髪のことだけでなく、日常のことや悩んでいることも話しやすい関係を築いていきたいですね。
地方では、新規のお客さまを次々と獲得するだけではなく、一人ひとりを大切にし、長く通っていただくことが特に重要だと思っています。
現在は、7割から8割ほどがリピーターのお客さまです。
スタイリストになったばかりのスタッフは新規のお客さまの割合が高くなりますが、長く担当しているスタイリストにはリピーターのお客さまが多く、一人ひとりを大切にしてきた結果が表れているのかなと感じます。
―スタッフごとに接客にも個性があるともうかがいました。サロンとしては、どのように統一感を作っていますか。
接客を細かくマニュアル化することは、あえてしていません。マニュアルがあると、お客さまに合わせるのではなく、マニュアルに合わせて決められた通りの接客になってしまうこともあると思うからです。
アシスタントとして先輩の施術をサポートし、お客さまとの会話や接し方を近くで見るなかで、サロンの雰囲気を感じ取ってもらうことを大切にしています。
技術については練習する機会を設けていますが、接客は自分で考えながら身につけてほしいと思っています。
何か注意が必要なことがあった時も、まず「どういう思いでその行動をしたのか」を聞くようにしています。
一概に注意するのではなく、相手の考えを聞いた上で、こちらが間違っている部分も含め、お互いに納得できるところを探すことが大切だと思っています。
―技術を学ぶ機会についても教えてください。
週に1回、月曜日の朝に技術練習ができる時間を設けています。
大きなテーマを毎回決めるのではなく、営業中に出てきた課題や、スタッフ自身が教えてほしいことを持ち寄り、必要に応じて僕たちがフォローします。
参加は基本的に自由です。無理に参加させるのではなく、本人の都合やプライベートも大切にしたいと思っています。それでも、ありがたいことにみんな参加してくれています。
―ホットペッパービューティーのこだわりページでは、スタイリスト一人ひとりを詳しく紹介されていますね。
お店の雰囲気や一般的なこだわりだけを書くのではなく、もう少し個人にフォーカスした方が、それぞれの個性や雰囲気が伝わると考えました。
予約する前に「この人はどんな人なのか」「どんな思いを持っているのか」がわかれば、サロンにより興味を持っていただけると思ったんです。
スタッフの得意分野は、基本的に本人の好みや志向をもとにしています。それをお店としてフォローし、それぞれの強みとして伸ばしていく考えです。
接客やサロンの空気は共有しながら、技術では一人ひとりの好きな分野を育てています。
こだわりページをスタイリスト紹介に変更した後は、ページ上の数字にも変化が見られました。改善の手応えを感じられましたね。
―サロンページの改善のために、データも活用しているとうかがいました。
僕はデータを見ることが好きなので、ほぼ毎日確認しています。
特定の数字だけではなく、ページ全体の閲覧状況や前年比、どのクーポンがどれぐらい利用されているかなど、全体を見るようにしています。
クーポンは出し過ぎると、お客さまが迷ってしまうと思っています。なるべく内容を簡潔にし、例えばメンズ向けなら「メンズ」という言葉を前に出すなど、誰のためのクーポンなのかがわかりやすいようにしています。
利用数が少ないクーポンは削除したり、内容を変えたりして、その後の動きを確認します。
まずは自分で仮説を立てて修正し、それでも改善しない場合は営業担当の方に相談しています。
せっかくあるデータなので、使わないのはもったいないと思っています。

―そうしたデータの見方は、スタッフの皆さんにも共有していますか。
はい。ブログがどのぐらい見られているか、どのようなキーワードが伸びているかなど、わかりやすい情報にしてスタッフへ共有しています。
ただ、「だからこれをやりなさい」と具体的な行動まで決めて伝えるのではなく、情報を受け取った後、自分の仕事にどう落とし込むかは本人に任せています。
僕自身も、最初から数字の読み方を知っていたわけではなく、興味を持って自分で見始めて学んでいったので、初めは苦労しました。
だからこそ、スタッフにもそのまま答えを渡すのではなく、受け身になり過ぎない形で、自分で考えるきっかけになるように伝えたいですね。
実際にデータに興味を持ってくれている若手のスタッフもいるので、そういう時はページの作り方や数字の推移も伝えています。少しずつ次の人に引き継がれていることに、うれしさを感じています。
―新規集客では、ホットペッパービューティーとSNSをどのように使い分けていますか。
地方のサロンではやはり、ホットペッパービューティーをしっかり動かすことが重要だと考えています。
SNSも大切ですが、地方の美容師がSNSだけで多くの方に見つけてもらうのは簡単ではありません。まずはホットペッパービューティーで見つけていただく機会をつくる方が、新規のお客さまの来店につながりやすいと感じています。
僕の場合、SNSは新規集客だけを目的に使うというより、ホットペッパービューティーを通して来店されたお客さまとの、その後の接点を増やすために活用しています。
普段のサロンワークや、少しだけプライベートな部分も見ていただくことで、安心感や親しみやすさにつなげたいと考えています。
ただし、プライベートに寄り過ぎず、美容師としてのプロフェッショナルな部分も保つ。そのバランスを大切にしています。
―スタッフの働き方についても、自由を大切にされているそうですね。
基本となる勤務の形はありますが、土日に休みたい、早めに退勤したいなどの希望にも、できる限り柔軟に対応しています。
連休も取りやすく、4日、5日と休んで、海外や家族旅行に行くこともできる環境です。
昨年からは、仕事とプライベートをきちんと切り分けてほしいという思いから、お店の休みを週に1日増やしました。
データを見ても、土日の休みや連休が集客に大きく影響しているとは感じなかったので、実施しても問題ないと判断しました。
一方で、もっと働きたいというスタッフがいれば、本人の意思で休日に出勤することも可能です。
その場合は手当として還元しています。休みたい人は休み、働きたい人は働ける。どちらかを強制するのではなく、それぞれの希望に合わせられる環境にしています。
―ルールが少なく自由度も高いなかで、組織としての規律を保てるのはなぜでしょうか。
マニュアルがなく自由度が高いからこそ、自分にきちんとした軸がないと仕事にならないからだと思います。その分、自分で考える場面が増えるのではないでしょうか。
もちろん、サロンが大切にする思いや方向性は、ミーティングなどで伝えています。その方向性と自分自身の考えを照らし合わせながら、スタッフが切磋琢磨してくれているのだと思います。
もともと意識の高いスタッフが集まってくれていることも大きいですね。一人ひとりが責任を持って仕事をしてくれているので、安心して任せられています。

―今後は、どのようなサロンを目指していきたいですか。
これまでは採用にそれほど力を入れてきませんでしたが、GOLD Prizeをいただいたこともあり、今後はサロンとしてもう少し大きく成長していきたいと考えています。新しいメンバーの採用にも取り組んでいきたいですね。
同時に、今いるスタッフ一人ひとりの強みを、もっと伸ばしていきたいと思っています。
サロンでは、どうしても一部の売れている美容師やエースに頼る状態になりやすいですが、僕たちは「全員がエース」と言えるチームを目指したいです。
まずは、スタイリストになったばかりのスタッフをしっかり育て、現在のメンバーでより強い基盤をつくる。その上で新しいスタッフを迎え、育成できる体制を整えていくことが、直近の目標です。
取材レポート
大柿さんのお話には、「感覚」と「数字」、「自由」と「責任」といった、一見すると対照的な要素がごく自然に共存していました。
お客さまに一歩踏み込み、安心して過ごせる「サードプレイス」をつくる。一方で、ホットペッパービューティーのデータはほぼ毎日確認し、ページやクーポンを改善する。
スタッフの働き方や得意分野は尊重しながら、判断に必要な情報とサロンの方向性は丁寧に共有する。
細かなマニュアルで縛らないからこそ、一人ひとりが考えて行動する。自由な働き方を認めるからこそ、自分の仕事に責任を持つ。
スタッフを一律に管理するのではなく、それぞれの個性を「全員がエース」と呼べる強みに育てていくこと。
その姿勢こそが、長年地域で支持され、9年連続のAWARD受賞につながったYsnicの強さなのだと感じました。















