｜第３章｜日本人が海外で働くその難しさと可能性

野嶋　実際に海外で働きたい、出店したいと思ったら、どのような決意や準備が必要になるのでしょうか。ひとつは個人として働く場合、もうひとつはサロンとして出店を考える場合、両方についてお聞かせいただけると。

潤一　まず、個人が海外で働くためにはいくつかバリアがありますね。まずはビザの問題。言葉の問題。そしてスタイルの問題ですね。言葉はコミュニケーションも含めて、です。それが今日本人には大きなネックになっていますね。ただ、逆に言うと、ＮＹはもともとがどんなバックグラウンドであっても、価値が認められる場所です。日本の技術を持ってすれば、本当に高い評価を得ることも可能です。

Aya　ただ技術が上手いだけではなく、チャンスをつかんで這い上がっていく気概がないとだめですね

潤一　この人（Ayaさん）のように、弁護士を雇ってなんとかビザをとってという個人的なステップしかないことも難しさのひとつだと思っています。今後、われわれはそこをサポートしたいなということも考えています。

野嶋　サロンの出店に関してはいかがでしょうか。

潤一　サロンの出店は、僕もとても関心あるのですが、日本でこれだけ美容室があって活気があるのに、なぜアメリカに広がっていかないかというと、サービス業だからという側面が強いと思います。サービス業というのは、コミュニケーションですよね。アメリカ人を対象にしようとすると、そこがネックになってきます。言葉の問題だけではなく、コミュニケーションも含めての語学力が必要になってきます。

Aya　ユニクロは、ＮＹのマンハッタンに3つ大きな店舗があるんですけれど、ユニクロは物を売る商売。だから、従業員の日本人はマネジメントにまわり、現地採用を中心にしています。でも、ヘアサロンの場合、コミュニケーションで成り立つ仕事なので、日本の美容師さんがいきなりできないんですね。アジアではひょっとしたら相手の方が日本人に合わせてくれるかもしれない。でも、ＮＹの場合は、こちらに合わせてはくれませんから自分がアジャストしなければならない。言葉が話せない、文化のバックグランドが理解できない、ということでは成功しませんね。販売業よりはずっとハードルが高いですね。

野嶋　売るものが技術・人・ホスピタリティですものね。対応力が必要。

Aya　ホスピタリティは日本人はものすごく高いですよね。ただそのホスピタリティが生かされるためには、このお客様がどういったデザインを求めているのかを感じ取る語学能力が必要です。それがないと美容室の場合難しい。

野嶋　ただ、僕は、言葉は徐々にどうにかなるんじゃないかと思います。僕らより若い世代は英語力が高くなっていくでしょうし、そのハードルは越えて行けると思うのです。ただ、それでもまだ越えなければならないものがあるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。

Aya　そうですね。やはり、先ほども話になった提案力だと思います。どれだけお客様を納得させられる提案ができるかどうか。その視点が必要になってくると思います。日本人がアメリカの美容業界で働くには、提案力と自分自身をアピールする。ここを鍛えていくことが大事ですね。