ヘアサロン領域
2012.08.31
関東を中心に26店舗を展開、387人のスタッフを抱えるUNIX。一昨年、異業種から森社長を迎え、経営方針を一新しました。TOYOTAの生産方式を取り入れ、生産性の向上を強化するなど、様々な新しい手法も取り入れながら、3年後の上場を目標にサロン改革を進めているUNIX。森社長に、その刷新の核心をお伺いしました。
|第2章|独立だけではない選択肢のバリエーション
森 また、オーガニゼーショナル・ケイパビリティ(Organizational capability=組織の能力)を高めることが、僕の大きな課題です。 昔ながらの美容業界では、独立してのれん分けという形でしかEXIT(出口)がなかったわけですよね。でも、全員がケイパビリティ(能力)を高めていけば、お客様がリピートしてくださり、サイズも大きくなり、いろんな仕事が生まれ、例えば美容師さんであったとしても商品開発や店舗開発の仕事に就ける可能性がある。将来的には、独立だけがEXITではないという組織体を作りたいなと。
野嶋 組織が成長すればするほど、自分の能力に適合する選択肢が増えてくるということですね。多様性が高まっていくと。
森 そうです。
野嶋 でも、その感覚は、技術者として長年訓練を受けてきた美容師業の人達には、すぐにはなじみにくい概念ではないかと思うのですがいかがでしょう。どのようにその考えを定着させていくのでしょうか。
森 それは、技術トレーニングと全く同じですね。「君の頭の中には、今まで使っていなかった分野がたくさんあるよ。技術練習で使っているのはこの一部分だけ。では残りの部分を使えるようになるためにはどうすればいいのか」ということを研修でやっていきます。 最初は左耳から入って右耳に抜ける状態です。でも、それでもどこかでフィルタにはひっかかるんですね。そのひっかかりの量を少しでも増やすことを考えます。そのためには何度も繰り返して伝え回数を重ねること、そして僕のコミットメントを増やす、つまり僕の本気度が必要です(笑)。この会社に来てからは、そのコミットメントを増やすために、個人的な飲み会には全く行けなくなりましたね(笑)。
野嶋 徹底的に働く方々と接点を持って、自ら発信されているんですね。「常に機会をとらえて、ことあるごとに伝える」という森社長のスタンスは、まだ数時間しかお話していない我々にも垣間みられるくらいですから、スタッフさんにはしっかり伝わっているのだと感じます。
森 できているかどうかはわかりませんが、スタッフに対しての関わり方は、そのように努力しています。僕の根底には、一緒に働いているクルーには、幸せに死んでほしいという想いがあります。死ぬときに「ああ、ユニックスで働いて良かったな」って思ってほしいんです。
野嶋 ああ、それは素晴らしいですね。
森 僕自身がそういう先輩を何人も見てきたからかもしれません。「この人と結婚して良かったな」と思うよりも強く「この会社で働いて良かったな」と思ってもらえるような組織にしていきたいと思うのです。