第4章なぜ選挙制で上司を決めるのか?
「社長が選ぶより、立候補した人に
やらせた方が絶対うまくいく。」
「フュービック」さんでは年に1回、店舗の売上やスタッフ個人の技術を表彰する社内イベント「F1GP(F1グランプリ)」を開催しています。これを始めたきっかけは?
初回を開催したのは2008年、リーマンショックの直後でした。ボーナスをみんなに出せるほどのお金がなくて、100万円くらいならあるけどみんなに配ったら1人当たり1万円とかになってしまう。その程度を配ってもどうなんだろう、でも何かしてあげたい。「じゃあ、がんばった人のためにイベントをやろう」ってのが始まりでした。
このイベントは会場の手配から演出、動画の制作まで全部、社員の手作りなんです。先ほども言ったように今後はエンタメ業が重要な時代が来る、WEBやデザインの能力が必要になると考えていたから。クリエイティブ部署も10年以上前から自社に設置しているので、イベントをスタッフたちの技術を磨く場にしようと思ったんです。
僕らサービス業の弱みは、雑誌を作るような、ものごとを「形」にする力を養う場がないこと。だからこのイベントはスケジュール管理とかプランニング、役割分担とかを学ぶ場としても役立っています。
毎年恒例のイベントになっていますが、やってみて感じたメリットは?
みんながこの「F1GP」で表彰されることを目指してがんばるようになっています。本気で泣いたり悔しがる子たちがいて、それを見て「次は自分も」と火がつく子がいる。イベントでは全技術者のトップを決める部門もあるので、出世には興味がないけど技術に興味がある子たちのモチベーションにもなっています。
「F1GP」の中では、「マネージャー総選挙」というイベントもあります。部下が上司を選ぶという、とてもユニークな試みですね。
会社の味方にならないのは、「能力は高いけれど、やる気がない人間」。一番足を引っ張るタイプなんですが、社長が指名するとそうなりがちなんですよね(笑)。そして、能力を高めてあげることはできても、やる気を出させるのは難しいものです。
それで、この解決策が「マネージャー総選挙」なんです。これはやりたい人が立候補して自らをプレゼンし、社員が候補者に投票する仕組み。社長が選ぶよりも、立候補した人にやらせたほうが絶対にうまくいくんですよ。やる気があるから困難があってもがんばれば乗り越えられるし、本人も成長していきます。
実際、立候補制にしてみて、人材として適切なスタッフが選ばれていますか?
そうですね、選ばれた人を見ると「現場のスタッフはよくわかっているな」と感じます。適切な人材でなければ、選挙に落ちるだけ。だから部下の管理をしなくていいというメリットもあります。管理に時間を取られるよりも、他のことに力を発揮したほうが有意義ですよね。
もうひとつのメリットは「なんであいつが昇進するんだ」というグチが社員から上がらないこと。だって選んだのは自分たちですからね。