経営編【番外編】役員報酬ってどう決めるの？その他注意点とは？
法人化をした際に気になるのは「役員報酬はいくらに設定すべき」という問題。
役員報酬の考え方や、設定相場、その他注意点まで解説します！
POINT
そもそも役員報酬って？
中嶋先生、法人化した時には、僕（オーナー）自身の給与ってどうなるんでしょうか？
中嶋先生
従業員が労働の対価として受けるのが「給与」ですが、法人化した際には、役員であるオーナーに支払われる報酬を「役員報酬」といいます。もちろん役員報酬は絶対に設定しないといけないものではない（＝0円というケースもある）のですが、基本的には、個人事業の時に出ていた利益を目安に役員報酬の金額を設定するケースが多いです。
設定する上での注意点ってありますか？
1年間の利益を予測…！難しそうです…。
役員報酬を高く設定すれば、社会保険料などの負担も上がりますからね。そのあたりも踏まえて決めなければいけません。
思った利益が出ず、役員報酬が払えない＝未払い金が発生してしまった場合には、負債として計上されますし、長期にわたり払えないまま残っていたら「定期同額給与」として認められない可能性もありますので注意が必要ですよ。
役員報酬、どのくらいの金額に設定すべき？
先生、役員報酬はどのくらいの金額で設定されているケースが多いですか？
解説！
役員報酬は「個人として支払う税金」と「法人として支払う税」のバランスで設定！
「経営編②支払う税金って何種類あるの？法人と個人の違いは？」で解説しましたが、役員報酬に対しては個人としての所得税が、役員報酬を除いた「法人所得」に対しては法人税が発生します。
役員報酬を上げると、所得税だけでなく、その他住民税や社会保険など個人として支払う額が高額になるのは当然のことですので、この「個人として支払う金額」と「法人として支払う税金の金額」の見極めが重要です。
【POINT】
社会保険の負担もありますが、利益分を全額役員報酬に設定すれば、法人の利益は発生せず法人税の負担は均等割りだけになります。一方で、自分に必要なお金が満額分ほど必要でないならば、法人の利益が残りますので法人税の負担が発生します。しかし、役員報酬に対して発生する所得税・社会保険の負担は少なくなり、会社にお金が残るので金融機関の信頼は得られやすくなります。
バランス…ですか。
個人事業の利益が600万円であれば、月額50万円、年間600万円の利益を設定して、法人税の負担をできるだけ少なくする、という考え方の方が多いです。法人化のタイミングで個人の利益が800万円だとすると、役員がひとりだけの会社であれば月額60万円から70万円。
いずれにせよ、10％前後、というところでしょうか。
いずれにせよ、10％前後、というところでしょうか。
役員貸付・役員借入とは？
ほかに知っておくべき注意点はありますか？
そうですね、役員貸付、役員借入について、でしょうか。
あまり聞きなじみがない言葉ですね…。
まず、役員貸付とは会社が役員に貸しているお金のことです。どんなケースで発生するのか解説します。
解説！
役員貸付になってしまうケースとして多いのは？
- 会社のお金で私的な支払をする
会社のお金で私的な支払（経費にならない支出）をすると、それは会社から役員にお金を貸したことと同じ意味になります。 - お店の売上金を会社の口座に入れない
売上には計上していても、売上金を会社の口座に入金しないと、そのお金は役員に貸したことになります。 - 役員報酬を低く設定し、その金額では不足する場合
役員報酬を低く設定し、手取り額を受け取っていたとしても、その金額では足らず、会社のお金を使った場合は、会社から役員にお金を貸したことになります。 - 個人事業主の時に債務超過の状態で法人化をしてしまう
この場合、役員貸付金が発生します。個人事業主の時のお金の使い方に問題があると、法人化した途端に役員貸付金が発生！ということになってしまいますので注意が必要です。
役員貸付は会社が役員にお金を貸している状態なので、金融機関から見れば、会社にお金を貸しても、会社は役員にお金を貸すのでは？と見られてしまい、金融機関からの信頼を得ることができなくなってしまいますので注意が必要です。
次に役員借入ですね。
これもどんな時に必要なのかイメージが付かないです…。
解説！
役員借入金とは、会社が役員から借りているお金。役員借入金になるケースとして多いのは？
- 会社のお金が足りない場合に、役員が自分の個人のお金を会社に投下する
役員からの入金は、会社が役員からお金を借りたことになります。 - 役員貸付金とは逆で、個人事業主の時に、しっかりと利益を出し、残ったお金をちゃんと事業用のお金や資産として残していた場合
借入金よりも資産の方が多い状態で法人化をすると、役員借入金が発生することになります。
役員から借りているお金で銀行からの借金とは異なり、返済する時期は自由です。
銀行から見れば自己資本と同じように判断されます。
会社の資金繰り・キャッシュフローが悪化した際の応急処置として活用できますが、役員からと言えども借入金です。役員借入金の分だけ会社の負債が増えることになりますから会社の安全性を評価する指標である自己資本比率が低くなりがち。また、役員借入金を含めると債務超過になってしまうこともあるので注意が必要です。
なるほどー。今日も勉強になりました！
【監修】なかしま税務労務事務所 税理士 中嶋政雄先生
プロフィール：
「美容サロン」のオーナーが税理士に求めていることを徹底研究。
「美容業界専門」税理士として活動中。
「美容サロン」のオーナーが税理士に求めていることを徹底研究。
「美容業界専門」税理士として活動中。
役員報酬で「経費（損金）」とすることが可能なのはこちら！
通常のサロンで最も多いのは「定期同額給与」のケースですが、簡単に言えば、経費として認められるためには、１年間毎月同じ金額でなければならない、ということです。
変更ができるのは事業年度の開始の日から３カ月以内。このタイミングで１年間の利益を予測して、いくらの金額を支払うかを決める必要があります。