第2章スタッフへの意識醸成
「何度でも同じことを言い続け
丁寧に、ゆっくりと進める」
Londさんではゴミ拾いからスタートして、ほかにもサステナビリティに関するさまざまな活動をされていますね。
ゴミ拾いと、あとはヘアドネーション、児童養護施設へのボランティアカット。この3つをLondにおけるボランタリズム精神を成熟させる「礎(いしずえ)」と位置付けて、大事にしています。サステナビリティの取り組みを持続させるには純粋なボランタリズム(公共・福祉のためにする個人の自発的な協力)が必要であり、それを育むのがこの3つの活動なんです。
たとえばヘアドネーションが求められる背景には、小児がんにより髪が抜けていじめにあう子がいること。児童養護施設に入所する子どもたちの現状…。そうした背景や社会問題について話し、だからこそ活動する意義があるのだと伝えて、ボランタリズムを培ったうえで、スタッフに活動してもらっています。
2021年8月にはイギリスのヴィーガン(※)協会の認証を取得したシャンプーとトリートメントも発売されました。
※ヴィーガン=食事においても日常生活全般においても、動物性食品や製品を使わないライフスタイル
そうですね、あとは脱プラスチックに向けたシャンプーの量り売りと、マイボトルへの給水スポット「mymizu(マイミズ)」としてのサロン登録、再生紙使用への転換、再生可能エネルギーへの電力のパワーシフトに取り組んでいます。
取り組みを進めるうえで、困難なことはありましたか?
電力会社の切り替えは2017年から始めたんですが、電力の契約がテナントごとでなく「ビル単位」の場合は、電力会社を変えるなら「ビル丸ごと」変える必要があります。だけど契約を変えるなんて面倒くさがられてしまう。なので時には、そのビルに入っている歯科医院に歯石を取りに行き、ついでを装って「切り替えましょう」とプレゼンをしたり(笑)。でも、そんなにスムーズにいくものではありません。いまよりもっと社会問題化したり、意識が高まると同意も得やすいと思うので、時機を待っているところです。
スタッフさんたちの意識付け、協力態勢に持っていく点での苦労は?
その部分ではないですね。こうした取り組みは美容師本来の仕事とは関係ないといえばそうなので、「なんでやらなきゃいけないの?」と思われたらダメ。だからこそしっかりと背景を話して、丁寧に、ゆっくり進めることを意識しています。僕は結構しつこい性格なので(笑)、あきらめないんですよ。それに「人は1回言われても理解しない」という考え。何度でも同じことを言い続けます。たとえ感度が低い人、理解度が低い人、モチベーションが低い人であっても、僕はあらゆる人を置いていきたくない。
そうして伝え続けてきて去年、コロナ禍の緊急事態宣言下で休業したとき、やることもないし・・・と、「サステナビリティチーム」を立ち上げたんですよ。チームを組むために有志を募ったところ、14人が手を挙げてくれて。彼らが主体となったインスタアカウント「ロンドメディア(@lond_media)」では、環境問題、人権問題、ロンドのサステナ活動という3つのテーマで投稿しています。
年齢や立場など、チームのメンバーはどんな方々ですか?
けっこう上から下までバラバラです。なかでも積極的に進めてくれているのは去年のチーム発足時は新卒入社したばかりで、いま2年目の子。サステナビリティの領域において、キーワードはZ世代(諸説あるが、1990年代半ば頃~2000年代生まれ)だと思いますね。
Z世代の方たちは、社会問題や環境に対する意識が違う?
彼ら世代は、「エシカル消費」(人や社会・環境に配慮した消費行動)にとても敏感です。エシカル消費って、社会的な課題に取り組む企業を応援するという意味もあるのですが、就活においても、「エシカル就活」に突入した感があります。
去年の新卒の子は、面接の際に「エシカルに力を入れているのがLondを選んだポイント」と話していて。そういう意見は3年前くらいから、チラホラ見られるようになっているし、今後もこの傾向が高まるのでは?
10代・20代の子たちはこの先の人生がまだまだ長いので、自分が生きていく未来に対する不安も大きい。だから社会問題に取り組むことの大切さがわかっているし、きちんと向き合っている企業かどうかも重視する。ブラック企業ではないことは当然として、パワハラ・セクハラがないか、年齢を重ねても活躍できるか、女性が輝ける環境か、そして、社会のことを考えているか。ここまでをも判断材料にして、就職先を選ぶようになってきていると思います。