美容の未来のために、学びと調査・研究を

美容サロン経営を学ぶならホットペッパービューティーアカデミー

第4章美容業界全体でサステナブルな未来へ

「難しいことではない。
どのサロン、どの美容師にもできること」

「Lond omotesando」のレセプションカウンター。木肌の出る木の上の部分は、裁断で板がまっすぐにならず廃材になることも多い。なので、あえてこの部分を選んで購入したという

お話を聞いていると、とても強い信念を感じます。未来や地球環境を考えると大事なことだとわかっていても、自分ごとにならない人も多いのでは…。石田さんが、そこまで力を注げる源泉は?

モチベーションとして利他精神というのもあるけれど、一番は単純に「責務」だと思っているんです。僕ら大人がこの社会を作らないで、リーダーや経営者がやらないでどうするんだ、という気持ち。

経営の神様とも言われる松下 幸之助さんの「企業は社会の公器(こうき=おおやけのもの、公共のための機関)である」という言葉は本当にその通りで、当たり前なこと。会社の存在理由って結局、それしかないでしょう。だからみんなに考え方を広めることも、僕の役割かなと思っています。

でも別に、難しいことではないんです!サステナビリティに関する講演を頼まれる機会も増えてきたんですが、僕がいつも言っているのは「どのサロンでもできますよ」ということ。美容師って話すだけでお客さまの意識を変える“きっかけづくり”ができて、それによって貢献できるんです、と伝えています。

サロンとして何か取り組みたいと思ったとき、たとえばどんなことが?

一番簡単なのは、ロスの削減です。たとえばカラー剤を作り過ぎないようにする。そうすれば残カラーを無駄に出さずに済みます。当初Londでは、その日の残カラー量を記入して気を付けるようにしていたんです。でもそもそも作る量が多過ぎたら、残らなかったけど実は使い過ぎだったということが起きる。なのでもちろん個々の毛量に応じて調整はしますが、髪の長さごとに基本的な適正量を決めることにしました。

あとは、コピー用紙やトイレットペーパーなどの紙を再生紙に変える。すると環境資源に対する負荷を下げることができます。もっと簡単なことなら、使わない電気は消すとか。小さなことですが、どれも大事です。

うちはそういう無駄を省く役割を担う「エシカルチーム」を2020年に立ち上げて、各店に1人の担当者を置いています。何をするかというと、徹底して無駄をなくす。元々は「備品発注係」と呼んでいたのですがサステナビリティに関する機能を持たせて、環境に配慮されたものを発注したり、節電・節水をするといった仕事内容に変えました。

ロス削減や節電・節水なら、自分にとってもメリットを感じられそうです。

そう、自分にとってもよいことだと思います。サステナビリティに取り組んでいるサロンだからと就職先に選ぶ若者が出てきているので、求人でも優位に働きます。最近はSDGsに関することが小・中学校の教科書にも載っているくらいで、若い子たちは当たり前のこととして知識と意識を持って就職してきている。

そういう時代にオーナーが何も知らない、社会問題に無頓着だと失望されるようになってしまいます。反対にきちんと取り組んでいるサロンなら、従業員満足度も高まる。

それにエシカル消費を求める人もいるし、実際Londにはそういう視点でサロンを選んでくれたお客さまもいます。ヘアドネーションで言えば、多いときだと1店舗で1カ月に20人ほど来店されることも。サステナビリティというキーワードが刺さる方はまだ多くはありませんが、この先は増えていくはず。その受け皿となれるよう、サロンとして取り組みを体系化したりスタッフの意識を上げる。それには時間がかかるので、いまから行動に移す必要があります。

今後、Londさんとしての構想は?

まずは現在やっているプロジェクトを、よりよくしていく。プロジェクトの数は揃ったので、中身を深めていきます。

2021年9月から、地球や動物に優しい製品のみを使って施術する「ヴィーガン対応」を始めました。何がいいのかをお客さまに伝え、理解を深めてもらう。また、量り売りでは4ℓのリフィルが1つ空くごとに、ボランティアカットをしている児童養護施設にLondのシャンプーを1本プレゼントする、という寄付もしてます。量り売りはお客さまに対するプラスチック削減プロジェクトであると同時に、寄付という付加価値があり、子どもたちの自己肯定感を高めることにもつながっているんです。

いい循環が、生まれているんですね。

さらに、子どもたちにプラスチック削減に関する勉強会も開きたいのですが、現状はコロナ禍で実現できていません。もう少し状況が落ち着いたら、来年2022年には、子どもたちへの社会環境教育を進めていきたいと考えています。

こうしたプロジェクトの深化とは別に、もう一つ狙っているのは、みんなで協力して課題解決に取り組み、社会を改革する「コレクティブインパクト(企業や行政、NPOなどによる社会課題への協業)」を、美容業界に巻き起こすこと。サロンやメーカー、ディーラー、ジャーナルなどがそれぞれのリソースを使って、力を合わせて社会的インパクトを起こしたい。

実はいま、メーカーさんとそうしたミーティングも始めていて。製品開発かイベントなのか、形はまだわかりませんが、社会問題をみんなの力で解決していければと思っています。少しでも多くの人が参加してくれれば、未来はきっと変わっていく。そう信じています。

石田さんは、自身を「しつこい性格」だと評する。
ここ数年、サステナビリティを猛勉強し、スタッフに丁寧に意義を伝え、SNSで発信し続けてきた。それは、すさまじいまでの根気と使命感。

サステナビリティは、すぐに結果が見えるものではない。
ビジネスとして収益化させることも決して簡単ではない。

生半可な想いでは、できないけれど…。
でも石田さんの言うように、
どのサロンでも、いますぐに、できることがあるのもまた事実です。

児童養護施設で、子どもの髪をカットする石田さん

1234
業界TOPインタビューの記事一覧へ

おすすめの記事

注目の動画

連載記事ARTICLE

  • 新着
  • ランキング

受付中のセミナーSEMINAR

動画ランキングMOVIE

ホットペッパービューティーアカデミーに
会員登録をして、
美容サロン経営に役立つ動画
を見よう!