第3章激戦区「渋谷」での勝算
「ROOSTファミリーで目指すは
関わるすべての方の人生を輝かせる」
2023年8月4日に、渋谷店をオープンされました。京都を中心に展開されてきましたが、なぜ渋谷に?
長年ROOSTでがんばってくれたスタッフのYuTAKA(ゆたか)には、ずっと「渋谷に出店したい」という夢がありました。彼はROOSTの想い・本質をしっかり持っているので渋谷でもいけると思い、渋谷店のマネージャー兼トップデザイナーを任せることに。
渋谷はメンズサロンの激戦区でもあります。そのなかで、勝算は?
渋谷はフリーランスや業務委託の方も多いので、「共通の意志を持つファミリーサロン」という点では、ブルーオーシャン。僕らは「人の幸せを考える」という同じ目的があるメンバーなので、来てくれたお客さまに絶対喜んでもらえる自信がありました。
オープンして1カ月弱ですが、現段階で初月の売上目標を大幅に超えています。数字以上にうれしいのは、お客さまにも僕らの本質が伝わっていること。
ホットペッパービューティーの口コミからも、それが見てとれます。「スタッフ全員、気持ちのいい接客でとてもよかった」「全スタッフさんが気さくに挨拶から楽しい会話までしてくれて、楽しかった」など、チームでの接客をほめてくださる声がとても多いんです。
確かに、技術だけではなく「接客」に対して絶賛するコメントが目立ちますね。
集客もホットペッパービューティーのページを工夫することはもちろん、ほかにも各スタッフが自力でがんばっています。インスタへの投稿や、街での声がけ、ごはんを食べにいったら店員さんに宣伝したり…。
みなさん、自主的に?
はい、会社として指示を出しているわけではありません。昨日、ちょうど渋谷店に顔を出しましたが、一緒にごはんを食べただけで、仕事の話はほとんどしていません(笑)。信頼して任せているので、社長がゴチャゴチャ言うのは違うなと思って。数字を見れば、店舗の状態は把握できます。店販比率があがっていれば、きちんと提案ができているな、とか。
想いが強いメンバーたちなので、自らドンドンやってくれる。会社の目的がきちんと伝わっていると、それが行動につながると実感しました。
オープンから10周年。順調に進んできたのでは?
実は昨年の一時期、スタッフが結構辞めてしまったことがありました。スタッフは悪くないんです。
自分に対して反省しかありませんが、コロナ禍でスタッフを守らなければと、売上をあげる方法を教えることばかりに目がいってしまった。ROOSTのミッションやビジョン、こうすれば成長するというものを常に伝えなければいけないのに、それができていませんでした。
いくら売上が立っても、会社としての方向性が見えなかったら、「もっとお給料が高いところにいこう」と思うのは当然です。
渡辺さんは、スタッフの方を本当の子どものように思っているのが伝わってくるので、離職は精神的にもつらかったのでは?
もちろん、とてもさみしかったです。でも辞めてしまったスタッフにも、感謝しかありません。「いつでも戻ってきていいよ」と送り出します。僕だけではなく、残っているメンバー全員が、本気でそう思っている。
実際に戻ってきてくれた子も数名います。その子たちは、「海外留学に行かせた感覚」というか…。外を見たことで、あらためてROOSTのよさがわかることもあると思います。
確かに、そうですね。
そのできごとがあったおかげで「僕は、経営者である前に、みんなのお父さんだった」と思い出しました。もう一度「ROOSTファミリー」の父親として、あらためて我が子のようにスタッフを育てていこうと。
稼ぐことや、お店を大きくする…僕がしたかったのは、それじゃない。ROOSTとは、鳥が羽を休める止まり木のこと。大切にしたいのは、「関わるすべての方の人生を輝かせたい」という想いです。
スタッフに望むのは、世のため、人のために、必要とされる人間になること。たくさんのお客さま、接するすべての人、その出会いに感謝できる心を持つこと。
うちの長男が…あ、いちばん最初にROOSTから独立したスタッフなんですけど。若くして親(オーナー)になったから大変なこともあるかなと。その子のスタッフは、自分にとって孫のようなもの。おじいちゃんでもある僕から孫に、何かアドバイスできることがあるかなって、そんなことも考えています。
関わったすべての仲間=家族みんなで仲良く、幸せに。10周年を迎えたいま、「ROOSTファミリー」という原点に、立ち返っているところです。
しかし、ROOSTはアットホームどころのレベルではない。
記事では便宜上「スタッフ」と書いたが、
渡辺さんはインタビュー中、「うちの子」「子どもたち」と言った。
本気の愛が伝わるから、スタッフも輝ける。
それが、お客さまへの接客にもつながっているのだろう。
早期デビュー、生産性の高さも、もちろんすごい。
だが、真の強さは「関わるすべての方の人生を輝かせる」という想いで、一致団結していること。
ここまでお互いを想いやれる気持ちは、そうそうマネできない。