中尾●まず美容専門学校が、生徒が集まらず苦戦しているところが多いですよね。学校に生徒を入れない限りは、なり手も増えません。

特に地方の学校は、地元サロンとの結びつきを強固にする必要がある。そして、サロンから「美容業って、いい仕事だよ」と発信してくれたら…。草の根的ではありますが、そういうことが大事なのかなと思います。

吉原●美容業が、「憧れの仕事」でないといけないよね。そうでないと人は入ってこない。K-POPの影響が大きいなら、「K-POPの人たちと楽しく仕事しているよ！」と発信する人が出てきたら、変わるかもしれない。その活躍している人に「年収いくらですか？」と聞いたら、「少ないですけど…、1,000万円くらいかな」みたいな（笑）。業界のなかに、一般の方にも認知されるほどのスターがいることは、とても大事だよね。

中尾●たくさんの美容サロン経営者の方とお会いしますが、やはりみなさん、いちばんの悩みは求人です。「経営力」というのは、「採用力」といってもいい。

吉原さんのように大きいところは仕組みでやっていますが、世間一般のサロンは、学校との関係をもう一度見直してみては？

たとえば、美容専門学校の先生方との関係性をどうつくるか。美容業のみなさんの強みは、「カウンセリング力・引き出す力」です。学校とのパイプをつくるときも、いま学校は何に悩んでいるのかを聞くことで、自社における採用の展開が見えてくると思います。

よく聞くのは、ちょっとうまくいくと採用を止めてしまうこと。毎年コツコツ、継続していくことが重要です。

野嶋●いまは「採用 戦国時代」。吉原さんは創業当初、全国の高校を年間250校まわられたとか。現代においてはSNSや求人サイトも活用できるので、地上戦・空中戦を上手に組み合わせて戦略づくりをすれば、きっと採用につながります。

美容業は人の数＝売上・成長。ブランド力がないサロンでも大きくなれる可能性があるので、成長志向が強い人にとってはチャンスとも言えます。

そして、“採用の前に”、どうやって人を定着させるか。会社としての教育・人事制度・キャリア開発の機会をレベルアップして、人材ポリシーをつくる。定着できる環境づくりと、事業として向かう軸。その両輪をきちんとまわすことが大切だと考えます。

吉原●中尾さん、野嶋さんが言ったように、「人ありき」ですね。経営者の取り分を削ってでも、やらなくてはいけないことがある。

ちなみに僕が年収1,000万円になったのは、42歳のとき。創業から12年。もし、33～34歳で1,000万円、1,500万円もらっていたとしたら、会社としてここまで成長できなかったかもしれない。

経営者になってすぐに求められるのは、安定した個人業をとるか、成長をとるかの選択。「人も欲しいけど、それよりも高級車に乗りたい」なのか、「高級車はガマンして年間200万円を採用に使おう」なのか…。

採用こそ、企業力。美容業界においては、採用に力を注がない限り、会社の成長はないと思います。